レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#5-7

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 それから、しばらくの間、私たちは、雑談をした。本当に他愛もない話だ。コーヒーの銘柄だとか、音楽がどうのこうのだとか、足が攣りやすりだとか…。そんな話を、かなりの時間、彼女等と話した。
 浅い話もあれば、奥深い話もあり、話題については、本当に飽きなかった。むしろ、こんな時間が、とても愛おしかった…。
 そして、寧々と彩は疲れたのか、布団の上に、横になり、言葉が虚ろになり、とうとう寝息を立て始めた。麻由美は、こういう環境に慣れているのか、眠気もないような顔で、二人にタオルケットをかけていた。
 私はというと、逆に慣れていない所為か、目が冴えて、眠気に到達するのはかなりの時間を要することになるだろう…。
 「どう?楽しいでしょ?こういうの。」
 麻由美は、そういうと、私の座っていたソファの向かい側に、腰を下ろした。
 「うん…。こういう事、今まで経験したことなかったから、ちょっと新鮮…。」
 私は、友人とどこかに泊りがけで、過ごしたことなんてなかった…。修学旅行なんて言ったことがないし、友人と呼べる存在も、今までは居なかった。
 こんな経験、初めてだった…。
 「そう。私はちょっと悔しかったなぁ…。」
 「え?」
 麻由美の言葉に、思わず聞き返してしまった。
 「この3人の中で、香織の事をよく知っているのは、私だけだと思ってた…。それだけ、結構長い付き合いだから、それが当然だと思ってた。
 だけど、アンタは知らない間に、この二人を、本音を言い合えるほどの仲にした。それどころか、アンタの過去を知った上で、“宮本香織”という人を、理解しようとしてる…。それが、ちょっと悔しくてね…。」
 そういうと、彼女は、真剣な面持ちで、私の顔を見つめた。
 「私は、絶対に香織を裏切らない。これだけは、約束させて。
 彩でも寧々でも、三枝さんでも、今井さんでも、九条さんでもなく、私が、宮本香織の親友第一号だから。これだけは、絶対譲らないからね。」
 力強く言い放ったその言葉は、どこか、覚悟のようなものも、感じ取れる…。そんな重い言葉は、私にはどうしても耐えきれなかった…。
 「ありがとう…。ちょっと、喉渇いたから、飲み物、買ってくるね…。」
 私は、それだけ言い残し、部屋を出た。
 嬉しかった。唯々、嬉しかった。今まで、どうにかこうにか、独りで生きてきた私にとっては、荷が重すぎるほどの、言葉だ…。それが嬉しくて、嬉しくて溜まらなかった…。
 気が付けば、西棟の一階まで下りてきてしまっていた。
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