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追い出されてメイドになるご令嬢
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「おい、なにをやっている?」
「すみません。小汚い子どもが倒れてまして、危うく引くところでした」
「なんだって?うわ、これはひどいな。痩せぎすで、服もつぎはぎだらけだ。孤児だろうな。馬車に運びなさい」
「えぇーーー!旦那様、よろしいのですか?馬車が汚れますよ」
「いや、かまわん」
☆
(う、うーーん。ここはどこ?)
私が眼を覚ましたのは、ふかふかのベッドの中だ。部屋の中は温かくて天国みたい!純白の毛足の長い絨毯が見える。窓は洒落た形で一部がステンドグラス。素敵!淡いピンクベージュのカーテンが上品だわ。
「お目覚めになりましたか?」
「は、はい」
ノックしながら部屋に入ってきたメイドの格好をした女性に、慌てて返事をする。
――なんか、笑われちゃった。そうだ、帰らなくちゃ。ここにいつまでもいられないわ。お母様がきっと、怒っている。
「す、すいません。私、あの‥‥家に帰らないと。ここは、どこなのでしょうか?」
「シドニー男爵家ですよ。お嬢さんは道に倒れていたそうです。あやうく、当家の馬車がひいてしまうところだったとか」
「そ、そうなのですね。申し訳ありませんでした。私、このまま帰っても良いのでしょうか?」
その女性は『ちょっと、お待ちくださいね』と言いながら部屋を出て行った。
しばらくすると、若い男性が部屋に入ってきて私の額に手を当てた。
「気分はどうかな?僕はグレイソン・シドニー男爵。ここの当主だ」
「あっ、この度はご迷惑をおかけしました。私は、マドレーヌといいます。い、家に帰ってもいいでしょうか?」
「ん?もう帰るの?どこか、痛いところはない?大丈夫なのかい?」
「は、はい。もう、遅いから早く帰らないと叱られてしまいます」
「そうか。外は吹雪だ。馬車で送って行こう」
私は、この親切なシドニー男爵に馬車で家に送ってもらった。お礼を言って、家に入るとお母様はとても不機嫌な顔をして私を待ち構えていた。
「ずいぶん、遅かったじゃないか?仕事は見つかったのかい?」
「あ、えっと、それは無理でした。この歳だとどこにも雇ってもらえませんでした。紹介状もないし」
「ふん!紹介状だって?そんなのがいらないとこで働けばいいだろう?」
「え?そ、そんな‥‥」
「仕事も見つけられない能なしは家にはいられないよ。探してから戻ってくるんだ。わかったね?」
私は、入ってきたばかりの扉の外に追い出された。外は雪が吹雪いていてよく見えない。
どうしたらいいのだろう?
私が閉め出された家の路地の隅にうずくまっていると、下卑た顔をした酔っぱらいの男が声をかけてきた。
「おぉーー。小汚い子どもだけど、よく見ればかわいいな。俺の所に来いよ。うまいもん食わしてやるぜ」
私の腕をとって、ひっぱってどこかに行こうとする。誰か助けて‥‥
「おい、その子を離せ!」
「あぁーーん。なんだとぉーー?あっ、これは貴族様じゃねーか!いくら貴族様でも、この女は譲れねーぜ。早い者勝ちだ。」
身なりのいい背の高い男性。あっ、さっきまで一緒にいたシドニー男爵だ!私は泣きながら、その胸に飛び込んだ。
「おい、逃げるんじゃねーぞ!!」
怒声が響いたけれど、シドニー男爵が紙幣を数枚その男に渡すと黙って去っていった。
「家まで送ったけれど、気になってね。ちょっと、待っていたのさ」
「わ、私『仕事を見つけるまで帰ってくるな』って言われて。家から追い出されました」
「え?君はまだ少女だろう?この国の法律だとまともに働けるのは18歳からだろう?」
「は、はい。でも、お母様がまともな仕事じゃなくてもいいからって‥‥」
「酷い母親だな?それなら、私のところに来ればいい。ちょうどメイドが必要だと思っていたんだ」
「すみません。小汚い子どもが倒れてまして、危うく引くところでした」
「なんだって?うわ、これはひどいな。痩せぎすで、服もつぎはぎだらけだ。孤児だろうな。馬車に運びなさい」
「えぇーーー!旦那様、よろしいのですか?馬車が汚れますよ」
「いや、かまわん」
☆
(う、うーーん。ここはどこ?)
私が眼を覚ましたのは、ふかふかのベッドの中だ。部屋の中は温かくて天国みたい!純白の毛足の長い絨毯が見える。窓は洒落た形で一部がステンドグラス。素敵!淡いピンクベージュのカーテンが上品だわ。
「お目覚めになりましたか?」
「は、はい」
ノックしながら部屋に入ってきたメイドの格好をした女性に、慌てて返事をする。
――なんか、笑われちゃった。そうだ、帰らなくちゃ。ここにいつまでもいられないわ。お母様がきっと、怒っている。
「す、すいません。私、あの‥‥家に帰らないと。ここは、どこなのでしょうか?」
「シドニー男爵家ですよ。お嬢さんは道に倒れていたそうです。あやうく、当家の馬車がひいてしまうところだったとか」
「そ、そうなのですね。申し訳ありませんでした。私、このまま帰っても良いのでしょうか?」
その女性は『ちょっと、お待ちくださいね』と言いながら部屋を出て行った。
しばらくすると、若い男性が部屋に入ってきて私の額に手を当てた。
「気分はどうかな?僕はグレイソン・シドニー男爵。ここの当主だ」
「あっ、この度はご迷惑をおかけしました。私は、マドレーヌといいます。い、家に帰ってもいいでしょうか?」
「ん?もう帰るの?どこか、痛いところはない?大丈夫なのかい?」
「は、はい。もう、遅いから早く帰らないと叱られてしまいます」
「そうか。外は吹雪だ。馬車で送って行こう」
私は、この親切なシドニー男爵に馬車で家に送ってもらった。お礼を言って、家に入るとお母様はとても不機嫌な顔をして私を待ち構えていた。
「ずいぶん、遅かったじゃないか?仕事は見つかったのかい?」
「あ、えっと、それは無理でした。この歳だとどこにも雇ってもらえませんでした。紹介状もないし」
「ふん!紹介状だって?そんなのがいらないとこで働けばいいだろう?」
「え?そ、そんな‥‥」
「仕事も見つけられない能なしは家にはいられないよ。探してから戻ってくるんだ。わかったね?」
私は、入ってきたばかりの扉の外に追い出された。外は雪が吹雪いていてよく見えない。
どうしたらいいのだろう?
私が閉め出された家の路地の隅にうずくまっていると、下卑た顔をした酔っぱらいの男が声をかけてきた。
「おぉーー。小汚い子どもだけど、よく見ればかわいいな。俺の所に来いよ。うまいもん食わしてやるぜ」
私の腕をとって、ひっぱってどこかに行こうとする。誰か助けて‥‥
「おい、その子を離せ!」
「あぁーーん。なんだとぉーー?あっ、これは貴族様じゃねーか!いくら貴族様でも、この女は譲れねーぜ。早い者勝ちだ。」
身なりのいい背の高い男性。あっ、さっきまで一緒にいたシドニー男爵だ!私は泣きながら、その胸に飛び込んだ。
「おい、逃げるんじゃねーぞ!!」
怒声が響いたけれど、シドニー男爵が紙幣を数枚その男に渡すと黙って去っていった。
「家まで送ったけれど、気になってね。ちょっと、待っていたのさ」
「わ、私『仕事を見つけるまで帰ってくるな』って言われて。家から追い出されました」
「え?君はまだ少女だろう?この国の法律だとまともに働けるのは18歳からだろう?」
「は、はい。でも、お母様がまともな仕事じゃなくてもいいからって‥‥」
「酷い母親だな?それなら、私のところに来ればいい。ちょうどメイドが必要だと思っていたんだ」
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