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14章:四人の約束
#5-8
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一階は、かなり静かで、虫の声だけが、中庭から響いていた。私は、従業員用の休憩室の自販機から、麦茶を2本買い、階段の方へ向かった。
その時、中庭の方から、オイルライターの蓋を閉じる金属音が、鳴り響いた。そのすぐ後に、風に乗り、コーヒーの様な、香ばしい匂いが、私の鼻を掠めた。
その匂いを、辿るかの様に、私は中庭に向かった。
そこには、煙草を銜えながら、スマホを弄っている、広瀬さんの姿があった。
「……ん?」
彼も私の気配に気が付いたのか、スマホの画面から、こちらの方に目を向けた。
「こんな夜更けに、お散歩ですか?」
「いえ…。少し喉が渇いて…。」
「そうかい…。この時期だ、水分には、充分に気を付けな?」
そう言うと彼は、手に持っていたスマホをポケットに仕舞い、今度は別のポケットから、何かを取り出した。
「さっき、ここに来る途中、客のばあさんに貰ってな?お前さんも、やってみるかい?」
そう言い、取り出したものを、私に手渡した。それは、袋詰めされた、線香花火だった。一袋に、十数本程入っている。それが、4袋…。
「え?この数、一人でやるつもりだったんですか?」
「バカ。ちゃんと、光と、お前さん達を呼ぶつもりだったさ。
光は、もう呼んでるから、お前さんも、お嬢たち、連れて来な?」
「分かりました。」
私は、その足で、部屋まで戻った。麻由美は、起きており、こちらも、スマホを弄っていた。
「お帰り。随分長かったね。」
「広瀬さんが、線香花火しないかだって…。」
私は、持っていた麦茶の片方を、麻由美に手渡し、そう言った。
「線香花火?」
「お客さんに貰ったらしくて、一人でするのもなんだからって…。」
「ふ~ん。香織が行くなら、私も行くよ?」
麻由美は、そう言うと、麦茶を受け取り、一口だけ、飲んだ。
「じゃぁ行こう?寧々たちも起こさなきゃ…。」
気持ちよく眠っている、彼女等を起こすのは、少し忍びなかったが、私は寧々の身体を、2・3度身体を揺すった。
「寧々、起きて。」
寧々は、意外にも、寝起きには強いらしく、直に目を覚まし、身体を伸ばすと共に、大きな欠伸をした。
「何?」
「線香花火、しない?広瀬さんが、いっぱい貰ったらしくて。」
「行く行く!」
彼女は、そう言うと、寝ていた彩を、揺らした。
「彩、起きて!」
彩の方は、寝起きには弱いらしく、目を擦りながら、漸く起きた。
「な~に~?眠いんだけど…。」
「花火だって花火。やりに行こう?」
「う~ん…行く…。」
そう呟くと、彩は手を伸ばした。それに応える様に、寧々が、持ち上げた。
その時、中庭の方から、オイルライターの蓋を閉じる金属音が、鳴り響いた。そのすぐ後に、風に乗り、コーヒーの様な、香ばしい匂いが、私の鼻を掠めた。
その匂いを、辿るかの様に、私は中庭に向かった。
そこには、煙草を銜えながら、スマホを弄っている、広瀬さんの姿があった。
「……ん?」
彼も私の気配に気が付いたのか、スマホの画面から、こちらの方に目を向けた。
「こんな夜更けに、お散歩ですか?」
「いえ…。少し喉が渇いて…。」
「そうかい…。この時期だ、水分には、充分に気を付けな?」
そう言うと彼は、手に持っていたスマホをポケットに仕舞い、今度は別のポケットから、何かを取り出した。
「さっき、ここに来る途中、客のばあさんに貰ってな?お前さんも、やってみるかい?」
そう言い、取り出したものを、私に手渡した。それは、袋詰めされた、線香花火だった。一袋に、十数本程入っている。それが、4袋…。
「え?この数、一人でやるつもりだったんですか?」
「バカ。ちゃんと、光と、お前さん達を呼ぶつもりだったさ。
光は、もう呼んでるから、お前さんも、お嬢たち、連れて来な?」
「分かりました。」
私は、その足で、部屋まで戻った。麻由美は、起きており、こちらも、スマホを弄っていた。
「お帰り。随分長かったね。」
「広瀬さんが、線香花火しないかだって…。」
私は、持っていた麦茶の片方を、麻由美に手渡し、そう言った。
「線香花火?」
「お客さんに貰ったらしくて、一人でするのもなんだからって…。」
「ふ~ん。香織が行くなら、私も行くよ?」
麻由美は、そう言うと、麦茶を受け取り、一口だけ、飲んだ。
「じゃぁ行こう?寧々たちも起こさなきゃ…。」
気持ちよく眠っている、彼女等を起こすのは、少し忍びなかったが、私は寧々の身体を、2・3度身体を揺すった。
「寧々、起きて。」
寧々は、意外にも、寝起きには強いらしく、直に目を覚まし、身体を伸ばすと共に、大きな欠伸をした。
「何?」
「線香花火、しない?広瀬さんが、いっぱい貰ったらしくて。」
「行く行く!」
彼女は、そう言うと、寝ていた彩を、揺らした。
「彩、起きて!」
彩の方は、寝起きには弱いらしく、目を擦りながら、漸く起きた。
「な~に~?眠いんだけど…。」
「花火だって花火。やりに行こう?」
「う~ん…行く…。」
そう呟くと、彩は手を伸ばした。それに応える様に、寧々が、持ち上げた。
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