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(ベッツィー視点)
わたしの同期は13人いた。お互いに友情が芽生え励まし合って訓練に耐える。
「ねぇ、皆ハサミを持ってきて。お互いの毛を一房づつ切って持っていようよ。あたし達が仲間だっていう証だよ。絶対に裏切らないで力を合わせて頑張ろうね」
「了解」
「もちろんだよ」
「うん。絶対、皆で生き残ろうね」
わたし達は、誓う。助け合って必ず、ずっと一緒にいると・・・・・・
半年間の訓練が終わり、わたし達に初めての任務が任された。それはある貴族の屋敷に潜り込み、メイドとして働きながら当主の動向を探ることだ。そこで判明したのは、こいつの違法な人身売買だった。
合法的な奴隷売買は国の管理下に置かれているが、違法なものは人攫いで奪って来た子供を闇で売る。こいつは見目麗しい女子限定で、平民の子供を誘拐していたのだ。見目麗しい子供はジダライナ国に密入国させ、そこで高く売る手はずになっていることを突きとめた。
「子供を攫って、いかがわしい真似をさせる為に売りさばくなんて、なんという鬼畜な所業なの!」
「子供を救い出そう。それから、こいつの証拠を全部持ち出して、ジョバンナ小隊長に報告よ」
「了解。皆、気を引き締めて。行くよっ!」
アジトの前に眠気を誘う乾燥薬草に火をつけて放り投げた。もくもくと立ちあがる煙にバタバタと倒れていく見張りの男達。倒れたところを見計らって、なかに侵入する。子供達がたくさん囚われていて、なかにも男達がいた。
「お前ら、なんだぁ? 女じゃねーーか。武器を捨てろ。さもないと子供達を殺すぞ」
黒髪の男が子供の喉にナイフを突きつけた。
わたしは武器を捨てるふりをして小型ナイフを黒髪男の心臓めがけて投げ、左手で吹き矢を口に含むと赤髪男の喉に突き刺す。すかさず、胴に括り付けていた薄型投げナイフをとりだし、次々と男達の急所めがけて投げていく。
一瞬の迷いも無く戦う。そうしなければこちらがやられる。生きている間は動き続け、敵を攻撃するんだ。わたしは絶対に死なない!
わたしの仲間達も同じように男達を倒していく。ナイフが飛び交い、剣とぶつかり合い金属音が響いた。
なんとか子供達をジョバンナ小隊長がいる安全な場所に移動させた時には、わたしの一番の親友が血を流していた。その傷を見ればよくここまで移動できたと思うほどの深さだ。
「・・・・・・そんなぁ・・・・・・ジョバンナ小隊長。助けてやってくださいよ。この子は親友なんです。ジェラルディン、死んじゃダメよ」
「この傷じゃぁ助からない。これが現実さ」
「・・・・・・酷いよ。ジェラルディンは、いい子だったのに・・・・・・たくさんわたしを励ましてくれたのに」
「こんなことはいくらでも続く。死ぬのは次はお前かもしれない。ここはそんな世界だ」
ジョバンナ小隊長が言ったその言葉にぞっとした。これは遊びじゃないんだ・・・・・・
それからもたくさんの任務に就き、そのたびに仲間は減っていく。わたしが最後の一人になった頃に、ジョバンナ小隊長に呼ばれた。
「聖女様が男子を出産なされた。お前に恩赦が出されたので、平民籍と新しい人生を送る為の軍資金を渡す。よく厳しい任務に耐えたな。お前はとても優秀だったから生き残れたんだ。自分を誇っていいぞ。幸せになれよ」
ジョバンナ小隊長はわたしを一瞬だけ抱きしめ、かなりの大金がわたしに手渡された。
厳しかった上司だが、決して意味のない厳しさでは無かった。だからこそ、わたしは生き残ることができたのだから。
「亡くなった仲間達のお墓を、これで作ってあげていいですか?」
「あぁ、いいとも。あいつらもきっと喜ぶ。そういう優しい気持ちが、きっとお前の人生を豊かにしてくれるよ。いい女になったな」
そんな言葉にわたしは涙が止まらなかった。
わたしの同期は13人いた。お互いに友情が芽生え励まし合って訓練に耐える。
「ねぇ、皆ハサミを持ってきて。お互いの毛を一房づつ切って持っていようよ。あたし達が仲間だっていう証だよ。絶対に裏切らないで力を合わせて頑張ろうね」
「了解」
「もちろんだよ」
「うん。絶対、皆で生き残ろうね」
わたし達は、誓う。助け合って必ず、ずっと一緒にいると・・・・・・
半年間の訓練が終わり、わたし達に初めての任務が任された。それはある貴族の屋敷に潜り込み、メイドとして働きながら当主の動向を探ることだ。そこで判明したのは、こいつの違法な人身売買だった。
合法的な奴隷売買は国の管理下に置かれているが、違法なものは人攫いで奪って来た子供を闇で売る。こいつは見目麗しい女子限定で、平民の子供を誘拐していたのだ。見目麗しい子供はジダライナ国に密入国させ、そこで高く売る手はずになっていることを突きとめた。
「子供を攫って、いかがわしい真似をさせる為に売りさばくなんて、なんという鬼畜な所業なの!」
「子供を救い出そう。それから、こいつの証拠を全部持ち出して、ジョバンナ小隊長に報告よ」
「了解。皆、気を引き締めて。行くよっ!」
アジトの前に眠気を誘う乾燥薬草に火をつけて放り投げた。もくもくと立ちあがる煙にバタバタと倒れていく見張りの男達。倒れたところを見計らって、なかに侵入する。子供達がたくさん囚われていて、なかにも男達がいた。
「お前ら、なんだぁ? 女じゃねーーか。武器を捨てろ。さもないと子供達を殺すぞ」
黒髪の男が子供の喉にナイフを突きつけた。
わたしは武器を捨てるふりをして小型ナイフを黒髪男の心臓めがけて投げ、左手で吹き矢を口に含むと赤髪男の喉に突き刺す。すかさず、胴に括り付けていた薄型投げナイフをとりだし、次々と男達の急所めがけて投げていく。
一瞬の迷いも無く戦う。そうしなければこちらがやられる。生きている間は動き続け、敵を攻撃するんだ。わたしは絶対に死なない!
わたしの仲間達も同じように男達を倒していく。ナイフが飛び交い、剣とぶつかり合い金属音が響いた。
なんとか子供達をジョバンナ小隊長がいる安全な場所に移動させた時には、わたしの一番の親友が血を流していた。その傷を見ればよくここまで移動できたと思うほどの深さだ。
「・・・・・・そんなぁ・・・・・・ジョバンナ小隊長。助けてやってくださいよ。この子は親友なんです。ジェラルディン、死んじゃダメよ」
「この傷じゃぁ助からない。これが現実さ」
「・・・・・・酷いよ。ジェラルディンは、いい子だったのに・・・・・・たくさんわたしを励ましてくれたのに」
「こんなことはいくらでも続く。死ぬのは次はお前かもしれない。ここはそんな世界だ」
ジョバンナ小隊長が言ったその言葉にぞっとした。これは遊びじゃないんだ・・・・・・
それからもたくさんの任務に就き、そのたびに仲間は減っていく。わたしが最後の一人になった頃に、ジョバンナ小隊長に呼ばれた。
「聖女様が男子を出産なされた。お前に恩赦が出されたので、平民籍と新しい人生を送る為の軍資金を渡す。よく厳しい任務に耐えたな。お前はとても優秀だったから生き残れたんだ。自分を誇っていいぞ。幸せになれよ」
ジョバンナ小隊長はわたしを一瞬だけ抱きしめ、かなりの大金がわたしに手渡された。
厳しかった上司だが、決して意味のない厳しさでは無かった。だからこそ、わたしは生き残ることができたのだから。
「亡くなった仲間達のお墓を、これで作ってあげていいですか?」
「あぁ、いいとも。あいつらもきっと喜ぶ。そういう優しい気持ちが、きっとお前の人生を豊かにしてくれるよ。いい女になったな」
そんな言葉にわたしは涙が止まらなかった。
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