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4 イーサンからの解放
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イーサン様がダーシィを選んだことで諦めて忘れたいと思うのに、二人がいつも私に付きまとうからすっかり心が疲労してしまう。
ダーシィはマウントをとるようにイーサン様との仲睦まじい様子を見せつけようとしてくるし、その後で必ず優しくベタベタしてくるイーサン様にもすっかり頭が混乱していた。
(なぜ、イーサン様は私を放っておいてくださらないの?)
もう期待させられて、どん底に突き落とされるのは辛すぎた。お母様はそんな私を見かねて学園をやめさせた。
「学園はあそこだけではないわ。隣国アイルルニア王国に留学なさい。きっと、やりたいことが見つかるわ」
お母様の言葉に従い、私はアイルルニア王国に旅立つ。あちらの王立学園は寄宿舎もあって、私はそこで生活することになった。
ここに来てまず驚いたことは、あまり人間関係が密ではないことだ。ランチ時も一人で食事を楽しみ、午後の授業が始まるまで本を読むなどして、自由に過ごす生徒が多かった。
私にとってはありがたい。人と関わることに臆病になっていたから。
でも、そんな私にも友人が一人だけできた。セアラという平民出身の子で、彼女は元々人より動物が好きだと言う。
「私のお父様は獣医なんです。お母様はドッグ&キャットサロンのオーナーで、トリマー(犬の美容師)とグルーマー(猫の美容師)の資格を持っているの。だから私も自然と動物とふれあうことが多くて、結果的に人間が苦手かも。動物といる方がホッとするわ」
私の国では飼う動物といえば馬ぐらいで、犬や猫を飼う貴族は一般的ではなかった。祖国での犬は救助犬として活躍するだけだったし、猫はねずみ取りのために農民が飼うイメージだった。
でも、ここアイルルニア王国では、愛玩用に犬や猫を飼う人がとても多い。貴族ばかりではなく平民も、動物を家族の一員に迎え大事にしている。
セアラの屋敷は学園の近くにあったから、彼女はそこから学園に通っていた。親しくなってセアラの屋敷に招待されると、たくさんの動物がいてびっくりする。
犬や猫、オウムなどの大型の鳥、は虫類などもいて、屋敷全体が動物園みたい! 隣接した動物病院とサロンも大きくて立派で多くの人が働いていた。
たくさんの動物がいるのに屋敷のなかは清潔に保たれていて、動物の匂いが籠もらないように換気口がところどころに設置されている。
まさに動物と共存する為に建てられた館なのだ。こんな生活って憧れる! 素敵だと思った。
「私は、お母様のようにトリマーになろうと思うの。お兄様は獣医になるのよ。今は獣医養成学園に通っていてもうすぐ卒業! あ、ちなみに婚約者はいなくて、今絶賛彼女募集中よ」
セアラのお兄様ダリアン様は、イーサン様とは全く正反対の容姿だった。それほど背も高くなく、優しい顔立ちの男性で目立たないタイプだ。シャイなところがあるようで、私とは目を合わせるだけで赤くなる。
「お兄様は女性とお話しするのは苦手な方だから、無口だけれど怒っているわけじゃないのよ」
とセアラ。
動物に癒やされに、毎日のようにセアラの屋敷に入り浸る私。学園を卒業したらやりたいことが決まったことも嬉しい。それはセアラのお手伝いをすること! 私もトリマーの資格をとることにしたのだ。
トリマーとグルーマーは特に明確に区別されているわけではなくて、私は犬や猫も綺麗に手入れをして可愛くしてあげたいと思う。
「一緒にアイルルニア王立美術館に行かないかい?」
ある日、ダリアン様が私を誘ってくださった。私は困ったように眉を寄せる。昔の嫌な思い出(イーサンとダーシィとの王立美術館に行った時のこと)が蘇ってしまったからだ。
「嫌なら断っていいからね。無理にとは言わないよ」
寂しそうに微笑むダリアン様に私は首を横に振る。
「嫌ではないんです!! 行きたい気持ちでいっぱいですわ。あの美術館にはずっと行ってみたかったし」
「それなら決まりだね。僕は絵に詳しくないから、いろいろ教えてくれると嬉しいよ」
アイルルニア王国の美術館には、私好みの絵画がずらりと飾られ夢中になって見惚れた。黙って同じように絵画を見つめるダリアン様の沈黙も心地良い。
なにも話さなくても、一緒にいて寛げる男性って初めてだ。これがイーサン様だったら、沈黙のたびにそわそわして無理に話題を探して冷笑されただろう。でもダリアン様だったら気にならない。
「ダリアン様はいつも穏やかですね。急にイライラしたり冷たくしないから安心できます」
「え? うん。いつも動物を相手にしているからね。動物って人間より敏感だから、急にイライラして怒ったり意地悪したら治療する前に噛みつかれちゃうよ」
ダリアン様が笑いながらそう言った。
「ぷっ、あっははは。じゃぁ、私は噛みつけば良かったのかな」
私の言葉にぎょっとしたダリアン様に、イーサン様のことを話す。
「そんなことをする男がいるなんて信じられないよ。僕は好きな子に冷たくなんてできないからね。自分がされたら辛いと思うことは、誰に対してもしたいとは思わないし・・・・・・そのイーサンって男は、よほど自分に自信があるのかな? 冷たくしたら普通は嫌われてしまうことを心配するよね?」
それから、ダリアン様と何度もデートを重ねたが、ただの一度も悲しい思いはしたことがない。他の女性を連れて来ることもなければ、他の女性の話題すらしなかった。
「これが普通だよ。そのイーサンってのは異常だから。ようこそ、普通の世界へ!!」
「・・・・・・ぷっ。あっははは。私のいた世界が異常だったのですね?」
私は、やっと普通の恋愛ができそうだ。
「で、相談なんだけど、クララ。結婚を前提として僕とお付き合いしていただけませんか?」
「はい!!」
元気よく答えた私はもう大丈夫。イーサン様から受けた心の傷は、今しっかりと閉じられたのだから。
イーサン様はダリアン様よりずっと背が高くて美しかった。見た目だけならイーサン様の方が素敵だと思う女性が大半だと思う。
でも、中身はダリアン様の方が100万倍美しくて素敵なことを私は知っている。
だから、私は今このアイルルニア王国にいて、ダリアン様の側にいられることが嬉しくて堪らない。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
※全4話で完結予定でしたが、イーサンのざまぁがほしいとの多数ご意見を頂き、明日またおまけとしてイーサンのざまぁを書かせていただきます。
ダーシィはマウントをとるようにイーサン様との仲睦まじい様子を見せつけようとしてくるし、その後で必ず優しくベタベタしてくるイーサン様にもすっかり頭が混乱していた。
(なぜ、イーサン様は私を放っておいてくださらないの?)
もう期待させられて、どん底に突き落とされるのは辛すぎた。お母様はそんな私を見かねて学園をやめさせた。
「学園はあそこだけではないわ。隣国アイルルニア王国に留学なさい。きっと、やりたいことが見つかるわ」
お母様の言葉に従い、私はアイルルニア王国に旅立つ。あちらの王立学園は寄宿舎もあって、私はそこで生活することになった。
ここに来てまず驚いたことは、あまり人間関係が密ではないことだ。ランチ時も一人で食事を楽しみ、午後の授業が始まるまで本を読むなどして、自由に過ごす生徒が多かった。
私にとってはありがたい。人と関わることに臆病になっていたから。
でも、そんな私にも友人が一人だけできた。セアラという平民出身の子で、彼女は元々人より動物が好きだと言う。
「私のお父様は獣医なんです。お母様はドッグ&キャットサロンのオーナーで、トリマー(犬の美容師)とグルーマー(猫の美容師)の資格を持っているの。だから私も自然と動物とふれあうことが多くて、結果的に人間が苦手かも。動物といる方がホッとするわ」
私の国では飼う動物といえば馬ぐらいで、犬や猫を飼う貴族は一般的ではなかった。祖国での犬は救助犬として活躍するだけだったし、猫はねずみ取りのために農民が飼うイメージだった。
でも、ここアイルルニア王国では、愛玩用に犬や猫を飼う人がとても多い。貴族ばかりではなく平民も、動物を家族の一員に迎え大事にしている。
セアラの屋敷は学園の近くにあったから、彼女はそこから学園に通っていた。親しくなってセアラの屋敷に招待されると、たくさんの動物がいてびっくりする。
犬や猫、オウムなどの大型の鳥、は虫類などもいて、屋敷全体が動物園みたい! 隣接した動物病院とサロンも大きくて立派で多くの人が働いていた。
たくさんの動物がいるのに屋敷のなかは清潔に保たれていて、動物の匂いが籠もらないように換気口がところどころに設置されている。
まさに動物と共存する為に建てられた館なのだ。こんな生活って憧れる! 素敵だと思った。
「私は、お母様のようにトリマーになろうと思うの。お兄様は獣医になるのよ。今は獣医養成学園に通っていてもうすぐ卒業! あ、ちなみに婚約者はいなくて、今絶賛彼女募集中よ」
セアラのお兄様ダリアン様は、イーサン様とは全く正反対の容姿だった。それほど背も高くなく、優しい顔立ちの男性で目立たないタイプだ。シャイなところがあるようで、私とは目を合わせるだけで赤くなる。
「お兄様は女性とお話しするのは苦手な方だから、無口だけれど怒っているわけじゃないのよ」
とセアラ。
動物に癒やされに、毎日のようにセアラの屋敷に入り浸る私。学園を卒業したらやりたいことが決まったことも嬉しい。それはセアラのお手伝いをすること! 私もトリマーの資格をとることにしたのだ。
トリマーとグルーマーは特に明確に区別されているわけではなくて、私は犬や猫も綺麗に手入れをして可愛くしてあげたいと思う。
「一緒にアイルルニア王立美術館に行かないかい?」
ある日、ダリアン様が私を誘ってくださった。私は困ったように眉を寄せる。昔の嫌な思い出(イーサンとダーシィとの王立美術館に行った時のこと)が蘇ってしまったからだ。
「嫌なら断っていいからね。無理にとは言わないよ」
寂しそうに微笑むダリアン様に私は首を横に振る。
「嫌ではないんです!! 行きたい気持ちでいっぱいですわ。あの美術館にはずっと行ってみたかったし」
「それなら決まりだね。僕は絵に詳しくないから、いろいろ教えてくれると嬉しいよ」
アイルルニア王国の美術館には、私好みの絵画がずらりと飾られ夢中になって見惚れた。黙って同じように絵画を見つめるダリアン様の沈黙も心地良い。
なにも話さなくても、一緒にいて寛げる男性って初めてだ。これがイーサン様だったら、沈黙のたびにそわそわして無理に話題を探して冷笑されただろう。でもダリアン様だったら気にならない。
「ダリアン様はいつも穏やかですね。急にイライラしたり冷たくしないから安心できます」
「え? うん。いつも動物を相手にしているからね。動物って人間より敏感だから、急にイライラして怒ったり意地悪したら治療する前に噛みつかれちゃうよ」
ダリアン様が笑いながらそう言った。
「ぷっ、あっははは。じゃぁ、私は噛みつけば良かったのかな」
私の言葉にぎょっとしたダリアン様に、イーサン様のことを話す。
「そんなことをする男がいるなんて信じられないよ。僕は好きな子に冷たくなんてできないからね。自分がされたら辛いと思うことは、誰に対してもしたいとは思わないし・・・・・・そのイーサンって男は、よほど自分に自信があるのかな? 冷たくしたら普通は嫌われてしまうことを心配するよね?」
それから、ダリアン様と何度もデートを重ねたが、ただの一度も悲しい思いはしたことがない。他の女性を連れて来ることもなければ、他の女性の話題すらしなかった。
「これが普通だよ。そのイーサンってのは異常だから。ようこそ、普通の世界へ!!」
「・・・・・・ぷっ。あっははは。私のいた世界が異常だったのですね?」
私は、やっと普通の恋愛ができそうだ。
「で、相談なんだけど、クララ。結婚を前提として僕とお付き合いしていただけませんか?」
「はい!!」
元気よく答えた私はもう大丈夫。イーサン様から受けた心の傷は、今しっかりと閉じられたのだから。
イーサン様はダリアン様よりずっと背が高くて美しかった。見た目だけならイーサン様の方が素敵だと思う女性が大半だと思う。
でも、中身はダリアン様の方が100万倍美しくて素敵なことを私は知っている。
だから、私は今このアイルルニア王国にいて、ダリアン様の側にいられることが嬉しくて堪らない。
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※全4話で完結予定でしたが、イーサンのざまぁがほしいとの多数ご意見を頂き、明日またおまけとしてイーサンのざまぁを書かせていただきます。
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