レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#2-5

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 渡り廊下を渡り切り、エレベーターで、別館の5階まで上がった。さっきまでの、客間がある、建物とは違い、少し、古っぽさは残っているが、これでも、申し分ないくらい、“客室”として機能できる、部屋が点在している。
 その奥の角部屋の向かい合っている二部屋が、麻由美と私が住み込んでいた時の、“自室”だった。
 部屋の大きさは、バストイレ別の、8畳の和室に、カーペットになった広縁の談話スペース。更には、床の間や、押し入れまである、立派な部屋だ。
 「この別館は、私が生まれる前は、現役の“北館”だったんだけど、老朽化が、原因で、今は所々、改修を施して、従業員の休憩室や、住み込み用の部屋として、使ってるの。」
 「そ。香織ちゃんと、麻由美嬢は、高校生の時、向こうの角部屋使ってたね。」
 光さんが、廊下の突き当りを指さした。
 「で、今回母さんが用意したのが、ここ。」
 麻由美が止まった所は、エレベーターを出て、廊下の突き当りとは、反対の方向…。
 麻由美が持っていた、鍵で、ドアを開けると、直に、襖の扉が現れた。
 靴を脱ぐと、思わず、“お邪魔します”と言いたくなるのは、私だけではなく、彩もだったらしい…。
 「わぁ!広い!」
 第一声を上げたのは、寧々だった。畳の数は、12枚。押し入れや、床の間、広縁を入れれば、16畳は下らない、かなりの大部屋だ。
 確か、旅行会社が定めている、部屋の大きさは、1人に対して、2畳というのが、定義だったはずだ。私たち4人に対しては、かなり広い…。
 更に、さっきの中庭と、広大な山々が見渡せる位置に、窓が面している為、中だけでは無く、外も楽しめる。
 これが、客間として、客間として、使われていないなんて、かなりの贅沢だ…。
 「この部屋、暫く閉め切ったままにしてたから、風通し序に、使うことにしたみたい。
どう?気に入った?」
 「気に入ったも何も…。」
 窓の外を眺めていた寧々が、急に、麻由美の手を掴んだ…。
 「これから、暫くは、何でも、言う事聞きますぜ、麻由美さん…。いや、麻由美お嬢!」
 「何て現金な…。」
 彩がそう呟いた。私と光さんも思わずうなずいた…。
 「な、何を言っているの…!」
 流石の麻由美も、そんな状況に慣れていないのか、少し慌てた様子で、手を放した。
 「そ、それより、荷物置いて!さっさと仕事して、今日は、のんびりするんでしょ?」
 そう言うと麻由美は、押し入れの襖を、開けた。中には、麻由美と同じ柄の着物が、3着入っていた。
 「香織のは、昔使っていたやつだから、これ。二人は、サイズは適当に、SとLにしてあるから、取り敢えず着て。」
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