レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#2-7

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 彩は、言われた仕事や、作業を、丁寧に、黙々と熟していった。そういえば、彼女と、二人きりになるのは、かなり珍しい気がする。というのも、彩は、独りで居ることが、先ずない。いつも、寧々か、香織と一緒に居るイメージが高い。私と、彼女は、仲が悪い訳ではないが、二人で一緒に行動するのは、知り合って以来、初めての事かもしれない…。
 だから、接し方や、距離感が、分からない…。こういう時、他人との距離感を掴むのが得意な、香織や、誰にでも、対等に接することができる、寧々が居れば、会話が弾んだり、話し相手ができたりとするのだろうが、そういうわけには、行かない…。
 「麻由美ちゃん?」
 少し考え事をしていたら、彩が話しかけてきた。
 「な、何?」
 「一応、掃除だとか、ごみ捨だとか、終わったけど、他に何すれば良い?」
 「え?」
 部屋中を見渡すと、確かに、綺麗になっていた。しかも、私がやるより、ずっと、綺麗だ…。
 「あ、じゃ、じゃぁ、お客用の浴衣、調達してきて。スタッフ専用通路の所にあるから。」
 「分かった。」
 彼女は、そう言うと、部屋を出て行った。それを、見届け、私は、深いため息を吐いた。
 「お嬢がタジタジなんて、珍しいこともあるんですね…。」
 その様子を見ていた、同じ部屋で作業をしていた、清掃員の女性がそう言った。
 「うるさいです。いいから、仕事、して下さい。」
 「はいはい、分かりましたよ。」
 女性スタッフは、そう言うと、窓を拭き始めた。

 

 「ねぇ、香織。」
 「ん?」
 露天風呂の床を、デッキブラシで磨いていた、寧々がそう呟いた。
 「彩の過去って、何か知っていたりする。」
 彼女のその言葉に、私の手が止まった。寧々がそう聞いてきたというのは、私しか、彩の昔話を知らないっていう事か…。
 あの子が、どうして、一番仲が良い筈の、寧々より、私に、あの話をしたのだろうか…。私になら、話しても良いと思ったのだろうか…。それは、それで、嬉しいのだが…。彼女が、寧々に話していないとなると、私が、簡単に話せるわけがない…。
 「いや、知らないけど…。」
 私が、そう答えると、寧々は、冷たい視線を、こちらに、向けてきた。その視線は、慣れては居るのだが、寧々に向けられていると思うと、少し、ドキリとする…。
 「教えられないならいいけど…。何か、ズルいな…。」
 「え?」
 「だって、あんたら二人で、内緒話してるんでしょ?なんか、ズルいなぁって思ってさ…。ま、香織が話せないっていうのなら、本人から、直接聞くしかないか…。」
 寧々はそう言うと、再びデッキブラシを動かし始めた。
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