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おまけ(ダーシィの後悔)
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イーサン様を屋敷の一室に閉じ込めて、私は息子を育てている。イーサン様があんな感じだから、私は息子が性格異常にならないことを願っている。
でも、日に日に感じるのは息子の表情の乏しさだった。どこか感情の動きが希薄で、イーサン様を彷彿とさせる。メイドに意地悪なことを言う時の顔もイーサン様にそっくりで、使用人が泣くのを嬉しそうに見ている。
将来が末恐ろしいとはこのことよ。
だから、私はなんとか息子をまともな子に育てようと、諸外国の情報まで集めてまわる。そして、とても有益な情報を見つけた。
アイルルニア王国で子育てサークルを運営している平民の女性で、少し問題のある子供でも動物とのふれ合いを通して、穏やかな優しい子になるという試みをしていた。彼女はたくさんの動物を飼っており、自身も犬や猫の毛をカットする資格を持っているらしい。
これだわ! 動物とのふれ合いが心を豊かにするのね!
私は早速アルルルニア王国に息子と一緒に旅立つ。子育てサークルの運営者はセアラという名前だった。私の話を親身になって聞いてくれ、いろいろな動物とのふれ合いを提案し、一緒になって悩んでくれた。私は身分を隠し偽名で、彼女と話をしていた。
「大丈夫。子供は環境次第で、とても良い子に育ちます。優しい人に囲まれて、動物とふれあいながら育った子は、優しくて穏やかです」
救われた。私はセアラさんにどんなことも相談した。とても信頼できる親友になれた、と思っていた。帰国してからも文通を続けふた月に一回は会いに行き、セアラさんの家に泊まらせてもらうことさえあった。彼女の旦那様は獣医だった。
「夫は兄の親友なのよ。ちなみに兄のお嫁さんは私の親友よ」
セアラさんは朗らかに笑った。
感謝祭の日、私はセアラさんに招待される。場所はセアラさんのお兄様の家で、気の合った友人だけを呼ぶ楽しいパーティだと言われた。でも、そこにいたのは……かつて、私が心を壊したクララだった。
クララの実家のローワン伯爵家はクララが隣国に行ったきりになり、結局クララの従兄が爵位を継いだことは知っている。でも、その後のクララがどうしたかなんて、私は気にもとめなかった。貴族の身分を捨てて平民の獣医と結婚したなんて思ってもいなかったのよ。そして、クララの夫がセアラさんのお兄様だということも、もちろん知らなかった。
クララはとても若々しくて幸せそうだった。動物に囲まれ、優しい旦那様と親友がいて……子供もふたり、とても性格が良さそうだ。私は偽名を使い身分を隠していたけれど、きっとクララにはばれてしまう。
そう思っていたのに……クララはまったく私に気づかなかった。目が合っても、真向かいで話をしても、ちょっとしたヒントを言っても、少しも気がつかないのよ。
わざと気づかないふりをしているのね? 絶対、そうだわ。
私はクララに小さな声で自分の正体を告げる。
「あぁ、あなた、ダーシィなの? ごめんなさい、すっかり忘れていたわ。そうだ! 私、あなたにとても感謝しているのよ。イーサン様を奪ってくださってありがとう! だって、私は今最高に幸せよ」
「……」
私たちの様子がおかしいことにセアラさんが気づき、私がクララにした仕打ちがバレてしまう。その後、セアラさんから手紙がくることは二度となかった。私と息子が動物とふれあう企画に参加することもなくなった。
それから数年が経ち、今さらながらに私は過去の行いを後悔している。そんな私の橫で、息子はテントウムシの羽根をむしって無邪気に笑っていた。思わず、ゾッとする。
やはり、この子は……神様……これが私への罰なのでしょうか……
でも、日に日に感じるのは息子の表情の乏しさだった。どこか感情の動きが希薄で、イーサン様を彷彿とさせる。メイドに意地悪なことを言う時の顔もイーサン様にそっくりで、使用人が泣くのを嬉しそうに見ている。
将来が末恐ろしいとはこのことよ。
だから、私はなんとか息子をまともな子に育てようと、諸外国の情報まで集めてまわる。そして、とても有益な情報を見つけた。
アイルルニア王国で子育てサークルを運営している平民の女性で、少し問題のある子供でも動物とのふれ合いを通して、穏やかな優しい子になるという試みをしていた。彼女はたくさんの動物を飼っており、自身も犬や猫の毛をカットする資格を持っているらしい。
これだわ! 動物とのふれ合いが心を豊かにするのね!
私は早速アルルルニア王国に息子と一緒に旅立つ。子育てサークルの運営者はセアラという名前だった。私の話を親身になって聞いてくれ、いろいろな動物とのふれ合いを提案し、一緒になって悩んでくれた。私は身分を隠し偽名で、彼女と話をしていた。
「大丈夫。子供は環境次第で、とても良い子に育ちます。優しい人に囲まれて、動物とふれあいながら育った子は、優しくて穏やかです」
救われた。私はセアラさんにどんなことも相談した。とても信頼できる親友になれた、と思っていた。帰国してからも文通を続けふた月に一回は会いに行き、セアラさんの家に泊まらせてもらうことさえあった。彼女の旦那様は獣医だった。
「夫は兄の親友なのよ。ちなみに兄のお嫁さんは私の親友よ」
セアラさんは朗らかに笑った。
感謝祭の日、私はセアラさんに招待される。場所はセアラさんのお兄様の家で、気の合った友人だけを呼ぶ楽しいパーティだと言われた。でも、そこにいたのは……かつて、私が心を壊したクララだった。
クララの実家のローワン伯爵家はクララが隣国に行ったきりになり、結局クララの従兄が爵位を継いだことは知っている。でも、その後のクララがどうしたかなんて、私は気にもとめなかった。貴族の身分を捨てて平民の獣医と結婚したなんて思ってもいなかったのよ。そして、クララの夫がセアラさんのお兄様だということも、もちろん知らなかった。
クララはとても若々しくて幸せそうだった。動物に囲まれ、優しい旦那様と親友がいて……子供もふたり、とても性格が良さそうだ。私は偽名を使い身分を隠していたけれど、きっとクララにはばれてしまう。
そう思っていたのに……クララはまったく私に気づかなかった。目が合っても、真向かいで話をしても、ちょっとしたヒントを言っても、少しも気がつかないのよ。
わざと気づかないふりをしているのね? 絶対、そうだわ。
私はクララに小さな声で自分の正体を告げる。
「あぁ、あなた、ダーシィなの? ごめんなさい、すっかり忘れていたわ。そうだ! 私、あなたにとても感謝しているのよ。イーサン様を奪ってくださってありがとう! だって、私は今最高に幸せよ」
「……」
私たちの様子がおかしいことにセアラさんが気づき、私がクララにした仕打ちがバレてしまう。その後、セアラさんから手紙がくることは二度となかった。私と息子が動物とふれあう企画に参加することもなくなった。
それから数年が経ち、今さらながらに私は過去の行いを後悔している。そんな私の橫で、息子はテントウムシの羽根をむしって無邪気に笑っていた。思わず、ゾッとする。
やはり、この子は……神様……これが私への罰なのでしょうか……
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
確かにおっしゃる通りだと思います。
たくさんの小説の中からお読みいただき
ありがとうございます😊
おもしろかったです
お読みいただきありがとうございます😊
お読みいただきありがとうございます😊