レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#9-5

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 「まぁ、これだけあれば味にも飽きないでしょう…。」
 麻由美は誇らしげにそう言った。
 結局、部屋に運び込まれた料理の数は、デザート含め、およそ90食分に及んだ…。これだけの量、私たち4人で食べきれるかどうかは、少し不安だが…。
 「少し冷めても、電子レンジ持ってきたから、幾らでも温められる。好きなだけ食べられるよ。」
 「麻由美ってここまで、食に執着心があった?」
 寧々が私にそう耳打ちしてきた。
 「いや、普段はそうじゃないんだけど、朝食になると、そうじゃないらしくて…。部活やってた時の習慣で、体力作りの一環として、ここまで食べるらしいよ…。」
 意外な事に、麻由美はよく食べる…。大学に入ってっからは、部活やクラブ活動は一切していない為、その習慣はあまり見られなくなったが、高校生の頃は、たまに、善く見られた。当時は、バレーボールをやっていた時の名残だったらしい…。
 麻由美は裏方から持ってきた膳と箸を並べた。
 「よし、食べましょう!」
 「私、こんなに食べられる自信ないんだけど…。」
 彩が私に耳打ちした。
 「大丈夫、殆ど麻由美が食べると思うから。」
 私たちはそれぞれ、席に着き手を合わせ、食事を始めた。
 私はわかめの味噌汁と、金平ごぼう、黒豆の煮つけ、厚焼き玉子、鮭の塩焼きを皿に盛り着け、口にした。
 やはりこの旅館の朝の食事は美味しい…。味付けも食感も、この時間にとても適している…。
 それの旗振りをしているのは、他でもない、麻由美のお父さん、鈴木季則さんのお陰でもある…。彼は、経営能力も長けているが、何より、舌と鼻の感覚に優れても居る。
 そのため、彼が朝に居る時や、夕方出かける前等、味付けや香り付の確認を、実食を交えて行っている…。
 その制度は、広瀬さんも舌を巻くレベルで…。
 「う、上手い…。このポテトサラダ…。」
 「こっちのサバも美味しい…。」
 彩も寧々も、流石に驚いたのか、箸を伸ばすスピードが加速した。
 「うん!やっぱり美味しい…。香織もそうだけど、二人も遠慮しないで食べてね?」
 麻由美は当たり前の如く、そう呟き白米を頬張った。
 「そっか…。あたしらの仲で唯一、体育会系だったっけ…。」
 「こう見ると、ちゃんと身体づくりしてたのね…。」
 寧々と彩が、そうっこっそりと耳打ちしてきた。
 「そうね…。私も最初の頃は驚いたけど、麻由美の体付き見ると、納得するよ。」
 麻由美はバレーボールを辞めてからも、体付きは、きっと当時と変わっていない…。脚や背筋の着き方は、私のそれとはやはり違う…。だから、彼女は、所謂、私たちは4人の仲では…。
 「パワー型って事か…。」
 寧々はそう言うと、何か企んだ様にそう言った…。
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