レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#6-2

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 そう言えば麻由美は、果物が大好物だった。だから、こういう話には、必ず入って来ては、熱く語ることが多い。
 「流石お嬢。熱く語るね…。私は、酸っぱい物が苦手で…。」
 立花さんのその言葉に、麻由美が反論する。
 「その酸っぱいのが良いんじゃないですか。甘いだけだと、胸やけしちゃうし、ジャムと何ら変わらなくなる。それも、それで美味しいけど、やっぱり、酸っぱさもあっての果物だと思うから、そこは譲れないね。それに、ビタミンも高いし―――。」
 更に熱弁する、彼女の様子に、私と広瀬さんは顔を見合わせ、肩を竦めた。
 「私は、甘ければなんでも良いけど…。」
 彩が、そう言った。

 「そ、それより、花火しようよ!蝋燭も持ってきたし。」
 立花さんが、思い出したかのように、そう言った。麻由美は少し不服そうだったが、持ってきた蚊取り線香を近くのベンチに置いた。
 「広瀬さん、火点けてもらって良いですか?」
 「はいよ。」
 蚊取り線香の先端に、火が灯ると、例の独特な匂いが漂った。
 「この匂い嗅ぐと、夏って感じがするねぇ…。」
 「うん…。ばあちゃんを思い出すよ…。」
 立花さんのその言葉に、寧々が懐かしむ様に応えた。
 「取り敢えず一本ずつ、やってみますか。」
 「よし、最初に落としたやつが、全員分の飲み物奢りな。」
 「え?」
 予想だにしていなかったのか、彩がそう言葉を漏らした。
 「当然!今回は負けないからね。」
 「お前が俺に勝ったところ、見たことないんだがなぁ…。」
 立花さんと、広瀬さんがそう言い合った。どうやら、私の知らない所で、二人はそうやってゲームをしているらしかった。
 「全員で6人ってことは、1000円は飛ぶって事か…。」
 「麻由美はともかく、バイト学生の私たち三人には、厳しい話だよ…。」
 寧々が私と彩の肩に腕を回し、そう言った。それに、従い私と彩は、2、3頷いた。
 「ちょっと!私もアンタたちと同じくらいしか貰ってないんだけど!勝手に、高給取りにしないでよ!」
 4人とも“バイト”ではある為、時給は、たいして変わらない。入っているシフトの数も、大差がない。だから、誰かが吐出して、高給取りという訳はない。
 まぁ、街の飲食店での仕事と、実家とはいえ、高級旅館での仕事では、かなりイメージが違って見えるだろう…。増してや、その旅館の他の従業員からは、“お嬢”ともいわれているのも、その要因の一つだろう…。
 「まぁまぁ、お嬢。ここはひとつ、真剣勝負という事で…。」
 彩が、そう言い、線香花火を、一本取り出した。
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