レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#4-5

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 それから5分もせずに、三枝さんは、布団一式を抱えて、戻って来た。それを、香織の布団の隣に敷いた後、また部屋を出て行った。
 そして、今度は枕とアイマスク、そしてドラッグストアでも買える、風邪薬を持ってきた。
 「お嬢、これ、次に起きたときに、飲ませて下さい。一番効くやつですから。
 私はもうひと眠りするんで、それまで、絶対に起こさないで下さい。」
 「はぁ…。」
 三枝さんは、アイマスクとワイヤレス式のイヤホン付け、布団に潜った。どうやら、それが、彼女の就寝時のスタイルらしい…。寝息が、もう一つ増えると、完全に私だけ、孤立してしまった。
 流石に、ただぼーっとここに居る訳にも行かず、一旦、自室に戻り、部屋着に着替え、香織の部屋に戻った。その時間たった数分だったと思う。だが、その数分で、私がさっきまでいた部屋の風景は、少しだけ、変っていた。三枝さんが、潜っていた筈の布団は、抜け殻になっており、香織の方の布団に、忍び込み、彼女を抱きしめ、あろうことか、髪の匂いまで、嗅いでいた。
 「え?何これ…。」
 思わず、そう声が漏れた。三枝美穂。私の知る限り、そんな事をする、性格ではない…。
 普段は、ぶっきら棒な態度だが、仕事はしっかりこなすし、公私はしっかりとメリハリがある、頼れる先輩的なイメージがあったのだが…。今の彼女には、それは、微塵も感じられない。
 幸いなのかどうかは分からないが、香織は眠っており、気が付いていない様だった…。
 「香織ちゃん、お薬持ってきたよ…。って、あれ?」
 女性スタッフが戻ってきた。だが、部屋の様子を見て、少し戸惑っていた…。
 「え?美穂ちゃん、何やって…。え?もしかして、そっち系…。」
 女性スタッフは、ハッとした様に驚き、スマホを取り出した。が、それを何とか制した。
 「えっと…。取り敢えず、これ、渡して置きますね?美穂ちゃんのとは違って、こっちは解熱剤だから、これ以上、上がる様だった、こっち飲ませて下さい。」
 「ありがとうございます。取り敢えず、この事は、私たちの秘密にしましょう…。三枝さんの無意識ってことも、あるかもしれませんし…。香織本人も、まだ気が付いていないみたいなので…。」
 薬の入った袋を受け取り、そう言った。
 「そうね…。写真取れなかったのは、残念だけど…本人たちの名誉もありますからね…。」
 女性スタッフは、残念そうに、そう答え、部屋を出て行った。
 正直、居づらい感じはあったが、母の…女将さんの命令だ…。私は、ソファに腰かけ、スマホの電源を付けた。
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