レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#11-12

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 「お二人って、そう言っナカなんですか?」
 マサ口元をぬぐいながらそう訊ねた。
 「違う、こいつが一方的に言ってるだけだ。」
 知夏先輩の「そうよ!」という言葉を食い気味にトヨダ先輩が答えた。
 知夏先輩は、散々「酷い」だの「一度くらい」と愚痴の様な言葉を並べ、食い下がったが、トヨダ先輩がバッサリとそれを切った。
 「だから、俺はナナと知り合う遥か昔から好きな娘が居るんだよ。それくらい汲んでくれよ…。」
 知夏先輩はムスッとしたような顔をして、“仕方なく”納得した様だが、諦めていないのは確かだった…。
 「そ、それより、メンバーが集まったんだから、曲、決めましょうよ!今日は私もバイトのシフト入ってないから、最後までいれるよ!」
 「そうですね!早く決めて、少しでも練習する時間を増やしましょう。」
 風子先輩の提案に賛同し、曲の案を出し合った。急遽決まったバンドの為、本場までの時間がない…。だから、少しでも練習時間を増やしたい。だから、特別難しい曲にしてしまえば、本番まで仕上げられるかどうか微妙だ…。逆に簡単な曲でも悪くはないと思うが、せっかくこんなにいいメンバーを集めたのだから、ある程度は拘っておきたい…。
 「どうしましょうね…。」
 「ん~。状況が状況だから、そこそこ難しい曲を2・3曲にするか、難易度は低い曲をメドレー形式でやるか…。」
 「どちらにせよ、かなりのスピードで仕上げねぇとだから、一度はやったことがある曲の方が良いんじゃねぇか?時間以上にお互いの事知らないことだらけだから、自我が出せる得意曲より、知ってる曲の方が良いと思う…。」
 個人的に、本番のあの緊張感と多幸感も好きだが、曲を決めるときの皆でああだこうだ言い合っている時間も、嫌いではない。ましてや初めてのメンバーと話し合う時が、一番楽しい…。
 「ちなみに寧々ちゃんは今回何かテーマがあったりする?それによっては、曲のイメージが付きやすいかも…。」
 そう助言してくれたのは、知夏先輩だった。正直、テーマなんて決めていない…。ただ、単純にただ友人を一人、サークルに引き込みたいがために、今回バンドを組んだまでだ…。
 「…ですから、少しでも私たちの音楽に興味持ってくれる曲が良いかなぁと思っています。」
 私は、今回メンバーを募集した事情を皆に話した。
 「だったら、俺たちがってよりは、寧々が全力を出した方がいいな。」
 トヨダ先輩が発言した。
 「それって、ベースが主体とした曲ってことですか?」
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