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14章:四人の約束
#11-19
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「じゃぁ、ナナ先輩にも渡してきますね。」
寧々はそう言い残すと、ステージを横切り、下手側にある扉を開け、中に入っていった。
「まさか、そんなところで寝てるとは…。」
「昨日遅くまでバイトしてたらしいですからね…。今朝も集合時間ギリギリでしたし。」
「まぁ、弁当屋は忙しいらしいからな…。それよりも、もしかしてだけど、君が寧々が言っていた、ウチに入れたいって言ってた娘かな?」
Tシャツの男性がそう声をかけてきた。
「えっと…。」
「そうですよ。トヨダ先輩。寧々の友だちらしいですよ。今日は、お客で来てくれてます。」
マナカがそう説明した。
「そうか。まぁ今日は楽しんでいってくれ。それと、寧々の本気、見てやってくれ。」
Tシャツの男性、もとい、トヨダ先輩はそう言うと、奥の方にある、バーカウンターの様に居る他の男性たちの所へ混ざっていった。
「君…だと可哀想だから、名前、聞いても良いっすか?」
革ジャンの男性が訊ねてきた。
「えっと…。」
「あ!ちなみに俺は、河内雅史!ギター担当で、皆からマサって言われてます!ヨロシク!」
私が答えるのを遮るように、自分の紹介を述べた。彼の事は、マサと呼べばいいことと、少し無神経なところがあることだけは、わかった。
「マサ!今彩夏ちゃんが喋ろうとしてたでしょ!」
マナカが彼の頭をひっぱたいた。
「痛ぇよ、マナカ…。」
「当たり前でしょ。叩いたんだから。御免ね、彩夏ちゃん。コイツ、アホだから配慮が足りない部分があるけど、腕は確かだから多めに見てやって。」
「そんな言い方ないだろ…。」
マサは頭を摩り、少し落ち込んだ様に呟いた。
「えっと、遠野彩夏って言います。彩っては呼ばれ慣れてます。楽器は、本当に昔ピアノを齧った程度で、人並みにできるかどうかというところです…。」
「彩ちゃん、可愛いね…。」
そう背後から聞こえた。そういえば、この荷物の山に、風子と呼ばれた先輩が潜んでいた。
「風子先輩、起きてたんですか。」
「起きたよ。コーヒー貰ったからね…。それより彩ちゃん、よろしくね?ウチのサークル、メンバー組むのも、それぞれのライブで変更自由だし、初心者も結構いるからさ、自分のしたいことやれるから、かなり居やすいと思うからさ、入ってみるところから始めてもいいかもね?」
風子先輩はそう言うと、右手を差し出してきた。思わず握手を求めているのかと思い、私も右手を差し出した。
だが、
「危ない。」
腕を引っ張られた。
「フー!ちょっと聞いてよ!」
背後の方から、別の女性の甲高い声が聞こえた。
寧々はそう言い残すと、ステージを横切り、下手側にある扉を開け、中に入っていった。
「まさか、そんなところで寝てるとは…。」
「昨日遅くまでバイトしてたらしいですからね…。今朝も集合時間ギリギリでしたし。」
「まぁ、弁当屋は忙しいらしいからな…。それよりも、もしかしてだけど、君が寧々が言っていた、ウチに入れたいって言ってた娘かな?」
Tシャツの男性がそう声をかけてきた。
「えっと…。」
「そうですよ。トヨダ先輩。寧々の友だちらしいですよ。今日は、お客で来てくれてます。」
マナカがそう説明した。
「そうか。まぁ今日は楽しんでいってくれ。それと、寧々の本気、見てやってくれ。」
Tシャツの男性、もとい、トヨダ先輩はそう言うと、奥の方にある、バーカウンターの様に居る他の男性たちの所へ混ざっていった。
「君…だと可哀想だから、名前、聞いても良いっすか?」
革ジャンの男性が訊ねてきた。
「えっと…。」
「あ!ちなみに俺は、河内雅史!ギター担当で、皆からマサって言われてます!ヨロシク!」
私が答えるのを遮るように、自分の紹介を述べた。彼の事は、マサと呼べばいいことと、少し無神経なところがあることだけは、わかった。
「マサ!今彩夏ちゃんが喋ろうとしてたでしょ!」
マナカが彼の頭をひっぱたいた。
「痛ぇよ、マナカ…。」
「当たり前でしょ。叩いたんだから。御免ね、彩夏ちゃん。コイツ、アホだから配慮が足りない部分があるけど、腕は確かだから多めに見てやって。」
「そんな言い方ないだろ…。」
マサは頭を摩り、少し落ち込んだ様に呟いた。
「えっと、遠野彩夏って言います。彩っては呼ばれ慣れてます。楽器は、本当に昔ピアノを齧った程度で、人並みにできるかどうかというところです…。」
「彩ちゃん、可愛いね…。」
そう背後から聞こえた。そういえば、この荷物の山に、風子と呼ばれた先輩が潜んでいた。
「風子先輩、起きてたんですか。」
「起きたよ。コーヒー貰ったからね…。それより彩ちゃん、よろしくね?ウチのサークル、メンバー組むのも、それぞれのライブで変更自由だし、初心者も結構いるからさ、自分のしたいことやれるから、かなり居やすいと思うからさ、入ってみるところから始めてもいいかもね?」
風子先輩はそう言うと、右手を差し出してきた。思わず握手を求めているのかと思い、私も右手を差し出した。
だが、
「危ない。」
腕を引っ張られた。
「フー!ちょっと聞いてよ!」
背後の方から、別の女性の甲高い声が聞こえた。
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