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4 カトレーネ・トマス前公爵夫人の屋敷に行こう
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私は、夫のライアンの事を全て、お話をした。カトレーネ・トマス前公爵夫人は、穏やかな笑みを浮かべながらも目の奥には、激しい怒りが宿っていた。
「私が大嫌いな人間ですよ。レティシアさんの旦那様を悪くは言いたくないですがね・・・・・・最低です! 自分の子供の面倒も見ないで、女と逢い引きだなんて! メイドの一人も、手伝ってくれる家族も一緒に住んでいないのでしょう? 夫の自分がやらなくて、どうするのです! 愚か者が・・・・・・おまけに、家にお金を少なく入れて遊ぼうとする? 清々しいほどのクズですね・・・・・・さぁ、レティシアさん。ちょっとしたゲームを始めましょう」
私は、カトレーネ・トマス前公爵夫人の屋敷に一週間、滞在するように言われた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「ちょっと、親戚の家で手伝いを頼まれたから、留守にしますね」
「は? マリーは連れて行けよ。私は、面倒は見られないからな! あぁ、それから一週間分の料理は作ってあるんだろうな? ない? だったら、その分の金をくれ。渡している生活費には食費が含まれているからな。私が食べる夕食代は渡したお金から払うべきだろう?」
私は、頷いてお金を渡した。残された生活費は先月の半分だった。ここから、家賃を払ったら、もうマリーのミルクだって買えないのに・・・・・・
「あぁ、いっそのこと、今月は帰ってこなくてもいいよ。そっちにいきっぱなしなら、生活費は渡さなくていいし、マリーの夜泣きにも悩まされない! 我ながら、なんていい考えだ! うん、そうしたまえ。だから、そのお金をこっちに全部、渡せよ! だいたいさ、レティシアも働けよ! 寄生虫じゃないんだからさぁ」
私は、黙ってお金を渡すと、荷物をトランクに詰めだした。
ライアンは嬉しそうに、私が荷物をまとめるのを見ていた。
「じゃぁ、来月にな! 私のことは気にするな! 親戚の家で、ゆっくりしておいで」
ライアンは、私の親戚の名前も、どこに行くのかも、まるで聞かなかった。
私にはもう全く興味がないのだ・・・・・・私は、玄関にかけてある鏡を見てため息をついた。
髪の毛はパサパサで、顔色も悪く、目は落ち込み痩せこけた女がそこにいた。
これが・・・・・・私?・・・・・・かつての輝くような美貌は、もうどこにもなかった・・・・・・
大きな通りに出たところで、豪奢な馬車が私を待っているのが見えた。国王でさえ遠慮するという、国一番の権力を持つ高位貴族のトマス公爵家の紋章が光る馬車に乗ると、子供を産んでから初めて安心した気持ちになって目を閉じた。
私はトマス公爵家に着くまで、深い眠りに身を任せたのだった。
「私が大嫌いな人間ですよ。レティシアさんの旦那様を悪くは言いたくないですがね・・・・・・最低です! 自分の子供の面倒も見ないで、女と逢い引きだなんて! メイドの一人も、手伝ってくれる家族も一緒に住んでいないのでしょう? 夫の自分がやらなくて、どうするのです! 愚か者が・・・・・・おまけに、家にお金を少なく入れて遊ぼうとする? 清々しいほどのクズですね・・・・・・さぁ、レティシアさん。ちょっとしたゲームを始めましょう」
私は、カトレーネ・トマス前公爵夫人の屋敷に一週間、滞在するように言われた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「ちょっと、親戚の家で手伝いを頼まれたから、留守にしますね」
「は? マリーは連れて行けよ。私は、面倒は見られないからな! あぁ、それから一週間分の料理は作ってあるんだろうな? ない? だったら、その分の金をくれ。渡している生活費には食費が含まれているからな。私が食べる夕食代は渡したお金から払うべきだろう?」
私は、頷いてお金を渡した。残された生活費は先月の半分だった。ここから、家賃を払ったら、もうマリーのミルクだって買えないのに・・・・・・
「あぁ、いっそのこと、今月は帰ってこなくてもいいよ。そっちにいきっぱなしなら、生活費は渡さなくていいし、マリーの夜泣きにも悩まされない! 我ながら、なんていい考えだ! うん、そうしたまえ。だから、そのお金をこっちに全部、渡せよ! だいたいさ、レティシアも働けよ! 寄生虫じゃないんだからさぁ」
私は、黙ってお金を渡すと、荷物をトランクに詰めだした。
ライアンは嬉しそうに、私が荷物をまとめるのを見ていた。
「じゃぁ、来月にな! 私のことは気にするな! 親戚の家で、ゆっくりしておいで」
ライアンは、私の親戚の名前も、どこに行くのかも、まるで聞かなかった。
私にはもう全く興味がないのだ・・・・・・私は、玄関にかけてある鏡を見てため息をついた。
髪の毛はパサパサで、顔色も悪く、目は落ち込み痩せこけた女がそこにいた。
これが・・・・・・私?・・・・・・かつての輝くような美貌は、もうどこにもなかった・・・・・・
大きな通りに出たところで、豪奢な馬車が私を待っているのが見えた。国王でさえ遠慮するという、国一番の権力を持つ高位貴族のトマス公爵家の紋章が光る馬車に乗ると、子供を産んでから初めて安心した気持ちになって目を閉じた。
私はトマス公爵家に着くまで、深い眠りに身を任せたのだった。
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