250 / 309
14章:四人の約束
#6-3
しおりを挟む
「何だ…。知ってるのか…。」
線香花火には、燃え方によって、花や植物の形に見立てて名前を付けられている。
火を付けられたばかりの丸い状態の火種は、まだ花開く前の“蕾”。
花弁が開き始め、ちりちりとした状態が、“牡丹”。
開花し、か細い火花が勢いよく散る“松葉”。
角が取れ、どっしりとした太い火花が、垂れ下がる柳の枝に見える事から、“柳”。
そして、咲き終え、火花が、一本、また一本と減っていき、最後には、枝分かれすることなく、一本の火花が伸びる様は、まさしく、菊の花の様な事から、“散菊”。
彩がそう説明した後、更に続けた。
「日本の文化や風習には、“何かを、何かで見立てる”という技法が、昔から取り入れられています。いい例だと、日本庭園なんかが、そうですね。枯山水や露地を利用して、色々な風景を、あたかもそうであるかの様に見立てているのが、そうですね。
「おっちゃん?」
立花さんが、首を傾げた。
「彩の叔父さんで、甘味処“甘王”の店主。彩はそこで、手伝いしながら暮らします。」
彩の代わりに私がそう答えた。すると、広瀬さんが反応した。
「ってことは、アンタ、嘉さんの姪か何かって事かい?」
「え、えぇ。というより、広瀬さん、おっちゃんと知り合い何ですか?」
「昔ちょっとした交流会的なので、一緒になってな…。そっか…。あの人にも、こんな可愛いお嬢ちゃんが居たのか…。嘉さん、元気にしてるかい?」
「えぇ。最近は忙しい時以外は、寝てばっかりだけど…。」
「ははは。あの人らしい…。最近は取材が入ったって聞いたけど…。」
広瀬さんが、料理以外で、こんなに生き生きとしている所を見るのは、何気に初めてかもしれない…。それに、彩の方も、楽しそうだ…。久々に、自分の店の話をされて、おそらく嬉しいのだろう…。
「妬きそう?」
寧々がこっそり、耳打ちしてきた。
「うん…。まぁ…。」
「え?」
「あ、いや、彩の方ね。あんなに楽しそうなの、サマーダイニングの時以来だなぁと思って…。」
「……あぁ、なるほど…。」
今の間は何だったのか…。少し気になるところではあるが、無視することにしよう…。
「へぇ、びっくり。甘王の店主の身内と、こんな形で会えるなんて、思いもしなかった。こりゃ、お嬢だけが、格式高いってことは、なさそうだね…。」
流石の立花さんも、驚いた様子だった。
「そう言えば、寧々ちゃんは、何処でバイトしてるの?」
興味を持ったのか、立花さんが、寧々に訊ねた。
線香花火には、燃え方によって、花や植物の形に見立てて名前を付けられている。
火を付けられたばかりの丸い状態の火種は、まだ花開く前の“蕾”。
花弁が開き始め、ちりちりとした状態が、“牡丹”。
開花し、か細い火花が勢いよく散る“松葉”。
角が取れ、どっしりとした太い火花が、垂れ下がる柳の枝に見える事から、“柳”。
そして、咲き終え、火花が、一本、また一本と減っていき、最後には、枝分かれすることなく、一本の火花が伸びる様は、まさしく、菊の花の様な事から、“散菊”。
彩がそう説明した後、更に続けた。
「日本の文化や風習には、“何かを、何かで見立てる”という技法が、昔から取り入れられています。いい例だと、日本庭園なんかが、そうですね。枯山水や露地を利用して、色々な風景を、あたかもそうであるかの様に見立てているのが、そうですね。
「おっちゃん?」
立花さんが、首を傾げた。
「彩の叔父さんで、甘味処“甘王”の店主。彩はそこで、手伝いしながら暮らします。」
彩の代わりに私がそう答えた。すると、広瀬さんが反応した。
「ってことは、アンタ、嘉さんの姪か何かって事かい?」
「え、えぇ。というより、広瀬さん、おっちゃんと知り合い何ですか?」
「昔ちょっとした交流会的なので、一緒になってな…。そっか…。あの人にも、こんな可愛いお嬢ちゃんが居たのか…。嘉さん、元気にしてるかい?」
「えぇ。最近は忙しい時以外は、寝てばっかりだけど…。」
「ははは。あの人らしい…。最近は取材が入ったって聞いたけど…。」
広瀬さんが、料理以外で、こんなに生き生きとしている所を見るのは、何気に初めてかもしれない…。それに、彩の方も、楽しそうだ…。久々に、自分の店の話をされて、おそらく嬉しいのだろう…。
「妬きそう?」
寧々がこっそり、耳打ちしてきた。
「うん…。まぁ…。」
「え?」
「あ、いや、彩の方ね。あんなに楽しそうなの、サマーダイニングの時以来だなぁと思って…。」
「……あぁ、なるほど…。」
今の間は何だったのか…。少し気になるところではあるが、無視することにしよう…。
「へぇ、びっくり。甘王の店主の身内と、こんな形で会えるなんて、思いもしなかった。こりゃ、お嬢だけが、格式高いってことは、なさそうだね…。」
流石の立花さんも、驚いた様子だった。
「そう言えば、寧々ちゃんは、何処でバイトしてるの?」
興味を持ったのか、立花さんが、寧々に訊ねた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
依頼人の悲願〜過去と未来を覗きその謎を解き明かします〜
アリス
ミステリー
人にはどうしても叶えたい悲願がある。
ここはそんな人の悲願を叶える場所。
過去を覗き、事件、宝探し、人探し何でもこなすカガチ。
未来を視て事件を未然に防ぐことができるユリ。
圧倒的な身体能力と頭脳を持つロゼ。
三人の店員が依頼人の悲願を叶える為、自らの悲願を達成する為、今日も黒い彼岸花を白く染める。
わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に
川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。
もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。
ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。
なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。
リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。
主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。
アルファポリスで書籍化されるには
日下奈緒
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで作品を発表してから、1年。
最初は、見よう見まねで作品を発表していたけれど、最近は楽しくなってきました。
あー、書籍化されたい。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
T.M.C ~TwoManCell 【帰結】編
sorarion914
ミステリー
「転生」しない。
「異世界」行かない。
「ダンジョン」潜らない。
「チート」存在しない。
ちょっぴり不思議だけど、ちゃんとリアルな世界に足をついて生きてる。
そんな人達の話が読んでみたい――という、そこの変わった貴方。
いらっしゃいませ。
お待ちしておりました……(笑)
注・本作品はフィクションです。作中に登場する人物及び組織等は実在する物とは異なります。あらかじめご了承下さい。
駅のホームから落ちて死んだ男の死をキッカケに、出会った二人の男。野崎は、刑事として仕事に追われ、気が付けば結婚15年。子供は出来ず、妻との仲も冷え切っていた。そんなある日、野崎は大学時代の恩師から、不思議な力を持つ宇佐美という男を紹介される。誰にも心を開かず、つかみどころの無い宇佐美に初めは戸惑う野崎だが、やがて彼が持つ不思議な力に翻弄され、それまでの人生観は徐々に崩れていく。対する宇佐美もまた、自分とは真逆の生き方をしている野崎に劣等感を抱きながらも、その真っすぐな気持ちと温かさに、少しずつ心を開いていく。
それぞれの人生の節目に訪れた出会い。
偶然のように見える出会いも、実はすべて決まっていたこと。出会うべくして出会ったのだとしたら…あなたはそれを運命と呼びますか?
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる