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※とりあえずR15で。
(フランク視点)
奴隷収容所で、父上がムチを打たれたのがショックだった。平民に落ちても、普通の平民よりはいい暮らしができると思っていた。どんなに最悪でも僻地追放のように、王都から離れた山奥に住まわされるぐらいだろう、と思っていたのだ。まさか、些細なことですぐ鞭を打たれる奴隷になるなんて、あり得ない。
同じ年ごろの男達を収容した大部屋に入れられ、売られる時を待つ。こんな緊張感は初めてだし、恐ろしくてたまらない。
「おい、皆出ろ。奴隷オークションの時間だ」
所員がやって来て、僕たちは会場にパンツ1枚で向かわされた。
「なんで脱がせるんだよ!」
「基本、奴隷は服を着ないからさ。人間ではなく物だと自覚させる為だ。パンツをはかせてもらえるだけありがたいと思え。普通はぼろ布を腰に巻いて、大事なところを隠すだけさ」
「嘘だろう……」
「はい、この元貴族の坊ちゃん。1万ダラからですよぉーー。買う方はいますかぁーー?」
「はい、1万ダラで買うわ」
「他にいますか? 売れちゃいますよぉーー?」
「いいぞぉーー。そんな奴、誰もいらないよ」
「あぁ、そんなもやしみたいに筋肉のひとつもないんじゃ、力仕事だって無理そうだ」
「だよな。かと言って頭も悪そうだし……はっははは」
(下賤な者め! 僕を誰だと思っているんだ)
「はい、落札! 1万ダラで。あちらのご婦人たちです」
その女達をよく見れば、なんとカステジャノス侯爵家のメイド達だ。あの時に相手をしてやった子達か。
(わかったぞ。きっと僕のアレがとても良かったのか。ぐふふふ)
僕は女達の馬車に横柄な態度で乗ってやった。
「さぁ、今日は誰が僕に抱かれたいんだ? 3人とも僕の奪い合いで喧嘩をしないでくれよ」
その言葉に冷めた視線しか寄こさない女ども。
(なんだよ、どうしたんだ?)
しばらく走った後に急に馬車が止まり、目の前には窓枠に鉄格子がはまった馬車が見える。その馬車を騎士達が重装備で囲んでいた。
「お疲れ様です。ジョバンナ小隊長のご指示でこの男をこちらに引き渡しますね」
「はい、わかりました。こちら、凶悪犯罪奴隷収容ダイヤモンド鉱山行ですよ。お間違えないですね?」
騎士の質問に女たちが楽し気にうなづく。
「……嫌だ。こんな馬車には乗りたくない。そのジョバンナ小隊長って誰だよ? お前らはただのメイドだろう? 抱いてやったのを忘れたのかよ? だから僕を買ったんだろう?」
「その前に娼婦に変わりましたから、残念ながら『僕ちゃん』には抱かれていません。部屋を暗くしたら顔なんてわからないし、そもそもあなたは顔より胸とお尻しか見ていないものね?」
ピンク髪の愛らしいメイドが、小ばかにしたようにそう言った。
「あなたは王家の特殊部隊に監視されていたのですよ。そうでなければ、三日間の猶予なんてありえませんよ」
ブラウン髪の美人タイプが鼻を鳴らす。
「そうそう。お利巧さんにしとけば修道士になって、そこでもお利巧さんにしていれば末端貴族に復帰できたかもしれないのにねぇ。おかわいそうに……あの三日間は最後の審判だったのよ」
黒髪のメガネっ子は僕を哀れんだ。しかし、目の奥は笑っている。
「……あの三日間の言動で刑が決まったのか? くそ親父があんなことを言い出したからだ。貴族の特権がなくなる前にそれを使って満喫しようなんて言うから……くそ親父のせいだ……俺のせいじゃないのに……」
「ばっかみたい。人のせいにしてるけど、結局自分だって喜んでそれに同調したくせに」
そう言われたら、返す言葉がない。
僕は凶悪犯罪者達と同じ馬車に乗せられた。その一人がしきりに僕に話しかけてくる。
「おい、お前なにやったんだ?」
「えっと……なにもしていないと思うんですが……」
「なにもしていないのに、凶悪犯罪奴隷専用の鉱山なんかに連れて行かれねーーよ。おいらは人間を50人ほど殺したけどさ。お前は何人?」
「ひっ……ひっ、ひっ(ひとりも、殺してないです)」
あまりに怖くて、”ひっ”までしか声が出せない。
「うぉーー。すげぇなぁ。お前、見かけによらずワルだな。100人かよ?」
(違う……違うって。誤解だよぉ。誰か助けて)
「じゃぁ、これから炭鉱に着くのが楽しみだなぁーー。おいらは半分締め上げるからよぉお、アニキはその倍を痛めつけちゃってくれよぉーー。そいで、おいら達であの鉱山の荒くれ者を子分にしよう!」
「へ? こ、子分?」
「そうだよ。おいらたちはもう仲間だ。いいか? 仲間に嘘をついたり裏切ったら、これよ」
男は懐からナイフを取り出し、首を掻っ切る真似事をして見せ、豪快に笑いだす。
(駄目だ。終わった……僕の人生。いったいどこで間違えたんだろう……)
(フランク視点)
奴隷収容所で、父上がムチを打たれたのがショックだった。平民に落ちても、普通の平民よりはいい暮らしができると思っていた。どんなに最悪でも僻地追放のように、王都から離れた山奥に住まわされるぐらいだろう、と思っていたのだ。まさか、些細なことですぐ鞭を打たれる奴隷になるなんて、あり得ない。
同じ年ごろの男達を収容した大部屋に入れられ、売られる時を待つ。こんな緊張感は初めてだし、恐ろしくてたまらない。
「おい、皆出ろ。奴隷オークションの時間だ」
所員がやって来て、僕たちは会場にパンツ1枚で向かわされた。
「なんで脱がせるんだよ!」
「基本、奴隷は服を着ないからさ。人間ではなく物だと自覚させる為だ。パンツをはかせてもらえるだけありがたいと思え。普通はぼろ布を腰に巻いて、大事なところを隠すだけさ」
「嘘だろう……」
「はい、この元貴族の坊ちゃん。1万ダラからですよぉーー。買う方はいますかぁーー?」
「はい、1万ダラで買うわ」
「他にいますか? 売れちゃいますよぉーー?」
「いいぞぉーー。そんな奴、誰もいらないよ」
「あぁ、そんなもやしみたいに筋肉のひとつもないんじゃ、力仕事だって無理そうだ」
「だよな。かと言って頭も悪そうだし……はっははは」
(下賤な者め! 僕を誰だと思っているんだ)
「はい、落札! 1万ダラで。あちらのご婦人たちです」
その女達をよく見れば、なんとカステジャノス侯爵家のメイド達だ。あの時に相手をしてやった子達か。
(わかったぞ。きっと僕のアレがとても良かったのか。ぐふふふ)
僕は女達の馬車に横柄な態度で乗ってやった。
「さぁ、今日は誰が僕に抱かれたいんだ? 3人とも僕の奪い合いで喧嘩をしないでくれよ」
その言葉に冷めた視線しか寄こさない女ども。
(なんだよ、どうしたんだ?)
しばらく走った後に急に馬車が止まり、目の前には窓枠に鉄格子がはまった馬車が見える。その馬車を騎士達が重装備で囲んでいた。
「お疲れ様です。ジョバンナ小隊長のご指示でこの男をこちらに引き渡しますね」
「はい、わかりました。こちら、凶悪犯罪奴隷収容ダイヤモンド鉱山行ですよ。お間違えないですね?」
騎士の質問に女たちが楽し気にうなづく。
「……嫌だ。こんな馬車には乗りたくない。そのジョバンナ小隊長って誰だよ? お前らはただのメイドだろう? 抱いてやったのを忘れたのかよ? だから僕を買ったんだろう?」
「その前に娼婦に変わりましたから、残念ながら『僕ちゃん』には抱かれていません。部屋を暗くしたら顔なんてわからないし、そもそもあなたは顔より胸とお尻しか見ていないものね?」
ピンク髪の愛らしいメイドが、小ばかにしたようにそう言った。
「あなたは王家の特殊部隊に監視されていたのですよ。そうでなければ、三日間の猶予なんてありえませんよ」
ブラウン髪の美人タイプが鼻を鳴らす。
「そうそう。お利巧さんにしとけば修道士になって、そこでもお利巧さんにしていれば末端貴族に復帰できたかもしれないのにねぇ。おかわいそうに……あの三日間は最後の審判だったのよ」
黒髪のメガネっ子は僕を哀れんだ。しかし、目の奥は笑っている。
「……あの三日間の言動で刑が決まったのか? くそ親父があんなことを言い出したからだ。貴族の特権がなくなる前にそれを使って満喫しようなんて言うから……くそ親父のせいだ……俺のせいじゃないのに……」
「ばっかみたい。人のせいにしてるけど、結局自分だって喜んでそれに同調したくせに」
そう言われたら、返す言葉がない。
僕は凶悪犯罪者達と同じ馬車に乗せられた。その一人がしきりに僕に話しかけてくる。
「おい、お前なにやったんだ?」
「えっと……なにもしていないと思うんですが……」
「なにもしていないのに、凶悪犯罪奴隷専用の鉱山なんかに連れて行かれねーーよ。おいらは人間を50人ほど殺したけどさ。お前は何人?」
「ひっ……ひっ、ひっ(ひとりも、殺してないです)」
あまりに怖くて、”ひっ”までしか声が出せない。
「うぉーー。すげぇなぁ。お前、見かけによらずワルだな。100人かよ?」
(違う……違うって。誤解だよぉ。誰か助けて)
「じゃぁ、これから炭鉱に着くのが楽しみだなぁーー。おいらは半分締め上げるからよぉお、アニキはその倍を痛めつけちゃってくれよぉーー。そいで、おいら達であの鉱山の荒くれ者を子分にしよう!」
「へ? こ、子分?」
「そうだよ。おいらたちはもう仲間だ。いいか? 仲間に嘘をついたり裏切ったら、これよ」
男は懐からナイフを取り出し、首を掻っ切る真似事をして見せ、豪快に笑いだす。
(駄目だ。終わった……僕の人生。いったいどこで間違えたんだろう……)
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