(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。

青空一夏

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20 R15

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※R15 具体的な残酷描写はありませんが、残酷さを想像できる展開になっています。死を連想させる表現あり。





 あのレストランにいた母親だ。
(わしはついている。この女の夫はお人よしだった。だから、多分たいして働かなくても多めに見てくれるだろう)

「元カステジャノス侯爵閣下。あなた様に相応しい場所にお連れしましょう。その前にっと……こんのぉーー、貴族の面汚しがっ!」
 わしの顔に唾を吐きかけた女は、わしを軽々と投げ飛ばした。さらに顔までグーで殴りつけ、凄みのある顔で笑いかける。

「あぁ、すっきりしたよ」

「お、お前。本当に女か? そんな怪力」

「ジョヴァンナ小隊長殿。この男をどこに連れていきますか?」
 馬車の両脇には王家の騎士が6人ほど立っている。

「そうだな。この監視対象に相応しい場所といえば、あそこしかなかろう?」

(おかしい。こいつは小隊長と呼ばれている。ただの平民の妻じゃないのか?)

「お前は何者だ?」

「ふっ。まだ気が付きませんか? あなたには常に監視役のわたしがついていました。あなたの行動を見越し、あのレストランに現れたのも作戦のひとつです。あのレストランに行きたくなったのは、新メニューのご案内のハガキを見たからですよね?」

「そのとおりだ。食べにいかなくては、と思ったのはわしの部屋にちょうどハガキが……」

「それを置いたのは、メイドのふりをしたわたしの配下の者です」

「なんだと! ということは、あの三日間のわしらの行動は全て仕組まれておったのか?」

「まぁ、誘導というかそんなようなものですね。愚か者ならやりそうなことを、あなた方は残らずやってくれました」

「罠か? いったいなんのために?」

「最終判断だそうです。一応あなた方は名門貴族のお血筋ですので、むやみに命は奪えないと思われたのでしょう。だったのですよ」

……するとわしの行き先は?……どこだ?」

「閣下の行く先は、神の元です。具体的には病院の付属施設ですね」

「は? わしはどこも悪くないぞ」

「だから、いいんじゃないですか? 健康だから医学に貢献できる。違いますか? 大丈夫です。閣下は性格も頭も悪いですがそのことができる……あぁ、着いたようですね。では、降りてください」

降りた先は、死体処理場?

「ちょっと待て。わしはまだ生きておる」

「今の閣下はその隣の薬剤研究所に行ってください。そして立派には、お隣の死体処理場に移動ですかね。頑張ってくださいね❤」

「いやだ、頼む、許してくれよ。今度こそ、心を入れ替えるから。もう平民も虐げないし、奴隷としても必死に働くから」

「閣下。ここにいるのも奴隷も多分余命は同じです。知っていますか? 過酷な労働を強いられた奴隷の平均寿命はおよそ3年。そこの施設の平均寿命も同じぐらいです。むしろ、そこの方が楽に死ねる。では、永遠にさようなら」



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※歴史的にも過酷な労働を強いられた黒人奴隷などの方々は、3年ほどで亡くなったという記事をどこかで読んだことがありましたので、なんとなくここで使わせていただきました。

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