レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#2-6

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 現在時刻は、14時直前。私たち4人は、着物に着替え、私と寧々は、東館。麻由美と彩は西館で、各々作業に移った。
 百乃季のチェックインの時間は16時から。それまでに、客室の掃除や、アメニティの補充などを、終わらせなければならない。
 私が向かったのは、今日一番、チェックイアウトが多かった、東館最上階、6階だった。
 スタッフ用のエレベーターを降り、専用通路を抜け、フロア廊下に出ると、清掃員や、他の中居さんたちが、慌ただしく、パタパタと歩き回っていた。
 「あら!香織ちゃん!」
 一人の女性清掃員が、声を掛けてきた。
 「あ、お久しぶりです!咲子さん!」
 彼女の名前は、神田咲子。百乃季で、長年働く、清掃員の女性だ。
 年齢は、そろそろ、40を迎える筈なのだが、とてもそうは見えない程、若々しく、元気がある彼女が、私が、ここで働いて居た時の、指導係だった。
 「少し、見ない間に、太ったんじゃない?」
 「そ、そんな事……ありますかね…?」
 今井さんの自宅には、当然、体重計がある。だが、私には、体重計に乗る習慣が、無かった為、気になった時しか乗らない。
 だから、太っただの、痩せたのだのと言った、感覚は、本当に、目視で行っている。
 「あっはっはっは!そんなに気にする事じゃないよ!むしろ、元気な証拠でしょ?
 それはそうと、まだ、608から615までの、掃除終わってないから、そっちの方、手伝いに行って来て!私は、今から、タオルとか補充しに行かなきゃだから!お願いね!」
 そう早口で言い終えると、咲子さんは、スタッフ専用通路の中に、消えて行った。
 咲子さんに言われた所為か、少し、お腹周りを摩った。
 帯を巻いている為、腹回りの感触は、分からないが、何となく、肉が付いてきている、様な気がした。
 「大丈夫、私は、気にしないから。」
 そんな私の姿を見て、ニヤついた顔を向けた寧々が、そう言った。
 「う、うるさい…。」
 私は、そう応え、608の部屋がある方へと、向かった。
 
 東館は、他の4館に比べ、比較的に部屋数が少なく、一人部屋や、二人部屋が多い。
 そのため、私と同世代の、若いカップルや、夫婦が、泊まる事が、多い。それを逆手に取り、旅館でありながら、ホテルの様な、洋風の見た目の、作りになっている部屋が、殆どだ。
 勿論、畳の部屋も無いことは、無いが、数が限られている。
 その、608号室から、615号室の8部屋は、この館、唯一の畳張りの部屋だ。
 部屋の大きさは、他と一緒なのだが、客室露天風呂が付いている為、掃除が、大変なのだ。だから、いつも、この一角だけ、時間が掛かってしまう。
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