3 / 7
3 お節介オバタリアン、愛人をてなづける?
しおりを挟む
「あら、まぁーー。本邸のそれも公爵夫人の寝室にいきなり入って来るとは驚きましたわ! このピンクの可愛いお嬢さんは礼儀というものを知らないのですか?」
真理は嫌みのつもりではなく、素直な意見を言葉にしていた。
「あぁ、ペクスィモはまだまだ子供のところがあってな……許せ」
イリスィオスが言い訳を始める。
「子供に子供を産ませたら犯罪ですわね。まぁ、いいですわ。それにしても今、何週目なのかしら? 少しそのお腹を触らせていただける? うん、まだまだぺったんこね。妊娠初期とすれば胎動を感じるには早すぎますね。それより吐き気は大丈夫? 食事はできていますか?」
早速、お節介オバタリアン気質が暴走しだす真理であった。
「え? 食事はあまりできていないわ。匂いに敏感になっちゃって……好物も変わっちゃったみたい」
ペクスィモもいきなりの真理の質問に戸惑いながらも素直に答えていく。
「あら、それは大変! グレープフルーツをジュースにしたり、炭酸水を飲んでみなさい。少しは落ち着くわよ。アイスなんかも食べやすくていいわね」
「アイス! 突然の会話への割り込みをお許しください。アイスはございますが、それを食べることができるのは貴族の高貴な方だけですわ。ジュリエット様には食後のアイスはつきますが、愛人の方にはそもそもそのようなものはつけませんので!」
ケビン公爵家の侍女長のアルシナが淡々とそう言うのを聞いて仰天する真理である。
「まぁーー。それは可哀想。出産は女の大仕事ですよ。この時期だけでも甘やかしてあげましょう。私に出すデザートのアイスをこのペクスィモさんに差し上げてください。さぁ、ペクスィモさんは旦那様と離れに行きなさい。旦那様と一緒にお食事してあげてくださいね! 食後にはアイスもつきますよ。冷たくて甘くてとてもおいしいのよ」
「はい! あ、えっと、ありがとうございます、ジュリエット様! 私、その……なんていうか……もっとジュリエット様はお高くとまっている方だって思っていました」
「ふっふっふ。お高くはとまっていませんが礼儀は重んじますよ。だからペクスィモさんにもいろいろ言いますよ。まずは本邸に来るときには私に一言、訪問していいか侍女を通して聞くことを覚えましょうね。わかった?」
「はい、わかりました。でも、私には専属侍女とかいないし、話しかけても侍女の人達はすっと避けてしまうから……」
ペクスィモは戸惑いながらもそう告白する。
「なんだと! 僕の愛人になんて失礼なことをするんだ!」
イリスィオスが声を荒げたところで真理がそれを手で制した。
「侍女達の管理は公爵夫人である私の勤めですわ。ペクスィモさんは旦那様の子供を身ごもっている大事なお方。粗末に扱ってはなりませんよ。ペクスィモさんには専属侍女を一人つけましょうね。誰か立候補してちょうだい」
「誰も愛人の侍女などしたいとは思いませんよ。この国では愛人の産んだ子供は当主夫妻の子供として育てられます。愛人に気に入られてもメリットはひとつもないですからね」
アルシナが苦笑して真理に言えば、真理は「愛人も大変だわねぇ」とまるで他人事のように呟くのであった。
「私の専属侍女は3人だったかしら? 順番にペクスィモさんにつきなさいな。意地悪をしてはダメよ」
その言葉に仰天する侍女達は一斉に真理に尋ねたのだった。
「「「愛人は奥様の敵ですよ?」」」
真理はその言葉に吹き出して大笑いをする。
「敵? 敵は愛人にあらず。妻を裏切る男である。ましてペクスィモさんは妊娠中、心細い思いもしているでしょう。ペクスィモさんは困ったら私を頼っていいのよ?」
優しいその真理の言葉にペクスィモも感極まり泣きべそをかきながら、「お姉様って呼んでもいい?」と、のたまうのであった。その間じゅう、傍らに立っていたイリスィオスには誰も注意を払わない。
もちろん真理はその言葉に頷くと、ペクスィモの頭を撫でて言ったのだった。
「旦那様のお世話をお願いね。貴女にしかできない大切な役目ですからね」
「はい!」
ケビン公爵家の空気がガラリと変わった瞬間だった。まさに侍女達が真理をこのケビン公爵家の当主夫人として尊敬しだした瞬間であった。
真理は嫌みのつもりではなく、素直な意見を言葉にしていた。
「あぁ、ペクスィモはまだまだ子供のところがあってな……許せ」
イリスィオスが言い訳を始める。
「子供に子供を産ませたら犯罪ですわね。まぁ、いいですわ。それにしても今、何週目なのかしら? 少しそのお腹を触らせていただける? うん、まだまだぺったんこね。妊娠初期とすれば胎動を感じるには早すぎますね。それより吐き気は大丈夫? 食事はできていますか?」
早速、お節介オバタリアン気質が暴走しだす真理であった。
「え? 食事はあまりできていないわ。匂いに敏感になっちゃって……好物も変わっちゃったみたい」
ペクスィモもいきなりの真理の質問に戸惑いながらも素直に答えていく。
「あら、それは大変! グレープフルーツをジュースにしたり、炭酸水を飲んでみなさい。少しは落ち着くわよ。アイスなんかも食べやすくていいわね」
「アイス! 突然の会話への割り込みをお許しください。アイスはございますが、それを食べることができるのは貴族の高貴な方だけですわ。ジュリエット様には食後のアイスはつきますが、愛人の方にはそもそもそのようなものはつけませんので!」
ケビン公爵家の侍女長のアルシナが淡々とそう言うのを聞いて仰天する真理である。
「まぁーー。それは可哀想。出産は女の大仕事ですよ。この時期だけでも甘やかしてあげましょう。私に出すデザートのアイスをこのペクスィモさんに差し上げてください。さぁ、ペクスィモさんは旦那様と離れに行きなさい。旦那様と一緒にお食事してあげてくださいね! 食後にはアイスもつきますよ。冷たくて甘くてとてもおいしいのよ」
「はい! あ、えっと、ありがとうございます、ジュリエット様! 私、その……なんていうか……もっとジュリエット様はお高くとまっている方だって思っていました」
「ふっふっふ。お高くはとまっていませんが礼儀は重んじますよ。だからペクスィモさんにもいろいろ言いますよ。まずは本邸に来るときには私に一言、訪問していいか侍女を通して聞くことを覚えましょうね。わかった?」
「はい、わかりました。でも、私には専属侍女とかいないし、話しかけても侍女の人達はすっと避けてしまうから……」
ペクスィモは戸惑いながらもそう告白する。
「なんだと! 僕の愛人になんて失礼なことをするんだ!」
イリスィオスが声を荒げたところで真理がそれを手で制した。
「侍女達の管理は公爵夫人である私の勤めですわ。ペクスィモさんは旦那様の子供を身ごもっている大事なお方。粗末に扱ってはなりませんよ。ペクスィモさんには専属侍女を一人つけましょうね。誰か立候補してちょうだい」
「誰も愛人の侍女などしたいとは思いませんよ。この国では愛人の産んだ子供は当主夫妻の子供として育てられます。愛人に気に入られてもメリットはひとつもないですからね」
アルシナが苦笑して真理に言えば、真理は「愛人も大変だわねぇ」とまるで他人事のように呟くのであった。
「私の専属侍女は3人だったかしら? 順番にペクスィモさんにつきなさいな。意地悪をしてはダメよ」
その言葉に仰天する侍女達は一斉に真理に尋ねたのだった。
「「「愛人は奥様の敵ですよ?」」」
真理はその言葉に吹き出して大笑いをする。
「敵? 敵は愛人にあらず。妻を裏切る男である。ましてペクスィモさんは妊娠中、心細い思いもしているでしょう。ペクスィモさんは困ったら私を頼っていいのよ?」
優しいその真理の言葉にペクスィモも感極まり泣きべそをかきながら、「お姉様って呼んでもいい?」と、のたまうのであった。その間じゅう、傍らに立っていたイリスィオスには誰も注意を払わない。
もちろん真理はその言葉に頷くと、ペクスィモの頭を撫でて言ったのだった。
「旦那様のお世話をお願いね。貴女にしかできない大切な役目ですからね」
「はい!」
ケビン公爵家の空気がガラリと変わった瞬間だった。まさに侍女達が真理をこのケビン公爵家の当主夫人として尊敬しだした瞬間であった。
89
お気に入りに追加
1,956
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
選択を間違えた男
基本二度寝
恋愛
出席した夜会で、かつての婚約者をみつけた。
向こうは隣の男に話しかけていて此方に気づいてはいない。
「ほら、あそこ。子爵令嬢のあの方、伯爵家の子息との婚約破棄されたっていう」
「あら?でも彼女、今侯爵家の次男と一緒にいらっしゃるけど」
「新たな縁を結ばれたようよ」
後ろにいるご婦人達はひそひそと元婚約者の話をしていた。
話に夢中で、その伯爵家の子息が側にいる事には気づいていないらしい。
「そうなのね。だからかしら」
「ええ、だからじゃないかしら」
「「とてもお美しくなられて」」
そうなのだ。彼女は綺麗になった。
顔の造作が変わったわけではない。
表情が変わったのだ。
自分と婚約していた時とは全く違う。
社交辞令ではない笑みを、惜しみなく連れの男に向けている。
「新しい婚約者の方に愛されているのね」
「女は愛されたら綺麗になると言いますしね?」
「あら、それは実体験を含めた遠回しの惚気なのかしら」
婦人たちの興味は別の話題へ移った。
まだそこに留まっているのは自身だけ。
ー愛されたら…。
自分も彼女を愛していたら結末は違っていたのだろうか。
元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
夫の浮気相手と一緒に暮らすなんて無理です!
火野村志紀
恋愛
トゥーラ侯爵家の当主と結婚して幸せな夫婦生活を送っていたリリティーヌ。
しかしそんな日々も夫のエリオットの浮気によって終わりを告げる。
浮気相手は平民のレナ。
エリオットはレナとは半年前から関係を持っていたらしく、それを知ったリリティーヌは即座に離婚を決める。
エリオットはリリティーヌを本気で愛していると言って拒否する。その真剣な表情に、心が揺らぎそうになるリリティーヌ。
ところが次の瞬間、エリオットから衝撃の発言が。
「レナをこの屋敷に住まわせたいと思うんだ。いいよね……?」
ば、馬鹿野郎!!
妹を叩いた?事実ですがなにか?
基本二度寝
恋愛
王太子エリシオンにはクアンナという婚約者がいた。
冷たい瞳をした婚約者には愛らしい妹マゼンダがいる。
婚約者に向けるべき愛情をマゼンダに向けていた。
そんな愛らしいマゼンダが、物陰でひっそり泣いていた。
頬を押えて。
誰が!一体何が!?
口を閉ざしつづけたマゼンダが、打った相手をようやく口にして、エリシオンの怒りが頂点に達した。
あの女…!
※えろなし
※恋愛カテゴリーなのに恋愛させてないなと思って追加21/08/09
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる