レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#1-2

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 「麻由美の実家の手伝いしつつ、温泉にでも、浸かってこようって、寧々が言いだしまして…。」
 「確か、温泉旅館なんだっけ?」
 「はい。雑誌にも何度か取り上げられているみたいで、かなり有名なんですよ?」
 先日、九条さんから貰った、旅行雑誌を、彰さんに手渡した。
 「へぇ…。」
 彼はそう言うと、何ページか、ぺらぺらとめくり始めた。
 「羨ましいな…。俺なんて、温泉入ったの、いつだっけなぁ…。」
 私も、初めて温泉に浸かったのは、麻由美の実家で、バイトをするようになった頃だった。
 それ程大きくは無いが、従業員用の露天風呂もあり、そこで初めて、湯船に浸からせてもらった。
 その時、見上げた夜空の景色は、今でも忘れない…。
 「という事は、ちゃんと、彩夏ちゃんも、一緒って事かい?」
 「はい。」
 「ふ~ん。」とわざとらしく、そう呟くと、持っていた、雑誌を差し出した。
 「じゃぁ、彩夏ちゃんの件で、一つ。」
 人差し指を立て、ニコリとほほ笑んだ。
 「あの子、頭が良い分、思い込みや、考えすぎって事が多いみたいだから、それを、上手く取り除けるといいねぇ。」
 彼は、そう言うと、背を向け、人込みの中に、紛れて行った。
 今回の趣旨は、温泉に入るのも、そうだが、彩の異変を、探るためでもある。
 寧々曰く、サマーダイニング以降、どうやら調子が悪いみたいだ。私は、あれ以来、直接会ってないから、何とも言えないが、何とか、その異変と言うのもは、杞憂であってほしい。
 「あれ?」 
 彰さんに、彩の異変の事、話したっけ?いや、私の口からは、そんな話題、出していない。この事を、知っているのは、私と寧々と、麻由美。それから、カウンターで話を聞いていた、古川マスターの4人だけ。私は勿論、他の三人も、誰かに、こんな話をする事なんて、無い筈だ。
 だとしたら、彰さんも、何となくだが、彼女の異変に気が付いていたというのだろうか…。それとも…。
 そう悩んだ直後だった。私のスマホに、通知が入った。どうやら、私たち4人の、グループメッセージの通知らしい。
 差出人は、寧々。送ってきた内容は、一枚の画像だ…。さっき、私と彰さんが、話していた時の光景を、背後から取った、写真だった。
 それに驚いていると、更に、メッセージが送信された。
 『激写!香織の本命の相手とは…?』
 と雑誌のスクープ記事の、見出しの様な、言葉だった。
 私は、その写真を、撮ったであろう方向を見ると、寧々と、彩が、手を振って通路の方に、立っていた。
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