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2 早速のざまぁはレモン水
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「ちょっとぉーー! 私の娘のくせに自ら死を選ぶってへなちょこさんねぇ。しっかりなさいな!」
――え? この声は誰? 私の娘って・・・・・・?
「ほら、お母様よ。あなたを産んですぐに亡くなったレディローズ女公爵です。全く情けない。あなたは押しも押されぬ次期女公爵ですよ! マヨーズラ侯爵家の三男なんかにコケにされて! ここは悲しむところではなくってよ! 怒るところなのよ! いいこと! やられたらやり返す! 倍返し、いいえ、3倍返しですわ!」
「3倍返し? そんなこと私にできるでしょうか? それにお母様、なぜ私の頭の中にいらっしゃるのですか?」
「それはね、あなたの守護霊として赤ちゃんの頃から見守っていたのにあなたときたら歯がゆいことばかりするのですもの! あのおバカも私が亡くなったらさっさと再婚しゃがって恩知らずが! だいたい、あいつ(マドンナの父親のことです)は昔から優柔不断でお人好しのおバカだったわ。まぁ、モテすぎた私の気まぐれで夫にしたようなものよ。ふん!」
「モテすぎて・・・・・・本当に私はお母様の娘なのでしょうか? その強気な物言い・・・・・・とても私にはできません」
私はそう言いながらも自分自身が情けなくなっていた。
私のお母様はレディローズ女公爵で絶世の美女だった。私と同じストロベリーブロンドで淡いピンクの瞳は女性達の嫉妬と羨望の的だったとか。顔立ちはこの世のものとは思えないほど美麗で儚げな容姿とは裏腹に強く逞しい女傑。
諸外国の王子達を手玉にとり、自由奔放に恋愛を楽しみ結婚したのは格下のお人好しのお父様だった。私の性格はどちらかと言えばお父様似で、髪と瞳はお母様似だ。
「私はお母様と似ているのは髪と瞳の色だけです。少しも美しくありません」
消え入りそうな声でささやく。
「ばかね! 女性は美しさだけに価値があるわけではないわ。それにマドンナが産まれた時は私に生き写しだった。そのちょっとふっくらしすぎた体型は早速運動と食事療法が必要ね。それにしても私は太る体質ではなかったのに、娘のあなたはなぜこんなことになったのかしら?」
お母様の言葉に恥ずかしさでいっぱいになった。
夕食の時間に私はいつものように席につくが、今日はお父様の姿はなかった。すぐにレモン水が運ばれてきて一口飲むと、お母様が『うげっ』と妙な声を出した。
「どうしました?」私はお母様に頭の中で尋ねるとお母様は不思議なことを言ったの。
「レモン水がこんなに甘いわけないじゃない! これじゃかき氷にかけるシロップよ! マドンナはいつもこんなものを飲んでいたの?」
「え? はい。物心ついたときからこんなかんじでしたよ」
「ちょっと入れ代わらせてもらうわよ。マドンナは見ていなさい」
頭の中でお母様がおっしゃると、お母様が私の表面に浮上してくるような感覚がした。なんだか、自分であって自分でないみたい。
「ちょっと、そこのメイド! この水を代えなさい」
私の声が少しきつめにメイドに命令していた。
「あら、マドンナ。どうしたの? いつもの水でしょう。たっぷり飲みなさい。レモン水はカロリーゼロよ。飲めば飲むほど美容にいいわ」
義母のサマンサと妹のミユキーナはごくごくとレモン水を飲んだ。レモン水はウォーターピッチャーに入れられて各々の前に一個ずつ並べらていた。
「そうね。サマンサ様のレモン水がとても美味しそうだわ。私、サマンサ様のように綺麗になりたいからそのレモン水のピッチャーと交換してくださらない?」
「え? おっほほほ。同じ水ですよ? 交換したところで意味はないでしょう?」
「あら、ありますわ。交換しましょう。そのピッチャーをこちらに渡して。私のピッチャーはあちらに・・・・・・」
私はメイドに命令して交換させようとするがサマンサは不思議なほど抵抗した。
「いい加減になさい! 同じ水だと言っているでしょう? 黙って与えられた物を飲んで食べていればいいのです! 豚のように太っているのは自分が怠惰だからでしょう! レモン水に罪をなすりつけないで!」
「あら、なんのことかしら? 私が太っているのがこのレモン水のせいだなんて言っておりませんよ? ところで今の言葉は不敬罪ではないかしら? 私はレディローズ女公爵の一人娘ですよ。次期女公爵でお父様は代行にすぎません。いわば、私が当主です。当主たる私に豚とは聞き捨てなりませんねぇ。サマンサ様、私のピッチャーのレモン水を全て飲みなさい!」
「ひっ! 私は喉が渇いておりませんので結構ですわ」
「遠慮せずとも、いつものように全て飲み干しなさい。ほら、美容に良いのでしょう? さて、私のレモン水を作った者は誰かしら?」
私の問いかけにメイドの一人が恐る恐る手を上げた。
「えっと、私でございます」
「そう。ならば、これからはサマンサ様のレモン水を私の時と同じレシピで作ってあげなさい。わかりましたね?」
「は、はい」
びくびくと震えるメイドに命令してサマンサを見れば青ざめながらも必死になって私のレモン水を飲み干した。
「ふっ。これからはサマンサ様がそのとても甘くて美味しいレモン水を楽しむ番ですわ」
私の中のお母様は有無を言わさぬ口調で艶やかに微笑みながらそうおっしゃったのだった。
――え? この声は誰? 私の娘って・・・・・・?
「ほら、お母様よ。あなたを産んですぐに亡くなったレディローズ女公爵です。全く情けない。あなたは押しも押されぬ次期女公爵ですよ! マヨーズラ侯爵家の三男なんかにコケにされて! ここは悲しむところではなくってよ! 怒るところなのよ! いいこと! やられたらやり返す! 倍返し、いいえ、3倍返しですわ!」
「3倍返し? そんなこと私にできるでしょうか? それにお母様、なぜ私の頭の中にいらっしゃるのですか?」
「それはね、あなたの守護霊として赤ちゃんの頃から見守っていたのにあなたときたら歯がゆいことばかりするのですもの! あのおバカも私が亡くなったらさっさと再婚しゃがって恩知らずが! だいたい、あいつ(マドンナの父親のことです)は昔から優柔不断でお人好しのおバカだったわ。まぁ、モテすぎた私の気まぐれで夫にしたようなものよ。ふん!」
「モテすぎて・・・・・・本当に私はお母様の娘なのでしょうか? その強気な物言い・・・・・・とても私にはできません」
私はそう言いながらも自分自身が情けなくなっていた。
私のお母様はレディローズ女公爵で絶世の美女だった。私と同じストロベリーブロンドで淡いピンクの瞳は女性達の嫉妬と羨望の的だったとか。顔立ちはこの世のものとは思えないほど美麗で儚げな容姿とは裏腹に強く逞しい女傑。
諸外国の王子達を手玉にとり、自由奔放に恋愛を楽しみ結婚したのは格下のお人好しのお父様だった。私の性格はどちらかと言えばお父様似で、髪と瞳はお母様似だ。
「私はお母様と似ているのは髪と瞳の色だけです。少しも美しくありません」
消え入りそうな声でささやく。
「ばかね! 女性は美しさだけに価値があるわけではないわ。それにマドンナが産まれた時は私に生き写しだった。そのちょっとふっくらしすぎた体型は早速運動と食事療法が必要ね。それにしても私は太る体質ではなかったのに、娘のあなたはなぜこんなことになったのかしら?」
お母様の言葉に恥ずかしさでいっぱいになった。
夕食の時間に私はいつものように席につくが、今日はお父様の姿はなかった。すぐにレモン水が運ばれてきて一口飲むと、お母様が『うげっ』と妙な声を出した。
「どうしました?」私はお母様に頭の中で尋ねるとお母様は不思議なことを言ったの。
「レモン水がこんなに甘いわけないじゃない! これじゃかき氷にかけるシロップよ! マドンナはいつもこんなものを飲んでいたの?」
「え? はい。物心ついたときからこんなかんじでしたよ」
「ちょっと入れ代わらせてもらうわよ。マドンナは見ていなさい」
頭の中でお母様がおっしゃると、お母様が私の表面に浮上してくるような感覚がした。なんだか、自分であって自分でないみたい。
「ちょっと、そこのメイド! この水を代えなさい」
私の声が少しきつめにメイドに命令していた。
「あら、マドンナ。どうしたの? いつもの水でしょう。たっぷり飲みなさい。レモン水はカロリーゼロよ。飲めば飲むほど美容にいいわ」
義母のサマンサと妹のミユキーナはごくごくとレモン水を飲んだ。レモン水はウォーターピッチャーに入れられて各々の前に一個ずつ並べらていた。
「そうね。サマンサ様のレモン水がとても美味しそうだわ。私、サマンサ様のように綺麗になりたいからそのレモン水のピッチャーと交換してくださらない?」
「え? おっほほほ。同じ水ですよ? 交換したところで意味はないでしょう?」
「あら、ありますわ。交換しましょう。そのピッチャーをこちらに渡して。私のピッチャーはあちらに・・・・・・」
私はメイドに命令して交換させようとするがサマンサは不思議なほど抵抗した。
「いい加減になさい! 同じ水だと言っているでしょう? 黙って与えられた物を飲んで食べていればいいのです! 豚のように太っているのは自分が怠惰だからでしょう! レモン水に罪をなすりつけないで!」
「あら、なんのことかしら? 私が太っているのがこのレモン水のせいだなんて言っておりませんよ? ところで今の言葉は不敬罪ではないかしら? 私はレディローズ女公爵の一人娘ですよ。次期女公爵でお父様は代行にすぎません。いわば、私が当主です。当主たる私に豚とは聞き捨てなりませんねぇ。サマンサ様、私のピッチャーのレモン水を全て飲みなさい!」
「ひっ! 私は喉が渇いておりませんので結構ですわ」
「遠慮せずとも、いつものように全て飲み干しなさい。ほら、美容に良いのでしょう? さて、私のレモン水を作った者は誰かしら?」
私の問いかけにメイドの一人が恐る恐る手を上げた。
「えっと、私でございます」
「そう。ならば、これからはサマンサ様のレモン水を私の時と同じレシピで作ってあげなさい。わかりましたね?」
「は、はい」
びくびくと震えるメイドに命令してサマンサを見れば青ざめながらも必死になって私のレモン水を飲み干した。
「ふっ。これからはサマンサ様がそのとても甘くて美味しいレモン水を楽しむ番ですわ」
私の中のお母様は有無を言わさぬ口調で艶やかに微笑みながらそうおっしゃったのだった。
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