レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#11-15

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 マサは、数駅先の所に住んでいるらしく、駅構内で別れた。
 私は、夕飯の食材調達のために、近くの繁華街で、買い物をし、帰ることにした。
 その時、細い路地で、ウロウロしている女性を発見した。
 本来なら、無視しているのだが、年齢的にも私と変わらないだろうし、数十分前にも同じようなところを、ぐるぐると回っている様だった。それに、ここら辺は、暗くなると人の目はおろか、監視カメラの類もない。コンビニがあれば、少し変わるのかもしれないが、そんな店などない、完全なる暗がりの道。よく、酔っぱらいやガラの悪そうな連中が屯して、騒いでいるのを見るのも少なくない。
 だから、この時ばかりは親切心で声をかけてみた。
 「どうしたの?ここら辺、暗くなると危険だから、早く帰った方が良いよ?」
 「あ…えぇっと…ちょっと、道に迷ってしまって…。」
 「迷ってって…。」
 大通りからは少し離れてはいるが、一本曲がれば、どう行こうとも、大通りに突き当たる、格子状の路地の筈だが…。
 「どこに行きたいの?もしあれなら、近くまで案内してあげようか?」
 「えっと、ここなんですけど…。」
 彼女はスマホを見せてきた。
 「駅の反対側じゃないかい…。」
 「ば、場所さえ教えて下されば、自分で行けると思いますので…。」
 まぁ、彼女が迷うのは無理もない。駅の構内は改札に入るまでの部分もかなり広いし、出口が少し違えば、風景がまるで違う。それに、駅ビルも加えれば、迷う人も少なくないだろ…。だが、都会慣れしている人なら、多少迷っても、たどり着けない程の道のりではない…。
 おそらくこの娘は、上京したててで、東海の歩き方に慣れていないのだろう…。あるいは、本当に方向音痴なだけか…。その両方か…。
 この時の私は、バンドのメンバーと曲が何とか決まったことで、少し心が穏やかになっていたのか。
 「仕方ない、近くまで案内してあげる。」
 そう言ってしまった。
 「わ、悪いですよ!お買い物の帰りですよね?」
 彼女は、私の手にぶら下がった、買い物袋に目をやった。
 「あぁ、気にしないで。直ぐに悪くなるものは買ってないし、それ程遠くないから別にいいよ。」
 「そ、そうですか。じゃぁお願いします。」
 彼女はそう言うと、私の後を付いてきた。
 「アンタ、名前は?最近上京してきた娘でしょ?」
 「えっと、香織。宮本香織です。この近くの大学に通うために上京してきました。」
 この近くというと、私がかよっている大学しかない。
 「じゃぁ、同期だね。私は佐藤寧々。よろしく。」
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