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「ねぇ、お姉様! お姉様には、ちょうど婚約者がいないわね? マクシミリアン様を譲ってあげるわよ。ね、妹からのプレゼントよ。受け取ってちょうだい」
「そうよ。フランソワーズにはまだ婚約者がいないものねぇ? このような場合でもなければ、マクシミリアン様のような方があなたの婚約者になるなどあり得ないから、ベッツィーの好意に感謝しなさい」
お母様は、「とてもいいことを思いついたわね」と、ベッツィーに微笑んだ。
「なるほど、これで問題が解決するなぁ。フランソワーズだってカステジャノス侯爵家の娘であることには変わりがないし、早速フランソワーズを連れてあちらにご挨拶に行こう」
お父様も異論は唱えず大賛成だ。
「良かったなぁ、ベッツィー。フランソワーズもこういう時には役に立つんだな。初めて、妹がもう一人いて良かったと思ったよ」
「あたくしも、初めてフランソワーズも家族なのだ、という気がしてきましたわ。でも、フランソワーズにはちゃんとしたドレスがないわね。まぁ、ベッツィーのを着させればいいわね。新しくあつらえるのも、もったいないし」
私はベッツィーの着古したドレスを着る。それは私にはだいぶ裾が短めだったが、色は水色だったので私の髪色と瞳色には馴染んだ。
「さて、新しいベッツィーの婚約者は誰にしようか?」
リュシュパン公爵家に向かう途中、馬車内でお父様はお母様に話しかける。
「そうですわねぇーー。なるべくカステジャノス侯爵領や王都近くに住まう高位貴族の嫡男が良いですわね。早く手を打たないと、他の令嬢にとられてしまいますわ。17歳を過ぎたら条件の良い方とは婚約できませんよ」
「だな。ベッツィの嫁ぎ先は慎重に選んでやらないとなぁ。あの子には幸せになってほしい」
私はベッツィーの心配だけをしきりにする両親の言葉を、ボンヤリと聞きながら窓外の景色に目を向ける。陽射しに照らされた若葉が、柔らかな風にそよぐうららかな日であるのに・・・・・・私の心の空は暗くてどんよりと曇っていた。
リュシュパン公爵家に到着し応接室に通される。広く豪華な応接室でしばらく待たされた後、リュシュパン公爵夫妻が入室していらっしゃった。
「先触れもなく突然、本日はどのようなご用向きでいらっしゃったのですか?」
穏やかな口調で尋ねるリュシュパン公爵夫人だけれど、いきなり来たことに気分を少しだけ害していらっしゃる。
「こちらのフランソワーズはベッツィーの姉です。実はこのフランソワーズが少々我が儘娘でして、マクシミリアン様の婚約者に自分がどうしてもなりたいと言うので、仕方なくこちらにお願いに参りました」
お父様はそう言いながら私を睨む。まるで、余計なことは言うなよ、というように。
「マクシミリアンは今、大変な病気と戦っているのだぞ? このような時期に、婚約者を妹から姉に替えろというのか?」
リュシュパン公爵はいらだちを隠さない。
「も、申し訳ありません。こ、この子がどうしてもマクシミリアン様と一緒にいたいと言うので」
お母様は、なんとしても私のせいにしたいらしい。
「一緒にいたい? 嘘でしょう? あの子は今隔離されています。伝染する病気かもしれないのよ。看病するメイドも怖がってやめてしまうし・・・・・・」
リュシュパン公爵夫人は項垂れた。
「私に看病させていただけないでしょうか?」
私は、ついマクシミリアン様が可哀想になってしまう。
「感染してあなたも危険な状況になるかもしれないのよ?」
「構いません。それほど大事な命ではないので」
ギョッとするリュシュパン公爵夫妻に、お母様達が慌てて言い訳を始めた。
「このフランソワーズは少し変わった子でして・・・・・・特に深い意味があるわけで言ったのではないのですわ・・・・・・おっほほほ」
「そうそう。フランソワーズや、なんでそんなことを言ったんだい? いつもワシらはお前を大切にしているだろう?」
私は両親の言葉になんの反応もしなかった。なにも言わない方が良い。両親やベッツィー、兄達と揉めそうになった時は口を閉じておくのに限る。
「婚約者交代の話しは了承しましたわ。この子をここに置いてお帰りくださいませ」
リュシュパン公爵夫人の言葉に、ホッとしたように帰っていく両親。お母様達は私を振り返りもしなかった。
私は居心地の悪い思いで、リュシュパン公爵夫妻の前で萎縮している。
すると、
「息子を頼むよ。フランソワーズはもうこちらの家族だ。気を楽にして」
リュシュパン公爵は、私の前に美味しそうなチョコレートケーキをそっと置いたのだった。
「そうよ。フランソワーズにはまだ婚約者がいないものねぇ? このような場合でもなければ、マクシミリアン様のような方があなたの婚約者になるなどあり得ないから、ベッツィーの好意に感謝しなさい」
お母様は、「とてもいいことを思いついたわね」と、ベッツィーに微笑んだ。
「なるほど、これで問題が解決するなぁ。フランソワーズだってカステジャノス侯爵家の娘であることには変わりがないし、早速フランソワーズを連れてあちらにご挨拶に行こう」
お父様も異論は唱えず大賛成だ。
「良かったなぁ、ベッツィー。フランソワーズもこういう時には役に立つんだな。初めて、妹がもう一人いて良かったと思ったよ」
「あたくしも、初めてフランソワーズも家族なのだ、という気がしてきましたわ。でも、フランソワーズにはちゃんとしたドレスがないわね。まぁ、ベッツィーのを着させればいいわね。新しくあつらえるのも、もったいないし」
私はベッツィーの着古したドレスを着る。それは私にはだいぶ裾が短めだったが、色は水色だったので私の髪色と瞳色には馴染んだ。
「さて、新しいベッツィーの婚約者は誰にしようか?」
リュシュパン公爵家に向かう途中、馬車内でお父様はお母様に話しかける。
「そうですわねぇーー。なるべくカステジャノス侯爵領や王都近くに住まう高位貴族の嫡男が良いですわね。早く手を打たないと、他の令嬢にとられてしまいますわ。17歳を過ぎたら条件の良い方とは婚約できませんよ」
「だな。ベッツィの嫁ぎ先は慎重に選んでやらないとなぁ。あの子には幸せになってほしい」
私はベッツィーの心配だけをしきりにする両親の言葉を、ボンヤリと聞きながら窓外の景色に目を向ける。陽射しに照らされた若葉が、柔らかな風にそよぐうららかな日であるのに・・・・・・私の心の空は暗くてどんよりと曇っていた。
リュシュパン公爵家に到着し応接室に通される。広く豪華な応接室でしばらく待たされた後、リュシュパン公爵夫妻が入室していらっしゃった。
「先触れもなく突然、本日はどのようなご用向きでいらっしゃったのですか?」
穏やかな口調で尋ねるリュシュパン公爵夫人だけれど、いきなり来たことに気分を少しだけ害していらっしゃる。
「こちらのフランソワーズはベッツィーの姉です。実はこのフランソワーズが少々我が儘娘でして、マクシミリアン様の婚約者に自分がどうしてもなりたいと言うので、仕方なくこちらにお願いに参りました」
お父様はそう言いながら私を睨む。まるで、余計なことは言うなよ、というように。
「マクシミリアンは今、大変な病気と戦っているのだぞ? このような時期に、婚約者を妹から姉に替えろというのか?」
リュシュパン公爵はいらだちを隠さない。
「も、申し訳ありません。こ、この子がどうしてもマクシミリアン様と一緒にいたいと言うので」
お母様は、なんとしても私のせいにしたいらしい。
「一緒にいたい? 嘘でしょう? あの子は今隔離されています。伝染する病気かもしれないのよ。看病するメイドも怖がってやめてしまうし・・・・・・」
リュシュパン公爵夫人は項垂れた。
「私に看病させていただけないでしょうか?」
私は、ついマクシミリアン様が可哀想になってしまう。
「感染してあなたも危険な状況になるかもしれないのよ?」
「構いません。それほど大事な命ではないので」
ギョッとするリュシュパン公爵夫妻に、お母様達が慌てて言い訳を始めた。
「このフランソワーズは少し変わった子でして・・・・・・特に深い意味があるわけで言ったのではないのですわ・・・・・・おっほほほ」
「そうそう。フランソワーズや、なんでそんなことを言ったんだい? いつもワシらはお前を大切にしているだろう?」
私は両親の言葉になんの反応もしなかった。なにも言わない方が良い。両親やベッツィー、兄達と揉めそうになった時は口を閉じておくのに限る。
「婚約者交代の話しは了承しましたわ。この子をここに置いてお帰りくださいませ」
リュシュパン公爵夫人の言葉に、ホッとしたように帰っていく両親。お母様達は私を振り返りもしなかった。
私は居心地の悪い思いで、リュシュパン公爵夫妻の前で萎縮している。
すると、
「息子を頼むよ。フランソワーズはもうこちらの家族だ。気を楽にして」
リュシュパン公爵は、私の前に美味しそうなチョコレートケーキをそっと置いたのだった。
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