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3 人の恋路を邪魔する悪女は私?
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当初はアルフィー様に爵位を与える話も否と叫ぶ者がおり変更になった。私がレイラ・ジョージア・ウィンザー公爵となり、アルフィー様はそれを支えるということになったのだ。
否を唱えたのはお兄様の親友の魔物討伐隊騎士団長カーター様だ。先だっての魔物討伐にも同行したカーター様は「戦闘中に怪我を負い崖から落ち死んだものと思われた勇者様は、恐れながら公爵の位を賜るほどの貢献度がないのでは?」と申し立てたのだ。
「それに、他の女性を連れて帰還した裏切り者勇者様に公爵の地位とこの国きっての麗しい姫を与えるなど騎士団員の士気がだださがります!」と、ものすごい圧で力説なさった。
「レイラ、お前は少しだけ間違ったのかもしれない。カーターのような奴と婚約するべきだったのだよ。過ぎたことだが私が止めていればよかった」お兄様は遠いまなざしで昔を振り返るのだった。
「ねぇ、お兄様。お父様は私がまだアルフィー様を好きなことをわかっていらっしゃるから結婚させてくださるのですよね? 日記を・・・・・・私の日記をお読みになったのでしょうか?」
「なんのことだ? 王家の威信を保つ為だ」
お兄様は目を逸らせて涙を浮かべた。
きっと、お父様もお兄様も私の日記をみてしまったのだ。
『私は過去の恋から逃れられない
アルフィー様しか好きになれない
私は他の女性と子供を作った婚約者でもまだ恋い焦がれている
彼と一緒になれないなら崖から潔く身を投げよう』
これが、私の日記の内容だ。
そんな心の弱い私がお父様やお兄様を悲しませ、この結果を招いていた。
けれどもっと愚かなことは、私がまだアルフィー様に記憶が戻ることを期待していることだ。
ウィンザー公爵家の大きな屋敷は豪華で特別にあつらえた家具類は調和がとれて実に美しい。私は侍女を大勢引き連れて屋敷に入る。一番良い部屋を夫婦の寝室にした。けれど、アルフィー様が同じベッドで寝ることはない。隣のソファーをベッドにして私に手も触れようとはしなかった。
「なぜ、こちらのベッドでお眠りにならないのですか?」
私が尋ねるとアルフィー様は悲しそうに尋ねた。
「それは命令ですか?」
私は・・・・・・なんて答えたらいいのかわからない。
悲しい顔のアルフィー様は私の側にいるけれど、それは身体だけだ。心は別の、そう、あの女性のところにある。
「どうぞ、別邸に行ってもいいですわよ」
日が落ちかけた時刻に、やっと私は夫をオーラのところに行かせる。私の言葉に小走りに遠ざかる夫は別邸の庭先で一歳になる子供を夕日に照らされながら抱きかかえ満足気に笑う。傍らにはオーラが涙ぐんで夫の腕に手をかけていた。彼らの目にはきっと美しい夕映えに見える空。
嫉妬と悲しみで狂いそうな私には空一面が血を散らしたように荒んで見えた。
それでも夫を嫌いになれないもどかしさ。記憶がないからいけない。これが単純な心変わりなら諦めも恨みもするが記憶喪失なんて反則だ。
私はそっと彼らの会話を聞こうと陰に隠れて耳を澄ます。そんなことをすれば余計惨めになるだけなのに・・・・・・
「短い時間しか一緒にいられなくてすまない。だが、心はいつも君と息子のアーチーとともにある」
「いいのよ。わたしはたまにでも顔が見られれば充分ですわ。だって一緒にいる時間だけが愛を育てるわけではありませんもの」
オーラの言葉が私の胸をえぐる。
私はここでは性悪女だ。人の恋路を邪魔する悪女ってこんな感じなのかしら・・・・・・
否を唱えたのはお兄様の親友の魔物討伐隊騎士団長カーター様だ。先だっての魔物討伐にも同行したカーター様は「戦闘中に怪我を負い崖から落ち死んだものと思われた勇者様は、恐れながら公爵の位を賜るほどの貢献度がないのでは?」と申し立てたのだ。
「それに、他の女性を連れて帰還した裏切り者勇者様に公爵の地位とこの国きっての麗しい姫を与えるなど騎士団員の士気がだださがります!」と、ものすごい圧で力説なさった。
「レイラ、お前は少しだけ間違ったのかもしれない。カーターのような奴と婚約するべきだったのだよ。過ぎたことだが私が止めていればよかった」お兄様は遠いまなざしで昔を振り返るのだった。
「ねぇ、お兄様。お父様は私がまだアルフィー様を好きなことをわかっていらっしゃるから結婚させてくださるのですよね? 日記を・・・・・・私の日記をお読みになったのでしょうか?」
「なんのことだ? 王家の威信を保つ為だ」
お兄様は目を逸らせて涙を浮かべた。
きっと、お父様もお兄様も私の日記をみてしまったのだ。
『私は過去の恋から逃れられない
アルフィー様しか好きになれない
私は他の女性と子供を作った婚約者でもまだ恋い焦がれている
彼と一緒になれないなら崖から潔く身を投げよう』
これが、私の日記の内容だ。
そんな心の弱い私がお父様やお兄様を悲しませ、この結果を招いていた。
けれどもっと愚かなことは、私がまだアルフィー様に記憶が戻ることを期待していることだ。
ウィンザー公爵家の大きな屋敷は豪華で特別にあつらえた家具類は調和がとれて実に美しい。私は侍女を大勢引き連れて屋敷に入る。一番良い部屋を夫婦の寝室にした。けれど、アルフィー様が同じベッドで寝ることはない。隣のソファーをベッドにして私に手も触れようとはしなかった。
「なぜ、こちらのベッドでお眠りにならないのですか?」
私が尋ねるとアルフィー様は悲しそうに尋ねた。
「それは命令ですか?」
私は・・・・・・なんて答えたらいいのかわからない。
悲しい顔のアルフィー様は私の側にいるけれど、それは身体だけだ。心は別の、そう、あの女性のところにある。
「どうぞ、別邸に行ってもいいですわよ」
日が落ちかけた時刻に、やっと私は夫をオーラのところに行かせる。私の言葉に小走りに遠ざかる夫は別邸の庭先で一歳になる子供を夕日に照らされながら抱きかかえ満足気に笑う。傍らにはオーラが涙ぐんで夫の腕に手をかけていた。彼らの目にはきっと美しい夕映えに見える空。
嫉妬と悲しみで狂いそうな私には空一面が血を散らしたように荒んで見えた。
それでも夫を嫌いになれないもどかしさ。記憶がないからいけない。これが単純な心変わりなら諦めも恨みもするが記憶喪失なんて反則だ。
私はそっと彼らの会話を聞こうと陰に隠れて耳を澄ます。そんなことをすれば余計惨めになるだけなのに・・・・・・
「短い時間しか一緒にいられなくてすまない。だが、心はいつも君と息子のアーチーとともにある」
「いいのよ。わたしはたまにでも顔が見られれば充分ですわ。だって一緒にいる時間だけが愛を育てるわけではありませんもの」
オーラの言葉が私の胸をえぐる。
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