レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#11-20

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 女性は和服に使われそうな、黒地に草花の模様が白だけで描かれたロングカーディガンを羽織っていた。
 「…何ですか?先輩。」
 風子先輩がそう言うと、羽織の女性に無理やり体を起こされ、揺らされていた。
 「見てこれ!」
 彼女が手にしていたのは、有名な製薬会社ののど飴が入った袋だった。
 「これ買ってきてくれたの、ヒサだって言うじゃない?私の好きな味知ってて買ってきてくれたってことでしょ?もう…イケメン過ぎでしょ!」
 そう叫ぶ叫び、風子先輩の体を揺すった。
 「それは良かったですね…先輩…。」
 だが、風子先輩も慣れているのか、眠そうな顔のまま軽く遇っていた。
 「ちょっと!聞いてるのフー…。って、この娘は?初めて見る顔だけど…。」
 その時、初めて羽織の女性と目を合わせた。
 「前に寧々が言ってたでしょ、友人を一人引き入れたいって。その娘ですよ、ナナ先輩。」
 マサが説明した後、思い出した様な顔をし、風子先輩を手放した。
 「そっか、確かそんなこと言ってたね…。」
 「えっと、遠野彩夏です。彩って呼ばれてます…。」
 私は、さっきと同じような自己紹介をした。
 「彩ちゃん…。私は七森知夏。皆からナナって呼ばれ慣れてる。よろしくね。」
 ナナ先輩が差し出してきた右手を私も握った。
 「わ!お手々小っちゃくて、可愛い!」
 彼女はそう言うと、両手を使って揉みだした。
 「ね!私もそう思った!体も小さいし、可愛いですよね!」
 風子先輩も、賛同した。
  「ね!こんな娘がウチに入ってくれるなら、もう色々甘やかしちゃいそう。」
 「ですよね!どこの学部?予定合うなら今度お昼一緒に行こうよ!」
 小さいとはよく呼ばれてあまり、良い気分はしないことの方が多いが、彼女等のそれは、全くそうは感じなかった。
 なんというか、馬鹿にするような言葉ではなく、本当に私を受け入れてくれているのが、凄く伝わってきた。
 「あ、ありがとうございます…。一応、経済学部で…。基本的には、水曜日以外は、一日講義なので…予定は、合わせられるかと…思います。」
 「じゃぁじゃぁじゃぁ!次の月曜日さぁ!食堂棟の入り口で待ってるからさ、おいでよ!いつもフーと二人だけだからさ…。」
 「最近は、寧々ちゃんも一緒でしょ?」
 「そうだけど、多い方が楽しいでしょ?」
 「それは違いないですね。」
 彼女等はそう言いながら、私の手や頭を撫で回していた。
 「…っと、こんなことしてる場合じゃない。行かなきゃ…。」
 ナナ先輩はそう言うと、バーカウンターの方へと向かった。
 「どこへ?」
 「ヒサにコクってくる!」
 彼女は意気揚々と、トヨダ先輩の元へと向かっていった。
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