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おまけその2 ナタリーの末路(ナタリー視点)
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家庭は、確かに幸せだったけれど、毎日の生活に息抜きがほしかった。
夫は、すごくいい人で真面目で、子育ても積極的に手伝ってくれた。だけれど、なにか、こう日常を忘れるスパイスが欲しかった。
隣人のライアンは、とても見栄えが良かった。夫は背も低いし、お腹も少し出てきて、髪も薄くなってきたから、ライアンと並ぶとみすぼらしい・・・・・・美男美女の隣人が疎ましかったわ。
でも、レティシアに子供ができると、おもしろいぐらいに劣化していった。ライアンは見た目は最高だけれど、夫としては最低なようだった。
私にはいい夫がいるけれど、この隣人のライアンをちょっと借りてもいいんじゃないかしら?
私は、よく集合住宅の廊下ですれ違った、美しいライアンに声をかけた。
「今日も、寒いですねぇーー。こうも、寒いと暖まる飲み物と、温かいぬくもりがほしくなりますよねぇ?」
私は、ちょっと意味深に微笑んでみせた。ライアンは、すぐに、にっこりと笑みをかえしてきて、私を食事に誘った。
急速に仲良くなれたのは、ライアンが軽い男だからだ。けれど、私は、ライアンの中身なんてどうでもいい。中身がいい男はすでに夫にしているのだから。
足りないものを補いたいのよ。ないものは、他から借りて自分の欲望を満たすのは賢いやり方だと思う。
ばれなければ、していないのと同じだわ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
ところが、ライアンとの情事が公になった。
離婚になって、子供は二人いるが、夫が引き取ると言い出した。
「もちろん異論はないよな? ナタリーが引き取っても、きっと男を連れ込んだり、子供をほったらかして遊びに行きそうで怖いからね。子供の教育にも良くない」
「普通は母親が引き取るものでしょう?」
「まぁね、普通ならね? でも、君は普通じゃないだろ? 人妻で家庭も幸せだったのに、浮気をしていたのだから」
私は離婚されて、子供にも、二度と会うことができなかった。家を追い出されたうえに、慰謝料も請求されたから、住み込みの雑用女として、貴族のお屋敷で働いた。
少しでも、へまをすると、厳しく叱られて、同僚にもうまく馴染めない。もう、辞めたいと思っていた頃にちょっと、イケメンの馬丁に声をかけられて、私はその男と住むことにした。
「仕事が辛ければ辞めなよ。もっと楽に稼げるところで働けば良いよ」
馬丁が私を連れてきた場所は場末の飲み屋だ。
「はい、これを頭につけて、コスチュームはそっちにあるよ」
私は、渡された衣装を着た。これって・・・・・・ウサギの耳をつけたバニーガールだ。
「その格好で、酒を運んだり、ついだりすればいいだけだよ。大丈夫、ナタリーならできるよ」
馬丁の彼は、にっこりして去って行った。え?ちょっと、待ってよ、私も帰るわ。こんなところにはいられない。
帰ろうとするとキツネ目の人相の悪い男が私の腕を掴んだ。
「逃げてもらっちゃこまるなぁ。もう、三ヶ月分のお給料は、さっきの旦那に渡してあるんだから」
私は、前の夫を思い出して、あの生活に帰りたかった。今になってみると、あの家庭がとても幸せだったことがわかる。なんの心配もなく、笑っていられたあの日々を、私は自分から棄てたんだ。愛でもない、恋でも無い、ただのスパイスの為に・・・・・・
神様・・・・・・お願い、時間を戻して・・・・・・二度と、あんなバカなことはしないから・・・・・・
どんなに願っても、時間はもちろん戻らない。
私は、今日も、酔っ払いに身体をベタベタ触られて、酒臭い息をかけられて、飲みたくもないお酒を飲みつづける・・・・・そして、自宅に帰れば今度は馬丁が酔っ払って私を殴りつけて言うのだった。
「稼ぎが少ないなぁーー! あんな上品な店じゃぁダメだな」
夫は、すごくいい人で真面目で、子育ても積極的に手伝ってくれた。だけれど、なにか、こう日常を忘れるスパイスが欲しかった。
隣人のライアンは、とても見栄えが良かった。夫は背も低いし、お腹も少し出てきて、髪も薄くなってきたから、ライアンと並ぶとみすぼらしい・・・・・・美男美女の隣人が疎ましかったわ。
でも、レティシアに子供ができると、おもしろいぐらいに劣化していった。ライアンは見た目は最高だけれど、夫としては最低なようだった。
私にはいい夫がいるけれど、この隣人のライアンをちょっと借りてもいいんじゃないかしら?
私は、よく集合住宅の廊下ですれ違った、美しいライアンに声をかけた。
「今日も、寒いですねぇーー。こうも、寒いと暖まる飲み物と、温かいぬくもりがほしくなりますよねぇ?」
私は、ちょっと意味深に微笑んでみせた。ライアンは、すぐに、にっこりと笑みをかえしてきて、私を食事に誘った。
急速に仲良くなれたのは、ライアンが軽い男だからだ。けれど、私は、ライアンの中身なんてどうでもいい。中身がいい男はすでに夫にしているのだから。
足りないものを補いたいのよ。ないものは、他から借りて自分の欲望を満たすのは賢いやり方だと思う。
ばれなければ、していないのと同じだわ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
ところが、ライアンとの情事が公になった。
離婚になって、子供は二人いるが、夫が引き取ると言い出した。
「もちろん異論はないよな? ナタリーが引き取っても、きっと男を連れ込んだり、子供をほったらかして遊びに行きそうで怖いからね。子供の教育にも良くない」
「普通は母親が引き取るものでしょう?」
「まぁね、普通ならね? でも、君は普通じゃないだろ? 人妻で家庭も幸せだったのに、浮気をしていたのだから」
私は離婚されて、子供にも、二度と会うことができなかった。家を追い出されたうえに、慰謝料も請求されたから、住み込みの雑用女として、貴族のお屋敷で働いた。
少しでも、へまをすると、厳しく叱られて、同僚にもうまく馴染めない。もう、辞めたいと思っていた頃にちょっと、イケメンの馬丁に声をかけられて、私はその男と住むことにした。
「仕事が辛ければ辞めなよ。もっと楽に稼げるところで働けば良いよ」
馬丁が私を連れてきた場所は場末の飲み屋だ。
「はい、これを頭につけて、コスチュームはそっちにあるよ」
私は、渡された衣装を着た。これって・・・・・・ウサギの耳をつけたバニーガールだ。
「その格好で、酒を運んだり、ついだりすればいいだけだよ。大丈夫、ナタリーならできるよ」
馬丁の彼は、にっこりして去って行った。え?ちょっと、待ってよ、私も帰るわ。こんなところにはいられない。
帰ろうとするとキツネ目の人相の悪い男が私の腕を掴んだ。
「逃げてもらっちゃこまるなぁ。もう、三ヶ月分のお給料は、さっきの旦那に渡してあるんだから」
私は、前の夫を思い出して、あの生活に帰りたかった。今になってみると、あの家庭がとても幸せだったことがわかる。なんの心配もなく、笑っていられたあの日々を、私は自分から棄てたんだ。愛でもない、恋でも無い、ただのスパイスの為に・・・・・・
神様・・・・・・お願い、時間を戻して・・・・・・二度と、あんなバカなことはしないから・・・・・・
どんなに願っても、時間はもちろん戻らない。
私は、今日も、酔っ払いに身体をベタベタ触られて、酒臭い息をかけられて、飲みたくもないお酒を飲みつづける・・・・・そして、自宅に帰れば今度は馬丁が酔っ払って私を殴りつけて言うのだった。
「稼ぎが少ないなぁーー! あんな上品な店じゃぁダメだな」
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