レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#5-4

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 いつもなら、そんな事をされたら、どうにか彼女を引っ張り上げるのだろうが、今回ばかしは、そんな気にはなれなかった。

 “混ざりたい”

 その気持ちの方が、大きかった。

 今まで、本当の友人というのは、麻由美くらいしかできた事がない。寧々と彩と知り合ったのは、大学に入ってからだ。だから、こんな気分になるのは初めて…。いや、多分今まで、考えない様にしていただけなのかもしれない…。
 誰かと仲良くなれると、思うだけ無駄な日々を、押し入れの中で過ごしてきた。自然と、他人と関わることを、私自身が、拒否していたのかもしれない…。

 「助け…て…香織ちゃん…。」
 私は、彩の手首を掴み、
 「私も混ざる。」
 それだけ言って、揉みくちゃにされている、三人の輪に入った。


 それから、どのくらいの時間が経ったのかは、分からないが、私と寧々が部屋に戻ってきてから、そんなに時間は経っていないと思う。
 流石に笑い疲れた私たち4人は布団の上で、息を切らし、俯せになったり、仰向けになったりしていた。
 人前で、こんなに笑ったのは、初めてかもしれない…。いや、そもそも、こんなに楽しいと思ったのは、凄く久々だ…。最後はいつだったかは、忘れてしまったが…。
 「香織に聞いた。お姉さんの事。」
 まだ少し息が上がっている寧々が、そう言った。
 「………。」
 彩は俯せになったまま、無言だった。
 「言っておくけど、私が言えって香織に脅し掛けて、話させたから。」
 「脅しって…。」
 すかさず、麻由美がツッコんだ。だが、彼女も、珍しく疲れているのか、ツッコミにいつものキレが無かった。
 「別に良いよ…。別に隠していた訳じゃないし…。ただ、言う機会が無かったから…。」
 「じゃぁ、ここで、全て話して。」
 寧々が起き上がり、未だに布団に顔を埋めている彩にそう言った。
 「隠している訳じゃないんなら、今話して。さっき香織に言ったけど、もう私だけ知らないっていうのは絶対イヤ!
だから話して。そうじゃないと、もっと擽るから…。麻由美が!」
 「結局私に振るのか!」
 何だ。全然いつものキレがあるじゃないか…。
 「香織も!心の中とは言え、勝手に実況するんじゃないよ!」
 「…何の事?」


 「そうだね。こういう時だから、ちゃんと話そうかな…。」
 ようやく、重い腰を上げ、布団の上に座った。
 「とはいっても、お姉の話は、大体香織ちゃんに聞いた通りで間違いないよ…。
 問題は、この間の、あの時…。」
 「サマーダイニングの時でしょ?」
 寧々の問いに、彩は小さく頷いた。
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