1 / 22
1 夫の裏切りを発見した私
しおりを挟む
大好きなライアンと結婚できたのは夢みたいだった。
洗練された身のこなしに、見惚れるほどの美貌の持ち主だ。
新婚の時期は、ただ、ただ、嬉しくて楽しかった。お互いが、お互いの容姿に満足して、『私(僕)達は美男美女の最強のカップル(だ)ね』と言い合っていた。けれど、自分のことだけしていればいい時間は、あっという間に終わった。
私達には、まもなく赤ちゃんが産まれた・・・・・・それからは、こんなはずじゃなかったと思うことが、とても多くなった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「マリーの夜泣きはなんとかならないのかい! うるさすぎる! 朝から騎士団の早朝訓練があるのに、同じ寝室で泣かれたら眠れないだろう!」
ぷりぷりと怒って、顔をしかめられた。赤ちゃんが、泣くのは仕方ないことだけれど、そんなふうに言われると悪いのは私だけな気がした。
王家の騎士団所属といっても花形部署ではなく役職もないライアンのお給料は、メイド付きの広いお屋敷に住めるほどには多くない。ここは、騎士団員の家族用の集合住宅だった。寝室は一部屋だけなので、ベビーベッドはそこに置いていた。それをリビングに移動しソファで私は寝ることになった。もう一部屋はライアンの趣味のもので占領されていたし、あとはキッチンがあるだけだ。
私達は二人とも、貴族ではあったが、私は三女でライアンは四男。家督はお互い継げなかったし、援助もない。それが、この世界では普通のことだった。
貴族の家に生まれても、長子でなければ、なにも引き継ぐものはない。
私は、子供の世話に明け暮れた。お化粧をする時間も、着飾る余裕もなくなってくると、ライアンは少しづつ冷たくなった。
「出かけてくるよ。夕飯はいらないから・・・・・・」
休みのたびに、コロンの香りをふりまきながら外出するライアンは、マリーを抱いて公園に散歩に行くことは一度もなかった。
よその夫達は、子供を散歩させたり、遊ばせていたりするのに・・・・・・
「少しは、マリーを抱いて、お散歩させてきてもらえないかしら? 近所の旦那様達は、子供とよく公園で遊んでいるでしょう?」
私は、そのお願いが酷いことだなんて思ってはいなかった。
「ふふふ。僕にそれを求めるのかい? それじゃぁ、その公園をよくみてごらんよ。その子供と遊んでいる夫に僕ほど美しい男がいるかい? 君は、綺麗な男を求めて僕と結婚したのだろう? 私も美人が好きだから君を選んだのに・・・・・最近の君ときたら・・・・・・女をすててるよね? 少しは隣のナタリーさんを見習えよ? そうそう、お向かいのお屋敷のゾーイ・パラダイス伯爵夫人なんて、君よりずっと冴えなかったのに、子供を二人産んでもあの美貌だよ? おかしいだろう? それに、私は仕事で疲れているんだ! 酷いことを言うのはやめてくれ!」
私は、言葉が出てこなかった。ナタリーさんの夫は、ライアンと同じ部署だけれど、帰宅時間もずっと早いらしかった。仕事の帰りに食材を買ってくる様子をよく見かけた。
「休日は、公園で子供達を遊ばせて、家事も手伝ってくれるのよ」
ナタリーさんが、幸せそうに言っていたのを思い出した。
お向かいのお屋敷のゾーイは同級生だった。学生時代は、確かにあまり綺麗じゃなかった。けれど、パラダイス伯爵家の嫡男と結婚したら、どんどん綺麗になっていった。
「やっぱり、女は結婚する男次第よね? 私の夫は容姿はいまいちだけれど、誰よりも大事にしてくれるのよ?」
2週間前の同窓会で、私に向かって、そう言ったゾーイは親友だった。今は、身分に差ができすぎて、こちらの気が引けて会いに行く気にもなれなかった。これほど、近くに住んでいても、住む世界が違いすぎた。
私が子供をおんぶして、食材を買ってトボトボと通りを歩いていると、馬車が横切っていった。
「おい、そこのおばさん! なに、もたもた歩いているんだよ! どけよ!」
御者が声を張り上げて怒鳴った。私は、その馬車の中に夫の姿を見た。あろうことか、着飾った女性の頬にキスをしているところだった。その馬車は、パラダイス伯爵家の馬車だった。キスされている女性は、かつての親友ゾーイだった。
洗練された身のこなしに、見惚れるほどの美貌の持ち主だ。
新婚の時期は、ただ、ただ、嬉しくて楽しかった。お互いが、お互いの容姿に満足して、『私(僕)達は美男美女の最強のカップル(だ)ね』と言い合っていた。けれど、自分のことだけしていればいい時間は、あっという間に終わった。
私達には、まもなく赤ちゃんが産まれた・・・・・・それからは、こんなはずじゃなかったと思うことが、とても多くなった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「マリーの夜泣きはなんとかならないのかい! うるさすぎる! 朝から騎士団の早朝訓練があるのに、同じ寝室で泣かれたら眠れないだろう!」
ぷりぷりと怒って、顔をしかめられた。赤ちゃんが、泣くのは仕方ないことだけれど、そんなふうに言われると悪いのは私だけな気がした。
王家の騎士団所属といっても花形部署ではなく役職もないライアンのお給料は、メイド付きの広いお屋敷に住めるほどには多くない。ここは、騎士団員の家族用の集合住宅だった。寝室は一部屋だけなので、ベビーベッドはそこに置いていた。それをリビングに移動しソファで私は寝ることになった。もう一部屋はライアンの趣味のもので占領されていたし、あとはキッチンがあるだけだ。
私達は二人とも、貴族ではあったが、私は三女でライアンは四男。家督はお互い継げなかったし、援助もない。それが、この世界では普通のことだった。
貴族の家に生まれても、長子でなければ、なにも引き継ぐものはない。
私は、子供の世話に明け暮れた。お化粧をする時間も、着飾る余裕もなくなってくると、ライアンは少しづつ冷たくなった。
「出かけてくるよ。夕飯はいらないから・・・・・・」
休みのたびに、コロンの香りをふりまきながら外出するライアンは、マリーを抱いて公園に散歩に行くことは一度もなかった。
よその夫達は、子供を散歩させたり、遊ばせていたりするのに・・・・・・
「少しは、マリーを抱いて、お散歩させてきてもらえないかしら? 近所の旦那様達は、子供とよく公園で遊んでいるでしょう?」
私は、そのお願いが酷いことだなんて思ってはいなかった。
「ふふふ。僕にそれを求めるのかい? それじゃぁ、その公園をよくみてごらんよ。その子供と遊んでいる夫に僕ほど美しい男がいるかい? 君は、綺麗な男を求めて僕と結婚したのだろう? 私も美人が好きだから君を選んだのに・・・・・最近の君ときたら・・・・・・女をすててるよね? 少しは隣のナタリーさんを見習えよ? そうそう、お向かいのお屋敷のゾーイ・パラダイス伯爵夫人なんて、君よりずっと冴えなかったのに、子供を二人産んでもあの美貌だよ? おかしいだろう? それに、私は仕事で疲れているんだ! 酷いことを言うのはやめてくれ!」
私は、言葉が出てこなかった。ナタリーさんの夫は、ライアンと同じ部署だけれど、帰宅時間もずっと早いらしかった。仕事の帰りに食材を買ってくる様子をよく見かけた。
「休日は、公園で子供達を遊ばせて、家事も手伝ってくれるのよ」
ナタリーさんが、幸せそうに言っていたのを思い出した。
お向かいのお屋敷のゾーイは同級生だった。学生時代は、確かにあまり綺麗じゃなかった。けれど、パラダイス伯爵家の嫡男と結婚したら、どんどん綺麗になっていった。
「やっぱり、女は結婚する男次第よね? 私の夫は容姿はいまいちだけれど、誰よりも大事にしてくれるのよ?」
2週間前の同窓会で、私に向かって、そう言ったゾーイは親友だった。今は、身分に差ができすぎて、こちらの気が引けて会いに行く気にもなれなかった。これほど、近くに住んでいても、住む世界が違いすぎた。
私が子供をおんぶして、食材を買ってトボトボと通りを歩いていると、馬車が横切っていった。
「おい、そこのおばさん! なに、もたもた歩いているんだよ! どけよ!」
御者が声を張り上げて怒鳴った。私は、その馬車の中に夫の姿を見た。あろうことか、着飾った女性の頬にキスをしているところだった。その馬車は、パラダイス伯爵家の馬車だった。キスされている女性は、かつての親友ゾーイだった。
1
お気に入りに追加
2,024
あなたにおすすめの小説
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
完結 偽りの言葉はもう要りません
音爽(ネソウ)
恋愛
「敵地へ出兵が決まったから別れて欲しい」
彼なりの優しさだと泣く泣く承諾したのにそれは真っ赤な嘘だった。
愛した人は浮気相手と結ばれるために他国へ逃げた。
(完結)嫌われ妻は前世を思い出す(全5話)
青空一夏
恋愛
私は、愛馬から落馬して、前世を思いだしてしまう。前世の私は、日本という国で高校生になったばかりだった。そして、ここは、明らかに日本ではない。目覚めた部屋は豪華すぎて、西洋の中世の時代の侍女の服装の女性が入って来て私を「王女様」と呼んだ。
さらに、綺麗な男性は、私の夫だという。しかも、私とその夫とは、どうやら嫌いあっていたようだ。
些細な誤解がきっかけで、素直になれない夫婦が仲良しになっていくだけのお話。
嫌われ妻が、前世の記憶を取り戻して、冷え切った夫婦仲が改善していく様子を描くよくある設定の物語です。※ざまぁ、残酷シーンはありません。ほのぼの系。
※フリー画像を使用しています。
(完)美貌の王に恋するお姫様(前7話)
青空一夏
恋愛
エステファニア王国のアイヤナ姫は、はじめて見る庭師に恋をした。
その彼と駆け落ちをしたのだが・・・・・・ハッピーエンドのお話。読むに従って「なるほどね」と思うような構成になっています。なので、タグは言えない秘密(´,,•ω•,,`)◝
画像はpixabayのフリー画像です。
不遇の花詠み仙女は後宮の華となる
松藤かるり
恋愛
髙の山奥にある華仙一族の隠れ里に住むは、華仙術に秀でた者の証として花痣を持ち生まれた娘、華仙紅妍。
花痣を理由に虐げられる生活を送っていた紅妍だが、そこにやってきたのは髙の第四皇子、秀礼だった。
姉の代わりになった紅妍は秀礼と共に山を下りるが、連れて行かれたのは死してなお生に縋る鬼霊が巣くう宮城だった。
宮城に連れてこられた理由、それは帝を苦しめる禍を解き放つこと。
秀礼の依頼を受けた紅妍だが簡単には終わらず、後宮には様々な事件が起きる。
花が詠みあげる記憶を拾う『花詠み』と、鬼霊の魂を花に渡して祓う『花渡し』。
二つの華仙術を武器に、妃となった紅妍が謎を解き明かす。
・全6章+閑話2 13万字見込み
・一日3回更新(9時、15時、21時) 2月15日9時更新分で完結予定
***
・華仙紅妍(かせんこうけん)
主人公。花痣を持つ華仙術師。
ある事情から華仙の名を捨て華紅妍と名乗り、冬花宮に住む華妃となる。
・英秀礼(えいしゅうれい)
髙の第四皇子。璋貴妃の子。震礼宮を与えられている。
・蘇清益(そ しんえき)
震礼宮付きの宦官。藍玉の伯父。
・蘇藍玉(そ らんぎょく)
冬花宮 宮女長。清益の姪。
・英融勒(えい ゆうろく)
髙の第二皇子。永貴妃の子。最禮宮を与えられている。
・辛琳琳(しん りんりん)
辛皇后の姪。秀礼を慕っている。
(完結)君を愛することはないという旦那様(全3話)
青空一夏
恋愛
私は孤児だったレティシア。教会で育てられたが、ゴンザレス女侯爵様にとても気に入られご子息イーサン様と結婚することになった。ところが、彼には恋人がいて・・・・・・
全3話
前編・中編・後編の予定。字数に偏りがあります。前編短め。中編、後編長めかもしれません。
ゆるふわ設定ご都合主義。異世界中世ヨーロッパ風。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる