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それぞれの末路
18 最終話 子供達の父親は確保したし、多分愛していると思うわ!(アメリア視点)
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「お母様、ヴィセンテさんは最近来ないわね? どうして?」
アネットは悲しそうな顔をして私に尋ねた。
「それは・・・・・・あの方は副医院長兼医院長代理で忙しいのよ。いろいろな事情が大人にはあるのよ」
「そう・・・・・・寂しいね・・・・・・大人って不便だなぁ」
カーティスは訳知り顔で私の顔を覗きこんだ。
ーー仕方がないのよ。これ以上彼に子供達が懐くのは良くないし、私だって会いたいけれど我慢しているのだから。
ーーあら? 会いたいだなんて・・・・・・はしたない・・・・・・あの人には想い人がいるっていうのに・・・・・・
ある日、王妃殿下からお茶会のお誘いを受けた。子供達も連れてくるようにと言われ、そこに行くと他の招待客は一人もいない。おまけに国王陛下もそこにはいらっしゃって、にこにこと笑っていた。
「今日はね、アメリアの来週の誕生日に向けて前祝いをあげるわ !」
悪戯っぽく笑う王妃殿下に、私は小首を傾げた。
「貴族と平民は結婚できない。それは高貴な血筋に平民の血が混ざり、子孫の血を汚していくからだと言われている。いやはや時代錯誤な話しだが、すぐに法改正はできまい。けれど、アメリアは残念だが子供ができない。ならば、平民と結婚して幸せになってもいいと思う」
私はそうおっしゃる国王陛下の言葉に戸惑った。
「だったら、ヴィセンテさんは僕達のパパになれるってこと?」
「うわぁーー、なんて素敵なの! 国王陛下、王妃殿下、大好きです!」
アネットは、あろうことか王妃殿下に抱きついた。
女の子が欲しかった王妃殿下は、それ以来アネットがお気に入りで、
「王子が産まれたら絶対アネットと結婚させるわ!」
と、おっしゃったのはまた別な話。
「貴女は誰とでも自由に結婚できるわ。跡継ぎもこうして二人いるし、そろそろ自分の幸せも考えなさい」
王妃殿下の言葉に感謝してお礼を申しあげた。
だからといっていきなりヴィセンテになんて切り出したらいいのかわからないし、他の女性を思っている男性なんてごめんだわ。ヴィセンテの好きな女性が私だったら良かったのに。子供達の父親には最適な相手なのに・・・・・・
それから3日後にヴィセンテがいきなり訪ねてきて、結婚すると言う。私は庭園の四阿で寛いで、子供達と午後のお茶を楽しんでいた。
こんなタイミングで?・・・・・・私は腹ただしくて思わず声を荒げた。
「貴男は結婚しないって言ったじゃない! 身分違いの恋だから無理だって! この嘘つきさんめっ!」
なぜ私はこんな子供っぽいことを言って、おまけに涙まで流しているの?
「あぁ、怒らないでくださいよ。今、ちゃんとプロポーズしますから。私は ずっとアメリア様を愛していましたよ。国王陛下から許可が出た、と子供達が教えてくれました。この手をとってくださいますか?」
ヴィセンテが私に差し出した手を、私は素直にとることができない。子供達がにこにこと見ているし、使用人達の遠くから見る期待に満ちた視線も感じる。
うつむいていると、アネットが私の手をとってヴィセンテの手の上にそっと置いた。
「あのね、お母様はきっとツンデレさんなの。だから、二人っきりの時は優しいと思うわ」
「そうだね、二人っきりの時に思いっきり甘えてもらおう」
いきなり私を抱き上げた彼に子供達は、ニヤリと笑い侍女達のほうに駆けていった。
「お母様、二人っきりにしてあげる!」
そう言いながら侍女達にも「お母様達のことを見てはダメよ」と言う様子が可愛らしけれど恥ずかしいったら。
私が真っ赤な顔で彼を見つめると、少し低めな艶のある声で「愛してるよ」ともう一度耳元でささやかれたわ。
背筋がぞくっとして全身に甘い感覚がはしる。
「私も多分、愛してる」
そんな色気のない私の返事に、彼はクスクスと笑った。
「多分だって? じゃぁ、これからいっぱい好きになってもらえる楽しみがあるってことかい?素敵だね」
私の頬にそっと口づけた彼は大事そうに私の髪を撫でた。
その瞳を見れば、私への愛が溢れているのがわかるわ。大好きな人といられて、これ以上ないっていう時の気持ちが瞳の奥で揺れた。これなら、私は今度こそ幸せになれそうじゃない?
私は彼に大胆に抱きついて、唇にそっとキスをした。
「さぁ、子供達! 出ていらっしゃい! あなたたちのお父様を紹介するわ!」
私は屋敷のほうに向かって、朗らかに笑いながら叫んだのだった。
完
アネットは悲しそうな顔をして私に尋ねた。
「それは・・・・・・あの方は副医院長兼医院長代理で忙しいのよ。いろいろな事情が大人にはあるのよ」
「そう・・・・・・寂しいね・・・・・・大人って不便だなぁ」
カーティスは訳知り顔で私の顔を覗きこんだ。
ーー仕方がないのよ。これ以上彼に子供達が懐くのは良くないし、私だって会いたいけれど我慢しているのだから。
ーーあら? 会いたいだなんて・・・・・・はしたない・・・・・・あの人には想い人がいるっていうのに・・・・・・
ある日、王妃殿下からお茶会のお誘いを受けた。子供達も連れてくるようにと言われ、そこに行くと他の招待客は一人もいない。おまけに国王陛下もそこにはいらっしゃって、にこにこと笑っていた。
「今日はね、アメリアの来週の誕生日に向けて前祝いをあげるわ !」
悪戯っぽく笑う王妃殿下に、私は小首を傾げた。
「貴族と平民は結婚できない。それは高貴な血筋に平民の血が混ざり、子孫の血を汚していくからだと言われている。いやはや時代錯誤な話しだが、すぐに法改正はできまい。けれど、アメリアは残念だが子供ができない。ならば、平民と結婚して幸せになってもいいと思う」
私はそうおっしゃる国王陛下の言葉に戸惑った。
「だったら、ヴィセンテさんは僕達のパパになれるってこと?」
「うわぁーー、なんて素敵なの! 国王陛下、王妃殿下、大好きです!」
アネットは、あろうことか王妃殿下に抱きついた。
女の子が欲しかった王妃殿下は、それ以来アネットがお気に入りで、
「王子が産まれたら絶対アネットと結婚させるわ!」
と、おっしゃったのはまた別な話。
「貴女は誰とでも自由に結婚できるわ。跡継ぎもこうして二人いるし、そろそろ自分の幸せも考えなさい」
王妃殿下の言葉に感謝してお礼を申しあげた。
だからといっていきなりヴィセンテになんて切り出したらいいのかわからないし、他の女性を思っている男性なんてごめんだわ。ヴィセンテの好きな女性が私だったら良かったのに。子供達の父親には最適な相手なのに・・・・・・
それから3日後にヴィセンテがいきなり訪ねてきて、結婚すると言う。私は庭園の四阿で寛いで、子供達と午後のお茶を楽しんでいた。
こんなタイミングで?・・・・・・私は腹ただしくて思わず声を荒げた。
「貴男は結婚しないって言ったじゃない! 身分違いの恋だから無理だって! この嘘つきさんめっ!」
なぜ私はこんな子供っぽいことを言って、おまけに涙まで流しているの?
「あぁ、怒らないでくださいよ。今、ちゃんとプロポーズしますから。私は ずっとアメリア様を愛していましたよ。国王陛下から許可が出た、と子供達が教えてくれました。この手をとってくださいますか?」
ヴィセンテが私に差し出した手を、私は素直にとることができない。子供達がにこにこと見ているし、使用人達の遠くから見る期待に満ちた視線も感じる。
うつむいていると、アネットが私の手をとってヴィセンテの手の上にそっと置いた。
「あのね、お母様はきっとツンデレさんなの。だから、二人っきりの時は優しいと思うわ」
「そうだね、二人っきりの時に思いっきり甘えてもらおう」
いきなり私を抱き上げた彼に子供達は、ニヤリと笑い侍女達のほうに駆けていった。
「お母様、二人っきりにしてあげる!」
そう言いながら侍女達にも「お母様達のことを見てはダメよ」と言う様子が可愛らしけれど恥ずかしいったら。
私が真っ赤な顔で彼を見つめると、少し低めな艶のある声で「愛してるよ」ともう一度耳元でささやかれたわ。
背筋がぞくっとして全身に甘い感覚がはしる。
「私も多分、愛してる」
そんな色気のない私の返事に、彼はクスクスと笑った。
「多分だって? じゃぁ、これからいっぱい好きになってもらえる楽しみがあるってことかい?素敵だね」
私の頬にそっと口づけた彼は大事そうに私の髪を撫でた。
その瞳を見れば、私への愛が溢れているのがわかるわ。大好きな人といられて、これ以上ないっていう時の気持ちが瞳の奥で揺れた。これなら、私は今度こそ幸せになれそうじゃない?
私は彼に大胆に抱きついて、唇にそっとキスをした。
「さぁ、子供達! 出ていらっしゃい! あなたたちのお父様を紹介するわ!」
私は屋敷のほうに向かって、朗らかに笑いながら叫んだのだった。
完
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