レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#5-6

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 麻由美の言葉で、寧々は彩を離した。彩は怯えた様な表情で、茫然としていた。
暫く、静かな空気が流れた後、麻由美が口を開いた。
 「で?香織の答えは?ここまで二人とも、香織の為に悩んで、動いてくれた。それに、答えなきゃならないんじゃない?」
 答え。そう言われると、余りピンとは来なかった。何しろ、彩は、私の事で、ずっと独りで悩ませてしまっていた。どうしようもない、“私”ではなく、どうにかしたいが為に…。
 それに対して寧々は、私の性格や感情を、何もかも汲んでくれて、ここまで汚れ役を買ってくれた…。昔の私からすれば、かなりお節介だと、邪険に思ったのかもしれないが、今は何故か違う…。
 嬉しいと思うのと、少しだけ寂しい気持ちが表立っている。
 だから、自分が今、どんな感情なのかが、全く理解できない…。
 ただ、一つだけ言える言葉は、決まっていた。
 彩の肩に手を掛け、こう伝えた。
 「ごめんね…彩。私だけ、お姉さんの事知ってたのに、何も力になれなくて…。本当にごめん…。」
 独りで耐える辛さは、痛いほど知っている。どれだけ、心細いかも知っている。だからこそ、彼女が悩んでいた事は、私が理解してあげなければならない…。それが、私の出来る事なのだと思う…。
 「さっきも言った通り、私は何も気にしないし、そんな事で彩を嫌ったりなんかしない…。寧ろ嬉しかった。私の事で、そこまで悩んでくれていた人は、今までいなかったから…。ありがとう、彩。」
 「香織ちゃん…。」
 彩はそう呟くと、ぐしゃぐしゃにした顔で、抱きついてきた。普段なら、こういう事されるのに慣れていないから、解こうとするのだが、今回ばかしは、それを受け入れた。
 彩は何度も謝り、私はそれにただ頷く様に、応えた。
 それを見ていた麻由美と寧々は、何も言わずただただ、見守ってくれていた。

 「寧々も、麻由美ちゃんもごめんなさい。」
 顔を上げたくないのか、私の腕の中で、そう言った。
 「…私も引っ叩いたりなんかして、悪かったよ…。でも、こうでもしなきゃ、頭のいいアンタを、目覚めさせることができないと思って…。」
 寧々は、はにかみながら、更に続けた。
 「バンドやってるときも、アンタの本調子の音聞かないと、私も調子でないんだよね…。だからさ、こういったのは、もうナシにしよ?」
 「そうね。そうじゃないと、折角の楽しい大学生活が、つまらなくなっちゃうからね。」
 麻由美も寧々の意見に、賛同した。かくいう、私もそうだ。もう、私の為、誰かの為に、独りで悩むのは、辞めたい…。折角、親友というものが、出来たのだから、これを利用しなのは、流石に惜しい…。
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