22 / 22
ドリアン子爵夫妻の場合
断罪5 オーロラの場合
しおりを挟む
断罪5
私は、カトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷で下女として働いている。カトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷では、全ての作業が時間どおりに進む。
朝は4時に起きて、庭師と一緒に庭園の手入れをする。草むしりや落ち葉を掃き、それが終わってから朝食になる。朝食の後は、屋敷の掃除で、それが終わればコックの手伝いやら、いろいろな雑用をこなす。
あっという間に、一日が終わり、また同じことが繰り返される。その日々の作業のなかで、カトレーネ・トマス前々公爵夫人やマリアンヌ様が声をかけてくださる。それが、子供のように嬉しかった。
幼い頃から、どんなに頑張っても、両親は自分達のことしか興味がなくて、褒められたことは一回もなかった。でも、ここでは、カトレーネ・トマス前々公爵夫人がいつも褒めてくださった。
「おぉ、よく綺麗に草を除去できましたね!」
「あら、廊下がピカピカだわ。隅々までお掃除したのね。とても気持ちいいわ」
「まぁーー、このお野菜はオーロラが切ったのですか? とても、上手に切れていますよ」
なんだろう、たまらなく嬉しかった。もっと、褒めていただきたくて、喜んでいただきたくて、頑張った。
2年もすると、下女から侍女に昇格した。カトレーネ・トマス前々公爵夫人のもとで、侍女としての教育を受けていくなかで、働くことの喜びを覚えた。
私は、カトレーネ・トマス前々公爵夫人が大好きになり、ずっとこの屋敷で働きたいと思うようになった。
夫とは申し訳ないけれど離婚をさせてもらった。いい人だけれど、好きでもない男性と長い人生を歩むのは正直しんどいからだ。侍女同士で仲良しができると、休みの日には一緒に出かけたり、たわいもない話で盛り上がった。
ある日のこと、外出先で素晴らしくハンサムな男性に声をかけられた。
「一緒にお茶でも、いかがですか?」
その男性は、昔の私が大好きな見栄えの良い体つきに、甘い顔立ちをしていた。
「けっこうです! 私は急いでいますから!」
私は、なんの迷いもなくそう答えていた。もう、外見だけでは男性を好きにはならない・・・・・・
私には、信頼してくれるカトレーネ・トマス前々公爵夫人と、励まし合って働く同僚達がいるのだから・・・・・・
そう、もう、行きずりの男性に癒やしなど求める必要なんてなくなった。居場所があるって、こういうことだわ。
生活が充実していると、人間ってくだらないことはしなくなるんだな・・・・・・
私は、外出先で用事を済ますとカトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷に嬉々として帰る。そこが、私の戻る家だから・・・・・
それから五年後、お父様がカトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷に来て、私に土下座をして謝り、たまに会ってお茶をするようになる仲良し父娘になるとは、この時は思いもしないのだった。
完
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
いったん、完結とさせていただきます。
運営に問い合わせたところ、
『作品がそれぞれ独立した内容のものであれば、
続編を別作品として投稿いただいて問題ございません。』
との回答をいただきましたので、事件ごとに投稿させていただきます。
私は、カトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷で下女として働いている。カトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷では、全ての作業が時間どおりに進む。
朝は4時に起きて、庭師と一緒に庭園の手入れをする。草むしりや落ち葉を掃き、それが終わってから朝食になる。朝食の後は、屋敷の掃除で、それが終わればコックの手伝いやら、いろいろな雑用をこなす。
あっという間に、一日が終わり、また同じことが繰り返される。その日々の作業のなかで、カトレーネ・トマス前々公爵夫人やマリアンヌ様が声をかけてくださる。それが、子供のように嬉しかった。
幼い頃から、どんなに頑張っても、両親は自分達のことしか興味がなくて、褒められたことは一回もなかった。でも、ここでは、カトレーネ・トマス前々公爵夫人がいつも褒めてくださった。
「おぉ、よく綺麗に草を除去できましたね!」
「あら、廊下がピカピカだわ。隅々までお掃除したのね。とても気持ちいいわ」
「まぁーー、このお野菜はオーロラが切ったのですか? とても、上手に切れていますよ」
なんだろう、たまらなく嬉しかった。もっと、褒めていただきたくて、喜んでいただきたくて、頑張った。
2年もすると、下女から侍女に昇格した。カトレーネ・トマス前々公爵夫人のもとで、侍女としての教育を受けていくなかで、働くことの喜びを覚えた。
私は、カトレーネ・トマス前々公爵夫人が大好きになり、ずっとこの屋敷で働きたいと思うようになった。
夫とは申し訳ないけれど離婚をさせてもらった。いい人だけれど、好きでもない男性と長い人生を歩むのは正直しんどいからだ。侍女同士で仲良しができると、休みの日には一緒に出かけたり、たわいもない話で盛り上がった。
ある日のこと、外出先で素晴らしくハンサムな男性に声をかけられた。
「一緒にお茶でも、いかがですか?」
その男性は、昔の私が大好きな見栄えの良い体つきに、甘い顔立ちをしていた。
「けっこうです! 私は急いでいますから!」
私は、なんの迷いもなくそう答えていた。もう、外見だけでは男性を好きにはならない・・・・・・
私には、信頼してくれるカトレーネ・トマス前々公爵夫人と、励まし合って働く同僚達がいるのだから・・・・・・
そう、もう、行きずりの男性に癒やしなど求める必要なんてなくなった。居場所があるって、こういうことだわ。
生活が充実していると、人間ってくだらないことはしなくなるんだな・・・・・・
私は、外出先で用事を済ますとカトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷に嬉々として帰る。そこが、私の戻る家だから・・・・・
それから五年後、お父様がカトレーネ・トマス前々公爵夫人の屋敷に来て、私に土下座をして謝り、たまに会ってお茶をするようになる仲良し父娘になるとは、この時は思いもしないのだった。
完
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
いったん、完結とさせていただきます。
運営に問い合わせたところ、
『作品がそれぞれ独立した内容のものであれば、
続編を別作品として投稿いただいて問題ございません。』
との回答をいただきましたので、事件ごとに投稿させていただきます。
2
お気に入りに追加
2,024
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(72件)
あなたにおすすめの小説
(完)契約結婚から始まる初恋
青空一夏
恋愛
よくあるタイプのお話です。
ヒロインはカイリン・ブランストーン男爵令嬢。彼女は姉とは差別されて育てられていた。姉のメーガンは溺愛されて、カイリンはメイドのような仕事までさせられており、同じ姉妹でありながら全く愛されていなかった。
ブランストーン男爵家はメーガンや母モナの散財で借金だらけ。父親のバリントンまで高級ワインを買いあさる趣味があった。その借金の為に売られるように結婚をさせられた相手は、女嫌いで有名な男性だった。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。異世界ですが現代社会的な文明器機が出てくる場合があるかもしれません。
※ショートショートの予定ですが、変更する場合もあります。
(完結)可愛いだけの妹がすべてを奪っていく時、最期の雨が降る(全5話)
青空一夏
恋愛
可愛いだけの妹が、全てを奪っていく時、私はその全てを余すところなく奪わせた。
妹よ・・・貴女は知らない・・・最期の雨が貴女に降ることを・・・
暗い、シリアスなお話です。ざまぁありですが、ヒロインがするわけではありません。残酷と感じるかどうかは人によるので、わかりませんが、残酷描写シーンはありません。最期はハッピーエンドで、ほのぼのと終わります。
全5話
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
【完結】導く者に祝福を、照らす者には口づけを 〜見捨てられた伯爵夫人は高利貸しの愛で再び輝く〜
碓氷シモン
恋愛
王国でその名を知らぬ者はいないと評される大商人、ローレンス・フィッツジェラルドには裏の顔があった。
平民ながら宮廷への出入りを許されている彼は国家規模のプロジェクトに参加する一方で、平民、貴族問わず法外な利息で金を貸し付け、債務者を破滅に追い込む悪徳高利貸しだったのだ。
ある日ローレンスは一人の伯爵夫人のもとを訪ねる。リリアーヌ・オルフェウスと名乗る美しい黒髪と灰緑色の瞳を持つその女性は、ローレンスから金貨300枚もの借金をしていた。だが社交界でも宮廷でもその姿を見たことはおろか、名前すら耳にしたことがないローレンスは彼女の借金に違和感を抱く。しかも伯爵夫人でありながら働いて借金を返すと言い、使用人のいなくなった屋敷ですべての家事をこなしている彼女に、ローレンスは思いがけない提案をする。
ーーー家事が得意だと言うのなら、働き口を紹介しよう。俺の身の回りの世話をしてくれ。その給金で借金を返せばいいーーー。
底知れぬ孤独を抱えた非情な高利貸しと、夫とその愛人から貶まれ、全てを失った伯爵夫人。
絡み合う運命の糸に導かれた二人はゆっくりと密やかに心を通わせていくのだが……。
※小説家になろう様、エブリスタ様でも同作品を連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
正式シリーズ化、おめでとうございます!
カトレーネ様のお話はダメ人間達がそれぞれの
罪とどう向かい合うのか、その結果どうなるか。
そういうのがハッキリ出ているので好きです。
時々入って来る小ネタも好みですし。
今後もカトレーネ様の活躍を楽しみにしています!
お読みいただきありがとうございます(○^∇^)_🍵
うわぁい❣️嬉しいです(ノ*>∀<)ノ
アリガトウゴザイマス ───(人´∀`*´∀`人)───♪
コメントをお寄せくださって感謝💐😆です。
お読みいただきありがとうございます(○^∇^)_🍵
はい、水戸黄門みたい?ですよねぇー😆
☆:*:・ァリガ(^ω^人)㌧㌧㌧・:*゜☆ございますーー
コメントをお寄せくださって感謝💐😆です。
お読みいただきありがとうございます(○^∇^)_🍵
終わらないですーヽ(´o`;
事件ごとに分けた方が、書くテンションが持続するので
運営の許可もとったのでーー😆💕
これからもよろしくお願いします🙏🎶
コメントをお寄せくださって感謝💐😆です。