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14章:四人の約束
#4-6
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“麻由美、助けて…。”
そんな声が聞こえた気がして、身体を起こした。どうやら、スマホを触りながら、寝てしまっていたらしい。時刻は18時を過ぎており、分厚い雨雲の所為も相まって、部屋の中は、大分暗くなっていた。
暗闇の中私は、身体を伸ばした。
「麻由美、助けて…。」
暗闇の中から、掠れる様な、香織の声が響いた。
「え?」
眠っていたとはいえ、こんな暗闇に、流石に目は完全には、慣れておらず、薄目で彼女が寝ていた辺りを探した。すると、三枝さんから、何とか引き剥がれようと、藻掻いている彼女の姿があった。
「ちょ、ちょっと…離して下さい…。」
「ダメ~。」
必死そうな、香織の声とは裏腹に、少しふざけた様な、三枝さんの声が聞こえた。
取り敢えず、私は部屋の明かりを点けた。
「三枝さん、その辺にしておかないと…。」
「お嬢も混ざる?香織ちゃん、抱き心地良いよ?」
確かに、細身ではあるが、所々しっかりと肉付きは良くて………って、そんな事を思っている場合ではない…。
「色々とマズいですよ…。兎に角、香織を放して下さい。」
私も、何とか引き離そうと試みたが、三枝さんは、全く離れる気配が無かった。
香織の方も、風邪の所為で、体力が無いのか、暫くすると、諦めた様に、大人しくなった…。
「話してくれるまで、待とうか…。」
私がそう呟くと、香織もそれに応える様に、頷いた。
それから10分後、三枝さんは、約束通り、香織を手放し、思い出したかのように、自分の布団に潜り、“もうひと眠り”とだけ言い残し、寝息を立て始めた。
香織はというと、ショックだったらしく、自分の布団の中に、蹲った。
「だ、大丈夫?」
彼女は、無言のまま、身体を横に揺すった。どうやら、“ダメ”らしかった。
「ちょ、ちょっと待ってて。」
私は部屋を出て、丁度休憩ルームに居た、女性スタッフを呼び、現状を見せた。
「色々と、混沌としているわね…。」
「はい…。私じゃぁどうしようもなくて…。」
女性スタッフは、布団の前に座り、香織に向かって、話し始めた。
「香織ちゃん?大丈夫?怖かった?」
「……。」
彼女は、また無言のまま、身体を横に、揺すり、“NO”のジェスチャーをした。
「じゃぁ、私が美穂ちゃんに言っといて上げるから、何が嫌だったの?」
「…こ、怖いというか、びっくりしたというか…。気が付いたら…あったかくて……知らない匂いがして…。兎に角、びっくりしました…。」
怯えた様な、消え入る様な声で、香織はそう答えた。
そんな声が聞こえた気がして、身体を起こした。どうやら、スマホを触りながら、寝てしまっていたらしい。時刻は18時を過ぎており、分厚い雨雲の所為も相まって、部屋の中は、大分暗くなっていた。
暗闇の中私は、身体を伸ばした。
「麻由美、助けて…。」
暗闇の中から、掠れる様な、香織の声が響いた。
「え?」
眠っていたとはいえ、こんな暗闇に、流石に目は完全には、慣れておらず、薄目で彼女が寝ていた辺りを探した。すると、三枝さんから、何とか引き剥がれようと、藻掻いている彼女の姿があった。
「ちょ、ちょっと…離して下さい…。」
「ダメ~。」
必死そうな、香織の声とは裏腹に、少しふざけた様な、三枝さんの声が聞こえた。
取り敢えず、私は部屋の明かりを点けた。
「三枝さん、その辺にしておかないと…。」
「お嬢も混ざる?香織ちゃん、抱き心地良いよ?」
確かに、細身ではあるが、所々しっかりと肉付きは良くて………って、そんな事を思っている場合ではない…。
「色々とマズいですよ…。兎に角、香織を放して下さい。」
私も、何とか引き離そうと試みたが、三枝さんは、全く離れる気配が無かった。
香織の方も、風邪の所為で、体力が無いのか、暫くすると、諦めた様に、大人しくなった…。
「話してくれるまで、待とうか…。」
私がそう呟くと、香織もそれに応える様に、頷いた。
それから10分後、三枝さんは、約束通り、香織を手放し、思い出したかのように、自分の布団に潜り、“もうひと眠り”とだけ言い残し、寝息を立て始めた。
香織はというと、ショックだったらしく、自分の布団の中に、蹲った。
「だ、大丈夫?」
彼女は、無言のまま、身体を横に揺すった。どうやら、“ダメ”らしかった。
「ちょ、ちょっと待ってて。」
私は部屋を出て、丁度休憩ルームに居た、女性スタッフを呼び、現状を見せた。
「色々と、混沌としているわね…。」
「はい…。私じゃぁどうしようもなくて…。」
女性スタッフは、布団の前に座り、香織に向かって、話し始めた。
「香織ちゃん?大丈夫?怖かった?」
「……。」
彼女は、また無言のまま、身体を横に、揺すり、“NO”のジェスチャーをした。
「じゃぁ、私が美穂ちゃんに言っといて上げるから、何が嫌だったの?」
「…こ、怖いというか、びっくりしたというか…。気が付いたら…あったかくて……知らない匂いがして…。兎に角、びっくりしました…。」
怯えた様な、消え入る様な声で、香織はそう答えた。
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