レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#4-2

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 香織が解放されたのは、悲鳴が聞こえてから、約10分後の頃だった。その間、人通りが少ないとはいえ、廊下に放置しておくのも、どうかということで、私と麻由美と彩、それから、丁度通りかかった女性スタッフと、4人がかりで、私たちの部屋に二人を押し込んだ。
 解放されたばかりの香織は、何かショックを受けたのか、部屋の隅の方で、膝を抱え、座っていた。それを、先ほどの女性スタッフが、何とか慰めていた…。
 
「すみません…。取り乱してしまいました…。」
 先程、麻由美に“三枝さん”と紹介された、女性が、部屋の中央で、正座し、申し訳なさそうな顔で、そう言った。
 「“取り乱す”の範疇を軽く超えていたけど…。」
 麻由美が、そうツッコんだ。
 「お嬢、面目ないです…。香織ちゃんの匂いがしたので、つい…。」
 あんたは、犬か…。とツッコミそうになったが、何とか思いとどまった…。
 「それより、向こうは大丈夫なの?香織ちゃん、めちゃくちゃ凹んでるけど…。」
 彩の質問に、女性スタッフが、答えた。
 「香織ちゃんは、他人に抱き着かれ慣れてないから、少しびっくりしているだけです。その内落ち着くでしょう…。」
 そう言いながら、香織の背中を摩っていた。
 「三枝さんは、もう少し、加減ってものを知って置いて下さい。毎回これだと、香織の身が持ちませんよ…。」
 「うぅ…。まさか、ここまで凹まれるとは、思ってないじゃないですか…。」
 それから、暫く、麻由美の説教が続いた後、三枝さんは、本業に戻るため、部屋を出て行った。香織方も、何とか、落ち着きを取り戻したのか、気が付くと、ソファの上に、移動していた。
 「どうして、三枝さんは、香織の事、あんなに、好いているんだろ…。」
 麻由美に向かって、そう訊ねた。気持ちは分からんでもない。多分香織は、対人慣れしていないところを除けば、男女問わず、好かれるタイプの人間だ。だが、三枝さんは、今井さんのとはレベルが違う。何というか、友人や、親友との接し方とは、比べ物にならないくらい、重い気がする…。
 現に、ほんの少し、人慣れし始めた香織が、未だに、ショックを受けるほどだ…。一体どうしたら、そこまで、行ってしまうのだろうか…。
 「ん~。よく分からないけど、本人曰く、妹みたいだからって、言ってたね。」
 「妹?」
 「最初は、今みたいな、スキンシップとかは、なかったんだけど、ある時を境に、ああなっちゃって…。」
 女性スタッフも、それに付け加えた。
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