248 / 309
14章:四人の約束
#6-2
しおりを挟む
そう言えば麻由美は、果物が大好物だった。だから、こういう話には、必ず入って来ては、熱く語ることが多い。
「流石お嬢。熱く語るね…。私は、酸っぱい物が苦手で…。」
立花さんのその言葉に、麻由美が反論する。
「その酸っぱいのが良いんじゃないですか。甘いだけだと、胸やけしちゃうし、ジャムと何ら変わらなくなる。それも、それで美味しいけど、やっぱり、酸っぱさもあっての果物だと思うから、そこは譲れないね。それに、ビタミンも高いし―――。」
更に熱弁する、彼女の様子に、私と広瀬さんは顔を見合わせ、肩を竦めた。
「私は、甘ければなんでも良いけど…。」
彩が、そう言った。
「そ、それより、花火しようよ!蝋燭も持ってきたし。」
立花さんが、思い出したかのように、そう言った。麻由美は少し不服そうだったが、持ってきた蚊取り線香を近くのベンチに置いた。
「広瀬さん、火点けてもらって良いですか?」
「はいよ。」
蚊取り線香の先端に、火が灯ると、例の独特な匂いが漂った。
「この匂い嗅ぐと、夏って感じがするねぇ…。」
「うん…。ばあちゃんを思い出すよ…。」
立花さんのその言葉に、寧々が懐かしむ様に応えた。
「取り敢えず一本ずつ、やってみますか。」
「よし、最初に落としたやつが、全員分の飲み物奢りな。」
「え?」
予想だにしていなかったのか、彩がそう言葉を漏らした。
「当然!今回は負けないからね。」
「お前が俺に勝ったところ、見たことないんだがなぁ…。」
立花さんと、広瀬さんがそう言い合った。どうやら、私の知らない所で、二人はそうやってゲームをしているらしかった。
「全員で6人ってことは、1000円は飛ぶって事か…。」
「麻由美はともかく、バイト学生の私たち三人には、厳しい話だよ…。」
寧々が私と彩の肩に腕を回し、そう言った。それに、従い私と彩は、2、3頷いた。
「ちょっと!私もアンタたちと同じくらいしか貰ってないんだけど!勝手に、高給取りにしないでよ!」
4人とも“バイト”ではある為、時給は、たいして変わらない。入っているシフトの数も、大差がない。だから、誰かが吐出して、高給取りという訳はない。
まぁ、街の飲食店での仕事と、実家とはいえ、高級旅館での仕事では、かなりイメージが違って見えるだろう…。増してや、その旅館の他の従業員からは、“お嬢”ともいわれているのも、その要因の一つだろう…。
「まぁまぁ、お嬢。ここはひとつ、真剣勝負という事で…。」
彩が、そう言い、線香花火を、一本取り出した。
「流石お嬢。熱く語るね…。私は、酸っぱい物が苦手で…。」
立花さんのその言葉に、麻由美が反論する。
「その酸っぱいのが良いんじゃないですか。甘いだけだと、胸やけしちゃうし、ジャムと何ら変わらなくなる。それも、それで美味しいけど、やっぱり、酸っぱさもあっての果物だと思うから、そこは譲れないね。それに、ビタミンも高いし―――。」
更に熱弁する、彼女の様子に、私と広瀬さんは顔を見合わせ、肩を竦めた。
「私は、甘ければなんでも良いけど…。」
彩が、そう言った。
「そ、それより、花火しようよ!蝋燭も持ってきたし。」
立花さんが、思い出したかのように、そう言った。麻由美は少し不服そうだったが、持ってきた蚊取り線香を近くのベンチに置いた。
「広瀬さん、火点けてもらって良いですか?」
「はいよ。」
蚊取り線香の先端に、火が灯ると、例の独特な匂いが漂った。
「この匂い嗅ぐと、夏って感じがするねぇ…。」
「うん…。ばあちゃんを思い出すよ…。」
立花さんのその言葉に、寧々が懐かしむ様に応えた。
「取り敢えず一本ずつ、やってみますか。」
「よし、最初に落としたやつが、全員分の飲み物奢りな。」
「え?」
予想だにしていなかったのか、彩がそう言葉を漏らした。
「当然!今回は負けないからね。」
「お前が俺に勝ったところ、見たことないんだがなぁ…。」
立花さんと、広瀬さんがそう言い合った。どうやら、私の知らない所で、二人はそうやってゲームをしているらしかった。
「全員で6人ってことは、1000円は飛ぶって事か…。」
「麻由美はともかく、バイト学生の私たち三人には、厳しい話だよ…。」
寧々が私と彩の肩に腕を回し、そう言った。それに、従い私と彩は、2、3頷いた。
「ちょっと!私もアンタたちと同じくらいしか貰ってないんだけど!勝手に、高給取りにしないでよ!」
4人とも“バイト”ではある為、時給は、たいして変わらない。入っているシフトの数も、大差がない。だから、誰かが吐出して、高給取りという訳はない。
まぁ、街の飲食店での仕事と、実家とはいえ、高級旅館での仕事では、かなりイメージが違って見えるだろう…。増してや、その旅館の他の従業員からは、“お嬢”ともいわれているのも、その要因の一つだろう…。
「まぁまぁ、お嬢。ここはひとつ、真剣勝負という事で…。」
彩が、そう言い、線香花火を、一本取り出した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
警狼ゲーム
如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。
警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。
virtual lover
空川億里
ミステリー
人気アイドルグループの不人気メンバーのユメカのファンが集まるオフ会に今年30歳になる名願愛斗(みょうがん まなと)が参加する。
が、その会を通じて知り合った人物が殺され、警察はユメカを逮捕する。
主人公達はユメカの無実を信じ、真犯人を捕まえようとするのだが……。
今夜も琥珀亭で
深水千世
ライト文芸
【第15回恋愛小説大賞奨励賞受賞作品】
北海道にあるバー『琥珀亭』でひょんなことから働きだした尊。 常連客のお凛さん、先輩バーテンダーの暁、そして美しくもどこか謎めいた店長の真輝たちと出会うことで、彼の人生が変わりだす。
第15回恋愛小説大賞奨励賞を受賞しました。ありがとうございます。
記念に番外編を追加しますのでお楽しみいただければ幸いです。
琥珀色の日々
深水千世
ライト文芸
北海道のバー『琥珀亭』に毎晩通う常連客・お凛さん。
彼女と琥珀亭に集う人々とのひとときの物語。
『今夜も琥珀亭で』の続編となりますが、今作だけでもお楽しみいただけます。
カクヨムと小説家になろうでも公開中です。

幻想×現実の一話完結ミステリー短編集
緑川 つきあかり
ミステリー
全て一話完結です。
黒猫と白猫と?神の願い
キャッチコピー
「ニャァー」「何度も言うようだけれど、私は大きな猫じゃないよ」
あらすじ
不変なき日常を生きる三つの存在。
白猫と黒猫と?神だけが在る空間。
其々の持つ願望が世界を変える。
岐天駅
キャッチコピー
大抵の日本人が此処へ来る
あらすじ
人はその選択に後悔する。駅に着けば誰であろうと有無を言わさず絶望させ、どの道を選んだとしても決して正解は無いと示した。そう、絶対に間違いへと進むのが人間なのだから。
気付け社
キャッチコピー
ふと、通った寄り道が俺を変えた。
あらすじ
田舎町で平穏を貪る青年が夏休みの真夜中の買い物帰りにふと通り道の神社を訪れ、不思議な巫女と出会う。だが、妙に会話が合わず、夜明けを迎えて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる