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3 お節介オバタリアン、愛人をてなづける?

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「あら、まぁーー。本邸のそれも公爵夫人の寝室にいきなり入って来るとは驚きましたわ! このピンクの可愛いお嬢さんは礼儀というものを知らないのですか?」
真理は嫌みのつもりではなく、素直な意見を言葉にしていた。

「あぁ、ペクスィモはまだまだ子供のところがあってな……許せ」
イリスィオスが言い訳を始める。

「子供に子供を産ませたら犯罪ですわね。まぁ、いいですわ。それにしても今、何週目なのかしら? 少しそのお腹を触らせていただける? うん、まだまだぺったんこね。妊娠初期とすれば胎動を感じるには早すぎますね。それより吐き気は大丈夫? 食事はできていますか?」
早速、お節介オバタリアン気質が暴走しだす真理であった。

「え? 食事はあまりできていないわ。匂いに敏感になっちゃって……好物も変わっちゃったみたい」
ペクスィモもいきなりの真理の質問に戸惑いながらも素直に答えていく。

「あら、それは大変! グレープフルーツをジュースにしたり、炭酸水を飲んでみなさい。少しは落ち着くわよ。アイスなんかも食べやすくていいわね」

「アイス! 突然の会話への割り込みをお許しください。アイスはございますが、それを食べることができるのは貴族の高貴な方だけですわ。ジュリエット様には食後のアイスはつきますが、愛人の方にはそもそもそのようなものはつけませんので!」
ケビン公爵家の侍女長のアルシナが淡々とそう言うのを聞いて仰天する真理である。

「まぁーー。それは可哀想。出産は女の大仕事ですよ。この時期だけでも甘やかしてあげましょう。私に出すデザートのアイスをこのペクスィモさんに差し上げてください。さぁ、ペクスィモさんは旦那様と離れに行きなさい。旦那様と一緒にお食事してあげてくださいね! 食後にはアイスもつきますよ。冷たくて甘くてとてもおいしいのよ」

「はい! あ、えっと、ありがとうございます、ジュリエット様! 私、その……なんていうか……もっとジュリエット様はお高くとまっている方だって思っていました」

「ふっふっふ。お高くはとまっていませんが礼儀は重んじますよ。だからペクスィモさんにもいろいろ言いますよ。まずは本邸に来るときには私に一言、訪問していいか侍女を通して聞くことを覚えましょうね。わかった?」

「はい、わかりました。でも、私には専属侍女とかいないし、話しかけても侍女の人達はすっと避けてしまうから……」
ペクスィモは戸惑いながらもそう告白する。

「なんだと! 僕の愛人になんて失礼なことをするんだ!」
イリスィオスが声を荒げたところで真理がそれを手で制した。

「侍女達の管理は公爵夫人である私の勤めですわ。ペクスィモさんは旦那様の子供を身ごもっている大事なお方。粗末に扱ってはなりませんよ。ペクスィモさんには専属侍女を一人つけましょうね。誰か立候補してちょうだい」

「誰も愛人の侍女などしたいとは思いませんよ。この国では愛人の産んだ子供は当主夫妻の子供として育てられます。愛人に気に入られてもメリットはひとつもないですからね」
アルシナが苦笑して真理に言えば、真理は「愛人も大変だわねぇ」とまるで他人事のように呟くのであった。

「私の専属侍女は3人だったかしら? 順番にペクスィモさんにつきなさいな。意地悪をしてはダメよ」
その言葉に仰天する侍女達は一斉に真理に尋ねたのだった。
「「「愛人は奥様の敵ですよ?」」」

真理はその言葉に吹き出して大笑いをする。
「敵? 敵は愛人にあらず。妻を裏切る男である。ましてペクスィモさんは妊娠中、心細い思いもしているでしょう。ペクスィモさんは困ったら私を頼っていいのよ?」

優しいその真理の言葉にペクスィモも感極まり泣きべそをかきながら、「お姉様って呼んでもいい?」と、のたまうのであった。その間じゅう、傍らに立っていたイリスィオスには誰も注意を払わない。

もちろん真理はその言葉に頷くと、ペクスィモの頭を撫でて言ったのだった。
「旦那様のお世話をお願いね。貴女にしかできない大切な役目ですからね」

「はい!」

ケビン公爵家の空気がガラリと変わった瞬間だった。まさに侍女達が真理をこのケビン公爵家の当主夫人として尊敬しだした瞬間であった。



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