7 / 9
7 クラーク王太子視点
しおりを挟む
「俺を断罪するのか? 何様のつもりだ。第2王子の分際で!」
この世界は俺のものだ。俺を中心に操り人形達が動く夢の世界。ここでの絶対的支配者は俺だけだ。
「黙れ! 今までがおかしかったのだ。少しも優秀でない愚かな長男が王太子になっていることがそもそもの間違いなのだ。その眼鏡のお陰で皆が正気に戻れた。でかしたぞ、アルフォンス」
父上がアルフォンスを褒める。こんなことは初めてだ。
「いや、ここは男性版ハーレムゲームの世界だろう? 俺は何をしても許されてウハウハな生活が満喫できるはずだった。ここは成人向けのアダルトゲームなはずじゃぁないのか」
ストーリーも登場人物も激似しているけれどこんな眼鏡はどこにも出てこなかった。弟アルフォンスの国外追放を取り消したのがいけなかったのだろうか? これからはハーレム状態で、まさに多数の女と遊びまくるという展開になるはずだったのに。
「そうか、アルフォンスがまだ国内にいるからストーリーが変わってきてしまったんだ。アルフォンスはここにいてはいけない人間だな。こいつがいなくなれば、この世界の若くて美しい女は全て俺のものになる」
俺はつい声に出して本音を漏らしてしまう。そう、俺は嘘がつけない純粋な人間だから。
「恐ろしい人ですね。女性がそれほど好きなのであれば遠い異国の女性ばかりの国に追放して差し上げましょう。どうぞそこで終生お暮らしください」
アルフォンスがパラダイスな提案を俺に投げかけた。
「女ばかりの国があるのか? なんと素晴らしい国だ。俺はそこで王様のように女達にかしづかれたい。まさに男の夢だよ」
俺はアルフォンスに感謝さえした。なんて良い弟だ。
女ばかりの国境に捨てられ、そちらに入国する際に聞かれたことは一つだけだ。
「男がこの国の民になるには条件があります。健康な若い女性に子供を授けることです。それが仕事になりますが、よろしいですか? それから……」
「いや、面倒な説明はそれ以上はいらない。そんな天国な条件ならいくらでも飲むから」
俺は男としてヒャッホーな条件を女王様から提示され、説明を途中で遮り嬉々として入国した。
(こんな男のパラダイス、誰が断るんだよ?)
そして俺はせっせとたくさんの女達と子作りに励む。最初は天国だった。ところが、これが仕事になってくると苦痛を感じるようになる。毎日、毎日、女と四六時中しろ、と言われても俺だって寝たいし、したくない日だってあるよ。
「何をサボっているのですか! 最低限の睡眠と食事時間以外は、やることは一つです。この国にはお前しか男はいないのですよ? できなくなるまで女性に子種を授けるのです!」
この国に来てから5年が経とうとしていた。最早、女とすることは少しも楽しくなくなり、干からびて死にそうだ。
「俺は種馬じゃねー。もう限界だ。少しは休ませろ」
「できなくなったらお前にはなんの価値もないです。その後は死刑が待っています」
「いや、待て。なんで死刑なんだよ? 俺はこの国に多大な貢献をしただろう?」
「この国では代々、男はその為だけに存在します。女が1番尊い生き物ですから男は用が済んだら殺されます」
「まさか……そんなの聞いてないよ」
「今初めて言いました。だってお前は説明を遮ったでしょう? 愚かな男は皆んなそうです。考えてもご覧なさい。なぜここに男が1人もいないのか。それは男は用が済んだら殺されるからです」
「……だって、産まれてくる子の中には男がいてもおかしくないだろう? 産まれてきた男の子も殺すのか?」
「この国の女達は女しか産めないようになっています。それがなぜかはわかりませんが、きっと女神様のご意志なのでしょう」
「どんな底意地の悪い女神だよ!」
「お前は即刻死刑です! 偉大な女神様のことを悪くいうなど、罰当たりめがっ!」
この国では昔、男を巡って女達が取り合いをし殺し合うようになったことがあったらしい。多くの血が流れてこの国は崩壊寸前になったとか。その為、この国の女達は男に夢中にならないよう暗示をかけられながら育てられるという。
つまり俺の魅了の魔法はここでは無効化されるってわけさ。あのけしからん眼鏡がはずれた後も、道理で女達の反応が変わらなかったはずさ。
そうして俺はあっという間に処刑される……と思ったら洞穴に閉じ込められそのまま放置された。水も食い物もなくひたすら寒い洞穴で1人寂しく飢えながら餓死するという末路だ。
(み、水……喉が渇いて死にそうだ……酷いよ。こんなの聞いてない。今ならカマキリの雄の気持ちが痛いほどわかるよ。雄蜂の気持ちもな。こんなはずじゃなかったのに)
俺は今更自分の行いを悔いたけれどそれはあまりに遅すぎた。死はなかなか訪れないし、短くはない苦痛を味わう羽目になったのだった。
この世界は俺のものだ。俺を中心に操り人形達が動く夢の世界。ここでの絶対的支配者は俺だけだ。
「黙れ! 今までがおかしかったのだ。少しも優秀でない愚かな長男が王太子になっていることがそもそもの間違いなのだ。その眼鏡のお陰で皆が正気に戻れた。でかしたぞ、アルフォンス」
父上がアルフォンスを褒める。こんなことは初めてだ。
「いや、ここは男性版ハーレムゲームの世界だろう? 俺は何をしても許されてウハウハな生活が満喫できるはずだった。ここは成人向けのアダルトゲームなはずじゃぁないのか」
ストーリーも登場人物も激似しているけれどこんな眼鏡はどこにも出てこなかった。弟アルフォンスの国外追放を取り消したのがいけなかったのだろうか? これからはハーレム状態で、まさに多数の女と遊びまくるという展開になるはずだったのに。
「そうか、アルフォンスがまだ国内にいるからストーリーが変わってきてしまったんだ。アルフォンスはここにいてはいけない人間だな。こいつがいなくなれば、この世界の若くて美しい女は全て俺のものになる」
俺はつい声に出して本音を漏らしてしまう。そう、俺は嘘がつけない純粋な人間だから。
「恐ろしい人ですね。女性がそれほど好きなのであれば遠い異国の女性ばかりの国に追放して差し上げましょう。どうぞそこで終生お暮らしください」
アルフォンスがパラダイスな提案を俺に投げかけた。
「女ばかりの国があるのか? なんと素晴らしい国だ。俺はそこで王様のように女達にかしづかれたい。まさに男の夢だよ」
俺はアルフォンスに感謝さえした。なんて良い弟だ。
女ばかりの国境に捨てられ、そちらに入国する際に聞かれたことは一つだけだ。
「男がこの国の民になるには条件があります。健康な若い女性に子供を授けることです。それが仕事になりますが、よろしいですか? それから……」
「いや、面倒な説明はそれ以上はいらない。そんな天国な条件ならいくらでも飲むから」
俺は男としてヒャッホーな条件を女王様から提示され、説明を途中で遮り嬉々として入国した。
(こんな男のパラダイス、誰が断るんだよ?)
そして俺はせっせとたくさんの女達と子作りに励む。最初は天国だった。ところが、これが仕事になってくると苦痛を感じるようになる。毎日、毎日、女と四六時中しろ、と言われても俺だって寝たいし、したくない日だってあるよ。
「何をサボっているのですか! 最低限の睡眠と食事時間以外は、やることは一つです。この国にはお前しか男はいないのですよ? できなくなるまで女性に子種を授けるのです!」
この国に来てから5年が経とうとしていた。最早、女とすることは少しも楽しくなくなり、干からびて死にそうだ。
「俺は種馬じゃねー。もう限界だ。少しは休ませろ」
「できなくなったらお前にはなんの価値もないです。その後は死刑が待っています」
「いや、待て。なんで死刑なんだよ? 俺はこの国に多大な貢献をしただろう?」
「この国では代々、男はその為だけに存在します。女が1番尊い生き物ですから男は用が済んだら殺されます」
「まさか……そんなの聞いてないよ」
「今初めて言いました。だってお前は説明を遮ったでしょう? 愚かな男は皆んなそうです。考えてもご覧なさい。なぜここに男が1人もいないのか。それは男は用が済んだら殺されるからです」
「……だって、産まれてくる子の中には男がいてもおかしくないだろう? 産まれてきた男の子も殺すのか?」
「この国の女達は女しか産めないようになっています。それがなぜかはわかりませんが、きっと女神様のご意志なのでしょう」
「どんな底意地の悪い女神だよ!」
「お前は即刻死刑です! 偉大な女神様のことを悪くいうなど、罰当たりめがっ!」
この国では昔、男を巡って女達が取り合いをし殺し合うようになったことがあったらしい。多くの血が流れてこの国は崩壊寸前になったとか。その為、この国の女達は男に夢中にならないよう暗示をかけられながら育てられるという。
つまり俺の魅了の魔法はここでは無効化されるってわけさ。あのけしからん眼鏡がはずれた後も、道理で女達の反応が変わらなかったはずさ。
そうして俺はあっという間に処刑される……と思ったら洞穴に閉じ込められそのまま放置された。水も食い物もなくひたすら寒い洞穴で1人寂しく飢えながら餓死するという末路だ。
(み、水……喉が渇いて死にそうだ……酷いよ。こんなの聞いてない。今ならカマキリの雄の気持ちが痛いほどわかるよ。雄蜂の気持ちもな。こんなはずじゃなかったのに)
俺は今更自分の行いを悔いたけれどそれはあまりに遅すぎた。死はなかなか訪れないし、短くはない苦痛を味わう羽目になったのだった。
8
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁の理由は愛されたいと思ったからです
さこの
恋愛
①私のプライバシー、プライベートに侵害する事は許さない
②白い結婚とする
③アグネスを虐めてはならない
④侯爵家の夫人として務めよ
⑤私の金の使い道に異論は唱えない
⑥王家主催のパーティー以外出席はしない
私に愛されたいと思うなよ? 結婚前の契約でした。
私は十六歳。相手は二十四歳の年の差婚でした。
結婚式に憧れていたのに……
ホットランキング入りありがとうございます
2022/03/27
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
悪役令嬢がキレる時
リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき
ざまぁしてみせましょ
悪役令嬢の名にかけて!
========
※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。
あらかじめご承知おき下さい
突発で書きました。
4話完結です。
旦那様と浮気相手に居場所を奪われた伯爵夫人ですが、周りが離縁させようと動き出したようです(旧題:私を見下す旦那様)
めぐめぐ
恋愛
政略結婚をした伯爵夫人フェリーチェはある日、夫レイジィと女中頭アイリーンの情事を目撃してしまう。
フェリーチェがレイジィの言いなりであるのをいいことに、アイリーンが産んだ子に家を継がせるつもりだということも。
女中頭アイリーンに自分の居場所をとられ、持ち物を奪われ、レイジィもアイリーンの味方をしてフェリーチェを無能だと見下し罵るが、自分のせいで周囲に迷惑をかけたくないと耐え続けるフェリーチェ。
しかし彼女の幸せを願う者たちが、二人を離縁させようと動き出していた……。
※2021.6.2 完結しました♪読んで頂いた皆様、ありがとうございました!
※2021.6.3 ホトラン入りありがとうございます♪
※初ざまぁ作品です、色々と足りない部分もありますが温かい目で見守ってください(;^ω^)
※中世ヨーロッパ風世界観ですが、貴族制度などは現実の制度と違いますので、「んなわけないやろー!m9(^Д^)」があっても、そういうものだと思ってください(笑)
※頭空っぽ推奨
※イラストは「ノーコピーライトガール」様より
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる