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3 共通の敵に芽生える女の友情 (シャローット視点)
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シャーロット視点
いい加減離宮に来るのはやめようと踵を返したとき、紙飛行機が私の足下にガサリと音を立てて落ちた。その紙を広げて見たら……
『……閉じ込められている……』
の文字が!
なるほどね、道理でおかしいと思った。私は翌日離宮の侍女に金を握らせ、スペアの侍女服を借り受けた。こういうときは汚い手でもいいと思う。侍女のふりをしてうまく離宮に入り込んだ私は、ルルが捕らえられているという部屋に向かった。
一番豪華な部屋は3部屋続きで、広い居間と書斎にキングサイズのベッドが置いてある寝室がある。一番奥にあるウォークインクローゼットにはおびただしい数のドレスが収納されていたが、ルルはそれには興味はないらしく納品の際にかぶせられる透明カバーにくるまれたままだった。
「食事ならそこに置いてよ。もう食べる気もしないわ。一歩もここから出られないんだもん! さっさとあたしを解放してよ。仲間の踊り子達はもうこの国にはいないのかな? あたしを置いていくなんて酷いよ」
「……ルル様がここにいるのは自分の意思だと思われているわよ。世間ではルル様は王太子殿下の寵愛を独り占めにする悪女と言われているのよ?」
私はルルの表情を確かめながら言葉をかけてみる。
「あっははは! まさか……あたしはこんな暮らし、望んじゃないさ! 寵愛? 冗談じゃないよ。確かに王太子は夜になると一緒に寝ようとするけどさ、あたしは『舌をかみ切って死んでやるからね! 』って言ってるんだよ。好きな男とでなきゃそんなことはしないよ」
「あら、まぁ。ということは王太子殿下はルル様の気持ちを手に入れたいから毎日プレゼントをしてここに入り浸っているということね。しかも外に出さないのは逃げられない為か・・・・・・とんだ監禁野郎だわ」と、私。
「あぁ、その通りだよ。あんなにドレスがあったって自由がないんじゃ生きている意味なんてありゃしないよ。あたしはカナリアじゃないんだよ。今は籠に入れられた鳥の気持ちがとてもよくわかるよ」と、ルル。
私は少し考えてとてもいいことを思いついた。
「そうしたらねぇ、まずは王太子の心を受け入れたふりをしてほしいわ。あなたの踊り子仲間はまだこの国にいるわ。その子達を王宮に招きましょう。実は10日後には第二王子殿下のお誕生の祝いの宴が開かれるのよ。そこでその子達と一緒にルル様と王太子殿下が踊るってどうかしら?」
「え! 王太子に踊らせるのかい?」
「そうよ。ルル様がその気にさせるのよ。一緒に踊り子の格好をして、王太子には剣の舞をさせればいいわ。練習させるの。『剣舞が上手に踊れる方ってとても素敵ですわ! アレックス様はとてもすばらしく踊れるんですのね』なんてウットリした表情で言ってみて。王太子殿下は大層、おだてには弱い方よ」
「もしかして、あなたは侍女じゃない?」
「うふふ。そうよ、私はシャーロット・ビビアン侯爵令嬢よ。二人で協力してお互いの目標を達成させましょう」
私は深くかぶっていたメイドキャップをおもむろに脱ぎ、ルルににっこりと微笑んだ。
「あれ、あの紙飛行機ちゃんと届いたんだね。お嬢様が王太子の婚約者ってメイドから聞いたよ。あたしは王太子なんて少しも好きじゃないんだよ。だから誤解しないでくれるといいな。あたしはここから逃げたいのさ」
「もちろんわかっているわ。私も王太子殿下は好きじゃないのよ。だから私達はとてもいい友人になれると思うわよ」
私がニヤリと笑うとルルもニヤリと口角を上げたのだった。
女は共通の敵がいればすぐに仲良くなれるのだ。
いい加減離宮に来るのはやめようと踵を返したとき、紙飛行機が私の足下にガサリと音を立てて落ちた。その紙を広げて見たら……
『……閉じ込められている……』
の文字が!
なるほどね、道理でおかしいと思った。私は翌日離宮の侍女に金を握らせ、スペアの侍女服を借り受けた。こういうときは汚い手でもいいと思う。侍女のふりをしてうまく離宮に入り込んだ私は、ルルが捕らえられているという部屋に向かった。
一番豪華な部屋は3部屋続きで、広い居間と書斎にキングサイズのベッドが置いてある寝室がある。一番奥にあるウォークインクローゼットにはおびただしい数のドレスが収納されていたが、ルルはそれには興味はないらしく納品の際にかぶせられる透明カバーにくるまれたままだった。
「食事ならそこに置いてよ。もう食べる気もしないわ。一歩もここから出られないんだもん! さっさとあたしを解放してよ。仲間の踊り子達はもうこの国にはいないのかな? あたしを置いていくなんて酷いよ」
「……ルル様がここにいるのは自分の意思だと思われているわよ。世間ではルル様は王太子殿下の寵愛を独り占めにする悪女と言われているのよ?」
私はルルの表情を確かめながら言葉をかけてみる。
「あっははは! まさか……あたしはこんな暮らし、望んじゃないさ! 寵愛? 冗談じゃないよ。確かに王太子は夜になると一緒に寝ようとするけどさ、あたしは『舌をかみ切って死んでやるからね! 』って言ってるんだよ。好きな男とでなきゃそんなことはしないよ」
「あら、まぁ。ということは王太子殿下はルル様の気持ちを手に入れたいから毎日プレゼントをしてここに入り浸っているということね。しかも外に出さないのは逃げられない為か・・・・・・とんだ監禁野郎だわ」と、私。
「あぁ、その通りだよ。あんなにドレスがあったって自由がないんじゃ生きている意味なんてありゃしないよ。あたしはカナリアじゃないんだよ。今は籠に入れられた鳥の気持ちがとてもよくわかるよ」と、ルル。
私は少し考えてとてもいいことを思いついた。
「そうしたらねぇ、まずは王太子の心を受け入れたふりをしてほしいわ。あなたの踊り子仲間はまだこの国にいるわ。その子達を王宮に招きましょう。実は10日後には第二王子殿下のお誕生の祝いの宴が開かれるのよ。そこでその子達と一緒にルル様と王太子殿下が踊るってどうかしら?」
「え! 王太子に踊らせるのかい?」
「そうよ。ルル様がその気にさせるのよ。一緒に踊り子の格好をして、王太子には剣の舞をさせればいいわ。練習させるの。『剣舞が上手に踊れる方ってとても素敵ですわ! アレックス様はとてもすばらしく踊れるんですのね』なんてウットリした表情で言ってみて。王太子殿下は大層、おだてには弱い方よ」
「もしかして、あなたは侍女じゃない?」
「うふふ。そうよ、私はシャーロット・ビビアン侯爵令嬢よ。二人で協力してお互いの目標を達成させましょう」
私は深くかぶっていたメイドキャップをおもむろに脱ぎ、ルルににっこりと微笑んだ。
「あれ、あの紙飛行機ちゃんと届いたんだね。お嬢様が王太子の婚約者ってメイドから聞いたよ。あたしは王太子なんて少しも好きじゃないんだよ。だから誤解しないでくれるといいな。あたしはここから逃げたいのさ」
「もちろんわかっているわ。私も王太子殿下は好きじゃないのよ。だから私達はとてもいい友人になれると思うわよ」
私がニヤリと笑うとルルもニヤリと口角を上げたのだった。
女は共通の敵がいればすぐに仲良くなれるのだ。
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