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ドリアン子爵夫妻の場合

すごくわかりやすいなぁ(オリバー視点)トレーナー 

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このオーロラ・ドリアン子爵夫人は、とてもわかりやすい。

じっと、私の顔を熱っぽい眼差しで見てきて、いかにも誘って欲しそうな表情を浮かべる。

私は、平民だし、この貴族用フィットネスクラブのトレーナーの給料は、それほど高くない。

パトロンになってくれる女でも見つけて、お金を貢いでくれないかなとちょうど思っていた時期だった。

一番、最初に目を付けたのは、公爵家の奥様だった。確か、名前はマリアンヌ・トマス公爵夫人だ。

すごい金持ちでスタイルも良く美人だった。何度か、モーションをかけたが、毛虫でも見るような目つきで睨まれた。

そのうち、トマス公爵もたまに見かけるようになり、なぜマリアンヌが私に見向きもしないのか、納得した。

すごい美貌に筋肉質の身体の夫がいれば、浮気なんてしようとは思わないよな。

トマス公爵の弟という騎士団長とその奥方も来るが、やはり美男美女で、やたら仲が良い。これだと、全く入り込む隙間はない。

伯爵夫人も何人かいたが、あまりに不細工で、こちらの食指が動かなかった。

やはり、オーロラ・ドリアン子爵夫人あたりで妥当な線なのだろうな。オーロラは多分、私より少し年上だろう。

オーロラ・ドリアン子爵夫人は、なまじ、綺麗だから、自分が無条件に愛されると思い込んでいた。バカだと思う。

そういう女が一番、ちょろいんだ。愛されているはず、愛される価値がある、と思い込んでいる女ってどんな酷いことをされても、それが愛だと思い込む。

プライドもあるんだろうなぁーー。自分が利用されてるなんて気がつきたくないんだな。これは、今まで、下手にモテてきた女の変な思い上がりさ。

「オーロラ様、もし良かったら、食事でも一緒にしませんか?」

私は、わざと少しどもりながら誘いかけた。輝くような笑顔で頷くので、笑ってしまう。



「オーロラ様は私が好きでしょう?」

馬車のなかで、私は、オーロラ・ドリアン子爵夫人に話しかけた。

「え? 面白いジョークですね?」

オーロラ・ドリアン子爵夫人は、目を逸らせて冗談で、すまそうとした。

ほぉ、少しは、淑女の嗜みがあるようだ。

「絶対、貴女は私が好きだと思う。私は、貴女が好きだよ」

手を握ってそう言うと、オーロラ様は頬を染めた。

「ねぇ、私達は相思相愛だよね? 愛おしいオーロラ様? 認めて? 私を好きでしょう?」

オーロラ様は、私の手をギュッと握り返した。

ふん、やっぱり、ちょろいな・・・・・・


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


初めての行為の時の乱れようは、呆れるぐらいだった。

「私、夫が好きじゃないから、こういうことが嫌いだった。でも、今は最高だわ! あぁ、やっぱり、綺麗な身体って素敵。この胸板とお腹の筋肉がたまらないわ」

当たり前だろ! あんたみたいな、外見に拘るバカ女に貢がせるために鍛えているんだ。

「うん、ありがとう! 実は、今度、会社を立ち上げたくてね、お金を投資してくれないかな? もちろん、利益があがったら倍にして返すから・・・・・・・・」

私は、早速、お金の話を持ち出すのだった。
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