レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#8-4

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 百乃季から数十キロ離れた都心にある、小さなバー、レトロ。今日は珍しく客足が少なく店内には、知った顔しかいなかった…。
 「はぁ…。今日は香織ちゃん居ないのか…。」
 今井真香がそう呟き、ビールの入ったグラスを傾けた。
 「晩酌相手が居ないからって、年下の男誘うか?普通…。」
 華宵園4代目店主、大神彰がその隣で、焼酎の入ったグラスを握っていた。
 「誘ったって、入り口でばったり会っただけじゃない!」
 今井が声を少し荒げ、反発した。彰はそれを、笑いながら聞き流した。
 「お前も大概だろ…。ここは“洋酒場”だぞ。何で焼酎なんだよ…。」
 カウンター越しに立っていた。バーテンダーの九条が呆れた様にそう呟いた。
 「そう言う割には、置いてるじゃねぇか。」
 カウンターの端に置かれていたメニュー表をペラペラと捲った。
 「元々酎ハイやらカクテルやらに入れるために置いてたんだよ…。お前が飲むからいつの間にか、メニューに載る様になったんだよ。」
 「ってことは、俺が発案者って事か…。」
 「…そう言う事にしておいてやる…。」
 夜も深まってきているとは言え、店内はかなり静かだった。昼のれとろとは違い、大人な妖しい静けさが漂っていた…。お酒が進んでくると、少し大胆な話をしてみたくなる…。
 「彰君と九条君は、あの4人の中から選ぶとしたら、誰?」
 「「あの4人?」」
 二人がオウムの様に、聞き返してきた。
 「香織ちゃんと寧々ちゃんと麻由美ちゃんと彩ちゃんの4人。選ぶっていのは、これね。」
 今井が小指を立てた。
 「年も近いんだし、やっぱりそう言うのあるのかなぁ?って…。」
 「ん~、あんまりそんな目で見たことないからなぁ…。」
 「同じく…。」
 二人は、暫く考え込んだ後、最初に彰が口を開いた。
 「選べないなぁ…。皆いい子だし…。」
 「何それ、一番紳士的な答えじゃん…。」
 「…でも一人だけ、気になる子は居るかなぁ…。誰とは言わないけど、見てて飽きない…。」
 「珍しいな、お前が女子に興味を持つなんて…。」
 「俺も男だからな。好きなコの一人や二人は居るし、好きな女性芸能人だっている。そんな珍しいことじゃないさ。」
 「…そうかい…。ちなみに僕は居ないな。」
 「あら?てっきり“香織ちゃん”って言うのかと思ったけど。」
 「香織ちゃんは確かに気には掛けてるが、それまでだからね…。まぁ、妹みたいなものだ…。」
 「ふ~ん。ま、私は断然香織ちゃん派だけど。」
 今井がそう言うと二人から「聞いていない」とだけ返された。


 「も、もうこれ以上は話さないからね…。」
 彩はそう言うと、顔を赤らめ、拗ねた様に、テーブルから離れて行った。
 「まぁ、これ以上聞いたら色々可哀想だしね…。」
 寧々がそう言った後、今度の矛先は麻由美に向けられた…。
 「麻由美は、そう言う人、居ないの?」
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