レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#9-2

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 風呂から上がり、髪を乾かし、再度部屋に戻る頃には、時計の針は、5時を刻もうとしていた…。他の皆は流石に昨日遅くまで騒いでいた為、起きるのは難しそうだ…。だが麻由美と光さんだけは、洗面所で髪を梳かしていた。
 「麗子さんと朝風呂行ってたの?」
 「うん。久々に入ると気持ち良いね。」
 「そりゃそうよ。何せ、私の旅館の温泉だもん。」
 「まだ麻由美のってわけじゃないでしょ?」
 「そうだった。じゃぁ、行こうか。彩たちは、まだ眠っていたいだろうから、そのままにしておこう?」
 「せめて美穂ちゃんくらいは起きてて欲しかったけど…。」
 光さんが呆れた様にそう言った。
 「しょうがないよ、あの人は元々夜型の人間だから…。」
 「香織ちゃん…。あの娘に甘くするから、一段と好かれるんじゃない?」
 「…。」
 私的には、優しくしているつもりはないのだが…。
 「それより、行きましょう?広瀬さんが、厨房で待ってます。」
 麻由美がそう言い、私たちは、部屋を出て行った。
 
 旅館の朝は早い…。それは、ここで住み込みで働き始めて2日目にして、知った事だった。
 私自信、寝起きには自信があったのだが、それでも、最初の1~2週間ほどは、身体が馴染めなかったが、何とか食らいついていけた…。
 そして、気が付けば、4時や5時頃に自然と目が覚める様になった。
 それは、ここのバイトを辞めてからもずっと…。だから、今井さんの家で、朝食等を作る時間が充分にある。その分、麻由美もそうだが、夜更かしにはちょっと弱いのが玉に瑕だ…。
 
 厨房に着くと、朝食を作るべく、調理スタッフたちが世話しなく動き回っていた。
 「…お嬢に香織ちゃん!お早うございます!この組み合わせ久々ですね!そこの料理、もう少し煮込めば出来上がるから、見てて貰って良い?それと、そこの厚焼き、切ってチューフィングに盛り付けて置いて。」
 近くを通り掛かった、一人の調理スタッフがそう声を掛けてきた。
 チューフィングとは、チューフィングディッシュの事。バイキング料理やビュッフェの時に料理を保温したまま提供するのに用いる大きな保温器具。
 「私玉子切るから、香織はそっちお願い。」
 「はーい。」
 麻由美のその言葉に、私はそう応え、筑前煮を煮詰めた。
 そう言えば、私が覚えた料理も、ここで、こんな感じで覚えて行ったんだっけ…。
 欠伸を押し殺し、只管、おたまを回して時だった。
 低い欠伸交じりの男性の声が、厨房に響いた。
 「朝から頑張ってるね…。お早う諸君、味見しに来たよ。」
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