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14章:四人の約束
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エレベーターを使うより、階段で下まで降りて行った方が、目立つことなく、移動出来る。だから、いつも、独りで行動するときは、防火扉で、廊下と仕切られている、この階段を使っている。今回も、この薄暗い階段を降り、中庭に向かった。
一回に降りると、日中、日の光が、あまり当たらなかったのか、少しひんやりとしており、肌寒ささえ感じた。
中庭に続く扉を開けると、コーヒー豆の様な、香ばしい香りが漂ってきた。
煙草の煙の匂いというのは、正直あまり好きではない。だが、彼の蒸かす煙草の匂いだけは、嫌いにはなれなかった。
どうも、“手巻き煙草”という物で、葉の種類や、量を自分で調整できる煙草らしい。彼の吸っている物は、更に、葉だけでなく、コーヒーの粉を混ぜ、香りを出しているらしい。
「数か月しか、立ってねぇのに、本当に久しいな。」
広瀬さんは、身を隠す様に、大きな庭石の根元の部分に、しゃがみ込み、例の煙草を蒸かしていた。
「本当ですね…。」
私も、彼の隣にしゃがみ込み、空を見上げた。
敢えて、先に言っておくが、広瀬さんとは、特別な関係など一切ない。強いていうのならば、中庭仲間というくらいだろう…。
私がこの中庭が、好きなように、彼もまた、此処が好きらしく、いつも一人で、この位置で、煙草を蒸かしていた。その姿が、私の部屋の位置からは、見えてしまう。その姿を、眺めていたら、それに気が付いた、彼の方から、下に降りてこないかと、誘われたのが、切っ掛けだった。
「上手くやって行けてるのか?」
彼はそう言うと、吸い終わった、煙草を、携帯灰皿に居れ、二本目を巻き始めた。
「まぁ、何とかやっては行けてます。バイトとか、勉強とかで、毎日が忙しいですが…。」
私が、そう答えると、鼻で笑われた。
「フ…。」
「何ですか?」
「いや、お前さんが、勉強とは、随分と真面目さんになったなぁと、思ってな…。」
確かに、私は、どちらかというと、勉強は、苦手だ。だからと言って、全くしない訳では無い。寧ろ、苦手なだけであって、嫌いな訳では無い。だから、高校生の時から、ちゃんと、自分なりに、勉強は、してきていた。
だから、そんな小馬鹿にされる筋合いはない…。
「すみませんね…。普段真面目に、見えなくて…。」
ワザと、不貞腐れた様な、声で、そう答えた。
「悪い悪い、そこまでいじけるとは、思わなかったな…。」
そう言と、彼は、咥えた煙草に、火を着け、一気に蒸かした。
やはり、コーヒーの香りが、ほんのりと漂った。
「上手くやれている様で、良かった。」
一回に降りると、日中、日の光が、あまり当たらなかったのか、少しひんやりとしており、肌寒ささえ感じた。
中庭に続く扉を開けると、コーヒー豆の様な、香ばしい香りが漂ってきた。
煙草の煙の匂いというのは、正直あまり好きではない。だが、彼の蒸かす煙草の匂いだけは、嫌いにはなれなかった。
どうも、“手巻き煙草”という物で、葉の種類や、量を自分で調整できる煙草らしい。彼の吸っている物は、更に、葉だけでなく、コーヒーの粉を混ぜ、香りを出しているらしい。
「数か月しか、立ってねぇのに、本当に久しいな。」
広瀬さんは、身を隠す様に、大きな庭石の根元の部分に、しゃがみ込み、例の煙草を蒸かしていた。
「本当ですね…。」
私も、彼の隣にしゃがみ込み、空を見上げた。
敢えて、先に言っておくが、広瀬さんとは、特別な関係など一切ない。強いていうのならば、中庭仲間というくらいだろう…。
私がこの中庭が、好きなように、彼もまた、此処が好きらしく、いつも一人で、この位置で、煙草を蒸かしていた。その姿が、私の部屋の位置からは、見えてしまう。その姿を、眺めていたら、それに気が付いた、彼の方から、下に降りてこないかと、誘われたのが、切っ掛けだった。
「上手くやって行けてるのか?」
彼はそう言うと、吸い終わった、煙草を、携帯灰皿に居れ、二本目を巻き始めた。
「まぁ、何とかやっては行けてます。バイトとか、勉強とかで、毎日が忙しいですが…。」
私が、そう答えると、鼻で笑われた。
「フ…。」
「何ですか?」
「いや、お前さんが、勉強とは、随分と真面目さんになったなぁと、思ってな…。」
確かに、私は、どちらかというと、勉強は、苦手だ。だからと言って、全くしない訳では無い。寧ろ、苦手なだけであって、嫌いな訳では無い。だから、高校生の時から、ちゃんと、自分なりに、勉強は、してきていた。
だから、そんな小馬鹿にされる筋合いはない…。
「すみませんね…。普段真面目に、見えなくて…。」
ワザと、不貞腐れた様な、声で、そう答えた。
「悪い悪い、そこまでいじけるとは、思わなかったな…。」
そう言と、彼は、咥えた煙草に、火を着け、一気に蒸かした。
やはり、コーヒーの香りが、ほんのりと漂った。
「上手くやれている様で、良かった。」
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