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6 こんなことだったとは(レティシア視点)

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私は、カトレーネ・トマス前公爵夫人の屋敷で、一ヶ月の間、働かせていただいた。
マリーは、この屋敷の侍女の方々が世話をしてくださった。

この屋敷には、カトレーネ・トマス前公爵夫人しか住んでいらっしゃらない。隣の屋敷には、公爵夫妻が住んでいらっしゃったけれど、私がお会いすることはなかった。

カトレーネ・トマス前公爵夫人は、ほとんどの時間を隣のお屋敷で過ごしていらっしゃった。
それが、かえって私にはありがたかった。あのような高貴な方が、ずっと側にいたら息をすることも忘れそうなほど緊張してしまうからだ。

それでも、朝と夜には、話しかけてくださって、優しく微笑んでくださるのだった。

*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


10日ほど過ぎた頃、カトレーネ・トマス前公爵夫人は私を居間に呼び、大きな画面にナタリーを映し出した。

とても、広い贅沢な部屋は、このカトレーネ・トマス前公爵夫人のお屋敷の居間のように洗練されていた。

「この女性を知っていますか?」

カトレーネ・トマス前公爵夫人が、私に紅茶を差し出しながらお聞きになった。

「えぇ、隣人で、とても優しい女性ですけれど・・・・・・え?・・・・・・なんで、ライアンがいるのでしょうか?」

私はその画面を食い入るように見つめた。


「すっごいわぁーー。こんな立派なお部屋は、初めてみるわぁーー! なんて贅沢なお部屋でしょう。見てよ? このテーブルは、あの有名な家具職人が作ったものじゃない? ここにネームが書いてある、ほら? これひとつで夫のお給料の5ヶ月分ね!」

ナタリーは、テーブルの裏の刻印を見ながら驚嘆していた。

「あぁ、ここは、多分トマス公爵家の別荘か、王族のどなたかの別荘だと思うよ。クリストファー様っていう騎士団長様がいてさ、ものすごいイケメンなのだが、あぁ、もちろんこの私には劣るけれど、その方に見込まれて屋敷の監視をしているんだ。すごい大変な仕事なんだ。ここから、あの屋敷を24時間、見張るんだ」

「へぇーー。探偵みたいなのねぇ? あっちのお屋敷にも行ってみたいわ。あぁ、私、今日はここに泊まっていいかしら? 夫には、友人の家に遊びに行って、もしかしたら泊まるからって言ってきたわ」

「もちろん、いいさ。旦那は、なんて答えたんだい?」

「いつも、子育てしていて大変だろうから、ゆっくりしておいでって。今日も明日も、有給を取って、子供達をみてくれているわ。うふふ、いい旦那様よねぇ?」

「あぁ、そうだな・・・・・・良い旦那だけれど、大間抜けだな!」

「あっははは」   「うふふふ」

二人は、笑いながら抱き合ったのだった。
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