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5 レティシアがいないのは嬉しい(ライアン視点)
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親戚の家の手伝いがあると、家を出て行ったレティシアに嬉しい気持ちが隠せない。子供の夜泣きには、うんざりだった。部屋の中は、常に荒れていたし、オムツはリビングに干しっぱなしで、オモチャは散乱していた。
仕事もしていないくせに、なぜ掃除もできないんだ? レティシアが、こんなに無能だなんて思わなかった。料理も下手だし、子供を産んでからの劣化ときたら同一人物とは思えない。
赤子の世話しかしていないくせに、家事もろくにできず、女であることも忘れ、化粧もしないとは! しかも、私に、他の夫達のようにマリーの面倒を見ろという。
冗談はよせ。私は、子供が大嫌いなんだ。うるさく泣きわめくし、部屋は汚すし、うんざりだ。私が稼いだお金も家族に盗られるのが納得いかない。
なぜ、レティシアは働かない? 子供なんて、3時間ぐらい側にいなくたって死にやしないさ。近所の高位貴族の侍女にでも雇ってもらえばいいのに・・・・・・それか・・・・・・爵位のない私達は平民と変らないのだから、そのへんのカフェや花屋やパン屋で、働けばいいのに。短時間で働く女性を、いくらでも募集するところはあった。
怠け者で、醜く痩せ衰えた女なんていらないよ・・・・・・このまま、帰ってこなければいいな。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は王家の騎士団に所属はしているものの末端の部署で、王に間近でお会いすることはおろか、騎士団長と話すこともできない立場だ。
王宮の裏庭の警備で、もっぱら野ウサギなどの小動物が庭園に入り込むのを防いだりする仕事で交代制だった。
王宮の正面の門を守るのは、もっと上の部署で、王族を守る第一騎士団員は雲の上の存在だ。
その日も、野ウサギを追いかけ回して、それからしゃがみこんで日向ぼっこをしていた。
「おい! ライアン! 第一騎士団長のクリストファー様がお前に、ご用だそうだ。お前、なんかしたのか?」
「え? クリストファー様? ・・・・・・そんな偉い人に呼ばれる覚えなんてないなぁ・・・・・・だって、あの方はトマス公爵様の弟君で、王様のお気に入りじゃないか? つい、最近、伯爵の位も授かったよなぁ? あの華麗なる一族にはお近づきにはなりたいけれど・・・・・・なんだろう?」
私は、わけがわからなかった。末端貴族の四男の私は、家督も継げず、エリートが集まる第一騎士団の一員には声もかけることができないのに。
第一騎士団長の執務室は、王の執務室の近くにある。
「クリストファー様。お呼びでしょうか?」
私は、ノックをして執務室に入った。
「やぁ、待っていたよ。君に、ちょっとした任務を与えたい。この屋敷の警備だ」
地図を広げて確認すると、湖の畔の金持ちばかりが集まる別荘地の最も、ランクが上の場所だった。
「・・・・・・なぜ、私なのですか?・・・・・・私は第5騎士団員で雑用と裏庭の管理しかしたことがないです」
「あぁ、裏庭の管理ね? とても、頑張っていると聞いた。これは機密事項が絡んでいるから、君を見込んでお願いしたい。第一騎士団員ではない人間の方がいいんだ。この屋敷を見張ってくれ。不審な者がいたら捕まえてほしい。この屋敷の隣に、小さめのゲストハウスがあるから、そこに泊まって好きなように使ってかまわない。期間は一ヶ月だが、コックもメイドもゲストハウスには、いるから困ることはないだろう。話は以上だ」
え? 私は、狐につままれたような気がした。見張る? 機密事項? 私をみこんで抜擢した? 嘘だろう?
こんなラッキーって・・・・・・人生、ついてきたぞ!
あぁ、レティシアが出て行ってから、いいことばかりだ。あの女が疫病神だったのかもしれない。
畜生! 美人で見栄えが良かったから結婚してやったのに・・・・・・今じゃぁ・・・・・・痩せた老婆みたいだ。いつも、しけたツラして、眉間に皺を寄せて、ため息ばかりつきやがって。このまま、ほんとにずっと帰ってくるなよ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
屋敷に着いた私は、その豪華さに驚嘆した。ここは、別世界なんだ。ゲストハウスでさえ、騎士団の集合住宅の部屋の3倍の広さだった。このリビングだけで、私の家の全体の広さがあるなんて・・・・・・格差社会にムカついてくるよ!
寝室が3つに、キッチンまでメインとサブで2つ? おまけに、通いのメイドが朝と夕方に来て、どんなに汚しても片付けてくれた。コックは常勤らしく朝、昼、晩、上等な食事を用意してくれる。
ここは、天国? 仕事は、見張るだけ・・・・・・隣の屋敷を見ているだけでいいのか? 見張るってそういうことだよな? 午前中はうとうとしながら、ひたすら見ていたが、午後にはソファで熟睡していた。
注意する上官もいない・・・・・・楽勝だ! ・・・・・・これなら・・・・・・女を連れ込んでもいいんじゃないかなぁ・・・・・・勤務時間以外の夜ならいいよな・・・・・・ゾーイ・パラダイス伯爵夫人でも呼ぶかな・・・・・・それとも・・・・・・ナタリーでもいいな・・・・・・
仕事もしていないくせに、なぜ掃除もできないんだ? レティシアが、こんなに無能だなんて思わなかった。料理も下手だし、子供を産んでからの劣化ときたら同一人物とは思えない。
赤子の世話しかしていないくせに、家事もろくにできず、女であることも忘れ、化粧もしないとは! しかも、私に、他の夫達のようにマリーの面倒を見ろという。
冗談はよせ。私は、子供が大嫌いなんだ。うるさく泣きわめくし、部屋は汚すし、うんざりだ。私が稼いだお金も家族に盗られるのが納得いかない。
なぜ、レティシアは働かない? 子供なんて、3時間ぐらい側にいなくたって死にやしないさ。近所の高位貴族の侍女にでも雇ってもらえばいいのに・・・・・・それか・・・・・・爵位のない私達は平民と変らないのだから、そのへんのカフェや花屋やパン屋で、働けばいいのに。短時間で働く女性を、いくらでも募集するところはあった。
怠け者で、醜く痩せ衰えた女なんていらないよ・・・・・・このまま、帰ってこなければいいな。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は王家の騎士団に所属はしているものの末端の部署で、王に間近でお会いすることはおろか、騎士団長と話すこともできない立場だ。
王宮の裏庭の警備で、もっぱら野ウサギなどの小動物が庭園に入り込むのを防いだりする仕事で交代制だった。
王宮の正面の門を守るのは、もっと上の部署で、王族を守る第一騎士団員は雲の上の存在だ。
その日も、野ウサギを追いかけ回して、それからしゃがみこんで日向ぼっこをしていた。
「おい! ライアン! 第一騎士団長のクリストファー様がお前に、ご用だそうだ。お前、なんかしたのか?」
「え? クリストファー様? ・・・・・・そんな偉い人に呼ばれる覚えなんてないなぁ・・・・・・だって、あの方はトマス公爵様の弟君で、王様のお気に入りじゃないか? つい、最近、伯爵の位も授かったよなぁ? あの華麗なる一族にはお近づきにはなりたいけれど・・・・・・なんだろう?」
私は、わけがわからなかった。末端貴族の四男の私は、家督も継げず、エリートが集まる第一騎士団の一員には声もかけることができないのに。
第一騎士団長の執務室は、王の執務室の近くにある。
「クリストファー様。お呼びでしょうか?」
私は、ノックをして執務室に入った。
「やぁ、待っていたよ。君に、ちょっとした任務を与えたい。この屋敷の警備だ」
地図を広げて確認すると、湖の畔の金持ちばかりが集まる別荘地の最も、ランクが上の場所だった。
「・・・・・・なぜ、私なのですか?・・・・・・私は第5騎士団員で雑用と裏庭の管理しかしたことがないです」
「あぁ、裏庭の管理ね? とても、頑張っていると聞いた。これは機密事項が絡んでいるから、君を見込んでお願いしたい。第一騎士団員ではない人間の方がいいんだ。この屋敷を見張ってくれ。不審な者がいたら捕まえてほしい。この屋敷の隣に、小さめのゲストハウスがあるから、そこに泊まって好きなように使ってかまわない。期間は一ヶ月だが、コックもメイドもゲストハウスには、いるから困ることはないだろう。話は以上だ」
え? 私は、狐につままれたような気がした。見張る? 機密事項? 私をみこんで抜擢した? 嘘だろう?
こんなラッキーって・・・・・・人生、ついてきたぞ!
あぁ、レティシアが出て行ってから、いいことばかりだ。あの女が疫病神だったのかもしれない。
畜生! 美人で見栄えが良かったから結婚してやったのに・・・・・・今じゃぁ・・・・・・痩せた老婆みたいだ。いつも、しけたツラして、眉間に皺を寄せて、ため息ばかりつきやがって。このまま、ほんとにずっと帰ってくるなよ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
屋敷に着いた私は、その豪華さに驚嘆した。ここは、別世界なんだ。ゲストハウスでさえ、騎士団の集合住宅の部屋の3倍の広さだった。このリビングだけで、私の家の全体の広さがあるなんて・・・・・・格差社会にムカついてくるよ!
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ここは、天国? 仕事は、見張るだけ・・・・・・隣の屋敷を見ているだけでいいのか? 見張るってそういうことだよな? 午前中はうとうとしながら、ひたすら見ていたが、午後にはソファで熟睡していた。
注意する上官もいない・・・・・・楽勝だ! ・・・・・・これなら・・・・・・女を連れ込んでもいいんじゃないかなぁ・・・・・・勤務時間以外の夜ならいいよな・・・・・・ゾーイ・パラダイス伯爵夫人でも呼ぶかな・・・・・・それとも・・・・・・ナタリーでもいいな・・・・・・
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