レトロな事件簿

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
286 / 309
14章:四人の約束

#10-3

しおりを挟む
 趣味・・・そういわれると、これといったものは無い…。
 あるのは、読書とコーヒーくらいだ。寧々の様に、料理が特別得意なわけでもなければ、彩の様に、音楽がとても好きなわけでもない。
 好きなことは、いろいろあるが、それはせいぜい、好物のようなものだ。趣味になる様なのめり込めるものではない。
 「それが、あまりないんだよね…。」
 私も何か別の趣味を見つけてみたいと思ってはいた。
「…そっか。私も音楽以外ないから、他にいい趣味がないか、探してるんだよね…。
ふと、下流の方で、釣り糸を垂らしている、季則さんが視界に入った。
 「私も釣りしてみようかなぁ…。」
 「釣りか…私やったことない…。」
 「行ってみる?」
 彩は頷くと、私たちは立ち上がり、季則さんが居る下流の方に向かった。

 「何か釣れます?」
 季則さんにそう訊ねると彼は、首を横に振った。
 「流れは穏やかだが、向こうであいつらが騒いでるからな…。」
 季則さんは、麻由美たちがいる上流に視線を向けた。
 「もう少し下流に行かないと釣れないね…。」
 「あの私たち、釣りしたことないので、やってみたいです。」
 「なるほど…。わかった。じゃぁ、もう少し、下流の方に移動しよう。よく釣れる穴場があるから。」
 彼はそういうと、クーラーボックスと釣り竿ケースを肩にかけると、下流の方に向かって歩き出し、私と彩はその後に続いた。
 

 久々に体を動かすのは、気分がいい。ましてや、都会ではあまり経験することが少なくなった、川遊び…。しばらく飽きることはないだろう。
 だが…。
 「ちょっと…休憩…。流石に疲れた…。」
 私が水面から顔を出し、近くの大きめの岩に腰を下ろした。
 「もう疲れたの?」
 麻由美も顔をあげ、私の近くまでやってきた。まるで、「情けない」と言わんばかりの表情で…。
 「貴女は元スポーツマンでしょ…。私はずっと文化人だから、体の動かし方の根幹から違うのは当然でしょ…。」
 重いベースをもって、数バンド掛け持ちすることもあるから、私もそれなりに体力には自信がある。
 だが、元運動部の麻由美とは、差があるのは当然だ…。」
 「そっか…。それより、香織たちは?」
 私はそういわれ、彼女らが居たあたりに目を向けた。だがそこには、さっき彼女らが作っていた、岩のプールがあるだけで、姿形見えなかった。
 「あれ?いない…。」
 「父さんも居ないから一緒に下流の方に行っちゃったのかも。」
 「一緒にって、釣りしに行ったってこと?」
 「多分…。まぁ、父さんが一緒なら、大丈夫でしょ。」
 麻由美はそういうと、また川の中に入っていった。
 「ほんと、体力お化け…。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

真理の扉を開き、真実を知る 

鏡子 (きょうこ)
ミステリー
隠し事は、もう出来ません。

お姉ちゃんでしょ!は呪いの言葉~姉の気持ちに気付いてください。

夜実
ミステリー
姉の私と妹は同じ家庭に生まれたのに生きる世界が全て真逆。姉であるからわかるし書ける。お姉ちゃんでしょ!は使わないで。世界は理不尽でできている。貴方はわかる?私の病気、呪い。

【キャラ文芸大賞 奨励賞】変彩宝石堂の研磨日誌

蒼衣ユイ/広瀬由衣
ミステリー
矢野硝子(しょうこ)の弟が病気で死んだ。 それからほどなくして、硝子の身体から黒い石が溢れ出すようになっていた。 そんなある日、硝子はアレキサンドライトの瞳をした男に出会う。 アレキサンドライトの瞳をした男は言った。 「待っていたよ、アレキサンドライトの姫」 表紙イラスト くりゅうあくあ様

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

cafe&bar Lily 婚活での出会いは運命かそれとも……

Futaba
恋愛
佐藤夢子、29歳。結婚間近と思われていた恋人に突然別れを告げられ、人生のどん底を味わっております。けれどこのままじゃいけないと奮起し、人生初の婚活をすることに決めました。 そうして出会った超絶国宝級イケメン。話も面白いし優しいし私の理想そのもの、もう最高!! これは運命的な出会いで間違いない! ……と思ったら、そう簡単にはいかなかったお話。 ※全3話、小説家になろう様にも同時掲載しております

導かれるモノ導く者

van
ミステリー
小学生の頃の体験から佳文は、見えないモノが見えるようになってしまった… 見えないモノが見えるだけなら良かったのだが、それは…

病院の僧侶(プリースト) と家賃という悪夢にしばられた医者

加藤かんぬき
ミステリー
 僧侶サーキスは生き別れた師匠を探す旅の途中、足の裏に謎の奇病が出現。歩行も困難になり、旅を中断する。  そして、とある病院で不思議な医者、パディ・ライスという男と出会う。  中世時代のヨーロッパという時代背景でもありながら、その医者は数百年は先の医療知識と技術を持っていた。  医療に感銘を受けた僧侶サーキスはその病院で働いていくことを決心する。  訪れる患者もさまざま。  まぶたが伸びきって目が開かない魔女。  痔で何ものにもまたがることもできなくなったドラゴン乗りの戦士。  声帯ポリープで声が出せなくなった賢者。  脳腫瘍で記憶をなくした勇者。  果たしてそのような患者達を救うことができるのか。  間接的に世界の命運は僧侶のサーキスと医者パディの腕にかかっていた。  天才的な技術を持ちながら、今日も病院はガラガラ。閑古鳥が鳴くライス総合外科病院。  果たしてパディ・ライスは毎月の家賃を支払うことができるのか。  僧侶のサーキスが求める幸せとは。  小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

処理中です...