235 / 309
14章:四人の約束
#4-6
しおりを挟む
“麻由美、助けて…。”
そんな声が聞こえた気がして、身体を起こした。どうやら、スマホを触りながら、寝てしまっていたらしい。時刻は18時を過ぎており、分厚い雨雲の所為も相まって、部屋の中は、大分暗くなっていた。
暗闇の中私は、身体を伸ばした。
「麻由美、助けて…。」
暗闇の中から、掠れる様な、香織の声が響いた。
「え?」
眠っていたとはいえ、こんな暗闇に、流石に目は完全には、慣れておらず、薄目で彼女が寝ていた辺りを探した。すると、三枝さんから、何とか引き剥がれようと、藻掻いている彼女の姿があった。
「ちょ、ちょっと…離して下さい…。」
「ダメ~。」
必死そうな、香織の声とは裏腹に、少しふざけた様な、三枝さんの声が聞こえた。
取り敢えず、私は部屋の明かりを点けた。
「三枝さん、その辺にしておかないと…。」
「お嬢も混ざる?香織ちゃん、抱き心地良いよ?」
確かに、細身ではあるが、所々しっかりと肉付きは良くて………って、そんな事を思っている場合ではない…。
「色々とマズいですよ…。兎に角、香織を放して下さい。」
私も、何とか引き離そうと試みたが、三枝さんは、全く離れる気配が無かった。
香織の方も、風邪の所為で、体力が無いのか、暫くすると、諦めた様に、大人しくなった…。
「話してくれるまで、待とうか…。」
私がそう呟くと、香織もそれに応える様に、頷いた。
それから10分後、三枝さんは、約束通り、香織を手放し、思い出したかのように、自分の布団に潜り、“もうひと眠り”とだけ言い残し、寝息を立て始めた。
香織はというと、ショックだったらしく、自分の布団の中に、蹲った。
「だ、大丈夫?」
彼女は、無言のまま、身体を横に揺すった。どうやら、“ダメ”らしかった。
「ちょ、ちょっと待ってて。」
私は部屋を出て、丁度休憩ルームに居た、女性スタッフを呼び、現状を見せた。
「色々と、混沌としているわね…。」
「はい…。私じゃぁどうしようもなくて…。」
女性スタッフは、布団の前に座り、香織に向かって、話し始めた。
「香織ちゃん?大丈夫?怖かった?」
「……。」
彼女は、また無言のまま、身体を横に、揺すり、“NO”のジェスチャーをした。
「じゃぁ、私が美穂ちゃんに言っといて上げるから、何が嫌だったの?」
「…こ、怖いというか、びっくりしたというか…。気が付いたら…あったかくて……知らない匂いがして…。兎に角、びっくりしました…。」
怯えた様な、消え入る様な声で、香織はそう答えた。
そんな声が聞こえた気がして、身体を起こした。どうやら、スマホを触りながら、寝てしまっていたらしい。時刻は18時を過ぎており、分厚い雨雲の所為も相まって、部屋の中は、大分暗くなっていた。
暗闇の中私は、身体を伸ばした。
「麻由美、助けて…。」
暗闇の中から、掠れる様な、香織の声が響いた。
「え?」
眠っていたとはいえ、こんな暗闇に、流石に目は完全には、慣れておらず、薄目で彼女が寝ていた辺りを探した。すると、三枝さんから、何とか引き剥がれようと、藻掻いている彼女の姿があった。
「ちょ、ちょっと…離して下さい…。」
「ダメ~。」
必死そうな、香織の声とは裏腹に、少しふざけた様な、三枝さんの声が聞こえた。
取り敢えず、私は部屋の明かりを点けた。
「三枝さん、その辺にしておかないと…。」
「お嬢も混ざる?香織ちゃん、抱き心地良いよ?」
確かに、細身ではあるが、所々しっかりと肉付きは良くて………って、そんな事を思っている場合ではない…。
「色々とマズいですよ…。兎に角、香織を放して下さい。」
私も、何とか引き離そうと試みたが、三枝さんは、全く離れる気配が無かった。
香織の方も、風邪の所為で、体力が無いのか、暫くすると、諦めた様に、大人しくなった…。
「話してくれるまで、待とうか…。」
私がそう呟くと、香織もそれに応える様に、頷いた。
それから10分後、三枝さんは、約束通り、香織を手放し、思い出したかのように、自分の布団に潜り、“もうひと眠り”とだけ言い残し、寝息を立て始めた。
香織はというと、ショックだったらしく、自分の布団の中に、蹲った。
「だ、大丈夫?」
彼女は、無言のまま、身体を横に揺すった。どうやら、“ダメ”らしかった。
「ちょ、ちょっと待ってて。」
私は部屋を出て、丁度休憩ルームに居た、女性スタッフを呼び、現状を見せた。
「色々と、混沌としているわね…。」
「はい…。私じゃぁどうしようもなくて…。」
女性スタッフは、布団の前に座り、香織に向かって、話し始めた。
「香織ちゃん?大丈夫?怖かった?」
「……。」
彼女は、また無言のまま、身体を横に、揺すり、“NO”のジェスチャーをした。
「じゃぁ、私が美穂ちゃんに言っといて上げるから、何が嫌だったの?」
「…こ、怖いというか、びっくりしたというか…。気が付いたら…あったかくて……知らない匂いがして…。兎に角、びっくりしました…。」
怯えた様な、消え入る様な声で、香織はそう答えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
白い男1人、人間4人、ギタリスト5人
正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます
女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。
小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。


【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
短編集 【雨降る日に……】
星河琉嘩
ライト文芸
街の一角に佇む喫茶店。
その喫茶店に来る人たちの話です。
1話1話がとても短いお話になっています。
その他のお話も何か書けたら更新していきます。
【雨降る日に……】
【空の上に……】
【秋晴れの日に】
【君の隣】
【君の影】
鬼と私の約束~あやかしバーでバーメイド、はじめました~
さっぱろこ
キャラ文芸
本文の修正が終わりましたので、執筆を再開します。
第6回キャラ文芸大賞 奨励賞頂きました。
* * *
家族に疎まれ、友達もいない甘祢(あまね)は、明日から無職になる。
そんな夜に足を踏み入れた京都の路地で謎の男に襲われかけたところを不思議な少年、伊吹(いぶき)に助けられた。
人間とは少し違う不思議な匂いがすると言われ連れて行かれた先は、あやかしなどが住まう時空の京都租界を統べるアジトとなるバー「OROCHI」。伊吹は京都租界のボスだった。
OROCHIで女性バーテン、つまりバーメイドとして働くことになった甘祢は、人間界でモデルとしても働くバーテンの夜都賀(やつが)に仕事を教わることになる。
そうするうちになぜか徐々に敵対勢力との抗争に巻き込まれていき――
初めての投稿です。色々と手探りですが楽しく書いていこうと思います。
小説探偵
夕凪ヨウ
ミステリー
20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。
男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。
そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。
小説探偵、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる