レトロな事件簿

14章：四人の約束

#8-3

　「一から聞こう…。で、彩はどんな男がタイプなんだ？」
　まるで刑事ドラマの取り調べのワンシーンの様な風景が、旅館の一室で行われていた。
　「…。」
 彩は視線を逸らし、黙り込んでいた。
　「何も言わな　「一から聞こう…。で、彩はどんな男がタイプなんだ？」
　まるで刑事ドラマの取り調べのワンシーンの様な風景が、旅館の一室で行われていた。
　「…。」
 彩は視線を逸らし、黙り込んでいた。
　「何も言わないなら、またさっきの奴やるよ…。」
　おそらく擽らせの事だろう…。
　「…。」
　それでも彩は無言を貫いた…。まぁ、これだけの人数を目の前に、自分から好きな人を暴露するなど、只の拷問にすぎない…。
　「よし、言わないなら…。」
　「待ちなさい…。ここはもっと慎重に炙り出さないと…。」
　立ち上がり、腕を慣らし始めた寧々を、麗子さんが制した。
　「…任せますよ…。」
　寧々が後ろに下がり、麗子さんが彩の前に座った。
　「…私もね、学生の頃同じ学校に、当然好きな人の一人や二人は居た物ねぇ…。最初の頃は、私も内に秘めて置くものだと思ってた…。」
　これは、自分の歴史を語って同情を誘う作戦か…。これで彩が動くとは思えないが…。ひょっとしたら…。
　「でも、ある時、友だちにも言えない思いを、本人に伝えられるのか？って思って、友だちにも色々聞いて貰った。そして、玉砕覚悟で、夏の終わり頃に本人に直接伝えた…。結局駄目だったけど、言って後悔はなかったなぁ…。だから話してみない？私たちは別に冷やかしたりしないから…。」
　これはいい方向に進みそうな雰囲気だった…が…。
　「麗子さん…あなた中高一貫して、女子校でしょ…。大学も被服科だから、男性経験殆どないって、この間愚痴ってたでしょ…。」
　麻由美のまさかのツッコミに、本人はこうっ答えた。
　「ちっ、ばれちゃぁしょうがないわね…。そうよ！男性経験なんて、社会人になるまで殆どありませんでした！それが何だって言うのよ！私だってね！好きで女子校に通ってたわけじゃないのよ！たまたま家の近くにあるのが、そこしかなかっただけなのに…。私だって、カッコイイ男性とか、優しい大人の男性と付き合ってみたいのよ…。」
　次第に涙声に変わり、泣きながら蹲り始めた…。それより、よくもまぁ妄想だけであそこまで話せたものだ…。
　「ま、まぁ私も殆ど似た様な境遇だから、麗子さんだけじゃないのは確かです…。」
　私が彼女の背中を摩ると、泣きながら私に抱きついてきた。
　チラリとみると、さっきまで彼女が座っていた辺りには既に缶ビール（500ml）が3本転がっていた…。
　暫くそれを慰めていると、三枝さんに引き離された。
　そこでようやく、彩が重い口を開いた。
　「ま、まぁ、好きなタイプくらいなら…
話してもいい…かも…。」
　その言葉を聞き、私たちは耳を傾けた…。
　「え、えっと…何と言うか、優しい人が好き…かなぁ？ただ優しいんじゃなくて、何と言うか…包み込んでくれる様な優しさかな…。」
　彩は顔を赤らめつつ、髪を弄りながら更に続けた。
　「私は昔から、他人の温かさはあまり知らないから、そう言う優しさを感じると、何と言うか…ドキッとするときがある…かも…。」
　最後首を傾げた。
　「へぇ…。確かに、顔よりも、優しい所が見えた所にトキメクときあるよね。」
　三枝さんがそう言った。だが、私の知り合いに、そう言った人居ただろうか…。そう思い、少し考え込んだ…。だが、その情報だけでは、全然思いつかない…。もう少しヒントが欲しい…。
　「それ以外には？」
　「ん～。男らしい人かな…。運動神経も良くて、力もある人とか？」
　優しくて運動神経が良い人…。
　「「あ…」」
　私と同時に声を上げたのは、麻由美だった…。
　「…何…？」
　寧々と他の女性陣達がこちらに視線を寄越した。当然彩は、何かを察したのか、睨むようにこちらを見ていた。
　「い、いや、ただちょっと、ば、バイトの事で思い出したことがあって…。」
　「私も、明日の仕事で気になる事があって…。」
　「ふ～ん。」
　他の女性陣達はそう言うと、彩の方に視線を戻した。
　（彩の好きな人って、もしかして…。）
　麻由美がそう耳打ちしてきた…。
　（さぁ…。でも、私の知る限りあの人しかいないのよね…。）
いなら、またさっきの奴やるよ…。」
　おそらく擽らせの事だろう…。
　「…。」
　それでも彩は無言を貫いた…。まぁ、これだけの人数を目の前に、自分から好きな人を暴露するなど、只の拷問にすぎない…。
　「よし、言わないなら…。」
　「待ちなさい…。ここはもっと慎重に炙り出さないと…。」
　立ち上がり、腕を慣らし始めた寧々を、麗華さんが制した。
　「…任せますよ…。」
　寧々が後ろに下がり、麗華さんが彩の前に座った。
　「…私もね、学生の頃同じ学校に、当然好きな人の一人や二人は居た物ねぇ…。最初の頃は、私も内に秘めて置くものだと思ってた…。」
　これは、自分の歴史を語って同情を誘う作戦か…。これで彩が動くとは思えないが…。ひょっとしたら…。
　「でも、ある時、友だちにも言えない思いを、本人に伝えられるのか？って思って、友だちにも色々聞いて貰った。そして、玉砕覚悟で、夏の終わり頃に本人に直接伝えた…。結局駄目だったけど、言って後悔はなかったなぁ…。だから話してみない？私たちは別に冷やかしたりしないから…。」
　これはいい方向に進みそうな雰囲気だった…が…。
　「麗華さん…あなた中高一貫して、女子校でしょ…。大学も被服科だから、男性経験殆どないって、この間愚痴ってたでしょ…。」
　麻由美のまさかのツッコミに、本人はこうっ答えた。
　「ちっ、ばれちゃぁしょうがないわね…。そうよ！男性経験なんて、社会人になるまで殆どありませんでした！それが何だって言うのよ！私だってね！好きで女子校に通ってたわけじゃないのよ！たまたま家の近くにあるのが、そこしかなかっただけなのに…。私だって、カッコイイ男性とか、優しい大人の男性と付き合ってみたいのよ…。」
　次第に涙声に変わり、泣きながら蹲り始めた…。それより、よくもまぁ妄想だけであそこまで話せたものだ…。
　「ま、まぁ私も殆ど似た様な境遇だから、麗華さんだけじゃないのは確かです…。」
　私が彼女の背中を摩ると、泣きながら私に抱きついてきた。
　チラリとみると、さっきまで彼女が座っていた辺りには既に缶ビール（500ml）が3本転がっていた…。
　暫くそれを慰めていると、三枝さんに引き離された。
　そこでようやく、彩が重い口を開いた。
　「ま、まぁ、好きなタイプくらいなら…
話してもいい…かも…。」
　その言葉を聞き、私たちは耳を傾けた…。
　「え、えっと…何と言うか、優しい人が好き…かなぁ？ただ優しいんじゃなくて、何と言うか…包み込んでくれる様な優しさかな…。」
　彩は顔を赤らめつつ、髪を弄りながら更に続けた。
　「私は昔から、他人の温かさはあまり知らないから、そう言う優しさを感じると、何と言うか…ドキッとするときがある…かも…。」
　最後首を傾げた。
　「へぇ…。確かに、顔よりも、優しい所が見えた所にトキメクときあるよね。」
　三枝さんがそう言った。だが、私の知り合いに、そう言った人居ただろうか…。そう思い、少し考え込んだ…。だが、その情報だけでは、全然思いつかない…。もう少しヒントが欲しい…。
　「それ以外には？」
　「ん～。男らしい人かな…。運動神経も良くて、力もある人とか？」
　優しくて運動神経が良い人…。
　「「あ…」」
　私と同時に声を上げたのは、麻由美だった…。
　「…何…？」
　寧々と他の女性陣達がこちらに視線を寄越した。当然彩は、何かを察したのか、睨むようにこちらを見ていた。
　「い、いや、ただちょっと、ば、バイトの事で思い出したことがあって…。」
　「私も、明日の仕事で気になる事があって…。」
　「ふ～ん。」
　他の女性陣達はそう言うと、彩の方に視線を戻した。
　（彩の好きな人って、もしかして…。）
　麻由美がそう耳打ちしてきた…。
　（さぁ…。でも、私の知る限りあの人しかいないのよね…。）