210 / 309
14章:四人の約束
#1-2
しおりを挟む
「麻由美の実家の手伝いしつつ、温泉にでも、浸かってこようって、寧々が言いだしまして…。」
「確か、温泉旅館なんだっけ?」
「はい。雑誌にも何度か取り上げられているみたいで、かなり有名なんですよ?」
先日、九条さんから貰った、旅行雑誌を、彰さんに手渡した。
「へぇ…。」
彼はそう言うと、何ページか、ぺらぺらとめくり始めた。
「羨ましいな…。俺なんて、温泉入ったの、いつだっけなぁ…。」
私も、初めて温泉に浸かったのは、麻由美の実家で、バイトをするようになった頃だった。
それ程大きくは無いが、従業員用の露天風呂もあり、そこで初めて、湯船に浸からせてもらった。
その時、見上げた夜空の景色は、今でも忘れない…。
「という事は、ちゃんと、彩夏ちゃんも、一緒って事かい?」
「はい。」
「ふ~ん。」とわざとらしく、そう呟くと、持っていた、雑誌を差し出した。
「じゃぁ、彩夏ちゃんの件で、一つ。」
人差し指を立て、ニコリとほほ笑んだ。
「あの子、頭が良い分、思い込みや、考えすぎって事が多いみたいだから、それを、上手く取り除けるといいねぇ。」
彼は、そう言うと、背を向け、人込みの中に、紛れて行った。
今回の趣旨は、温泉に入るのも、そうだが、彩の異変を、探るためでもある。
寧々曰く、サマーダイニング以降、どうやら調子が悪いみたいだ。私は、あれ以来、直接会ってないから、何とも言えないが、何とか、その異変と言うのもは、杞憂であってほしい。
「あれ?」
彰さんに、彩の異変の事、話したっけ?いや、私の口からは、そんな話題、出していない。この事を、知っているのは、私と寧々と、麻由美。それから、カウンターで話を聞いていた、古川マスターの4人だけ。私は勿論、他の三人も、誰かに、こんな話をする事なんて、無い筈だ。
だとしたら、彰さんも、何となくだが、彼女の異変に気が付いていたというのだろうか…。それとも…。
そう悩んだ直後だった。私のスマホに、通知が入った。どうやら、私たち4人の、グループメッセージの通知らしい。
差出人は、寧々。送ってきた内容は、一枚の画像だ…。さっき、私と彰さんが、話していた時の光景を、背後から取った、写真だった。
それに驚いていると、更に、メッセージが送信された。
『激写!香織の本命の相手とは…?』
と雑誌のスクープ記事の、見出しの様な、言葉だった。
私は、その写真を、撮ったであろう方向を見ると、寧々と、彩が、手を振って通路の方に、立っていた。
「確か、温泉旅館なんだっけ?」
「はい。雑誌にも何度か取り上げられているみたいで、かなり有名なんですよ?」
先日、九条さんから貰った、旅行雑誌を、彰さんに手渡した。
「へぇ…。」
彼はそう言うと、何ページか、ぺらぺらとめくり始めた。
「羨ましいな…。俺なんて、温泉入ったの、いつだっけなぁ…。」
私も、初めて温泉に浸かったのは、麻由美の実家で、バイトをするようになった頃だった。
それ程大きくは無いが、従業員用の露天風呂もあり、そこで初めて、湯船に浸からせてもらった。
その時、見上げた夜空の景色は、今でも忘れない…。
「という事は、ちゃんと、彩夏ちゃんも、一緒って事かい?」
「はい。」
「ふ~ん。」とわざとらしく、そう呟くと、持っていた、雑誌を差し出した。
「じゃぁ、彩夏ちゃんの件で、一つ。」
人差し指を立て、ニコリとほほ笑んだ。
「あの子、頭が良い分、思い込みや、考えすぎって事が多いみたいだから、それを、上手く取り除けるといいねぇ。」
彼は、そう言うと、背を向け、人込みの中に、紛れて行った。
今回の趣旨は、温泉に入るのも、そうだが、彩の異変を、探るためでもある。
寧々曰く、サマーダイニング以降、どうやら調子が悪いみたいだ。私は、あれ以来、直接会ってないから、何とも言えないが、何とか、その異変と言うのもは、杞憂であってほしい。
「あれ?」
彰さんに、彩の異変の事、話したっけ?いや、私の口からは、そんな話題、出していない。この事を、知っているのは、私と寧々と、麻由美。それから、カウンターで話を聞いていた、古川マスターの4人だけ。私は勿論、他の三人も、誰かに、こんな話をする事なんて、無い筈だ。
だとしたら、彰さんも、何となくだが、彼女の異変に気が付いていたというのだろうか…。それとも…。
そう悩んだ直後だった。私のスマホに、通知が入った。どうやら、私たち4人の、グループメッセージの通知らしい。
差出人は、寧々。送ってきた内容は、一枚の画像だ…。さっき、私と彰さんが、話していた時の光景を、背後から取った、写真だった。
それに驚いていると、更に、メッセージが送信された。
『激写!香織の本命の相手とは…?』
と雑誌のスクープ記事の、見出しの様な、言葉だった。
私は、その写真を、撮ったであろう方向を見ると、寧々と、彩が、手を振って通路の方に、立っていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
琥珀色の日々
深水千世
ライト文芸
北海道のバー『琥珀亭』に毎晩通う常連客・お凛さん。
彼女と琥珀亭に集う人々とのひとときの物語。
『今夜も琥珀亭で』の続編となりますが、今作だけでもお楽しみいただけます。
カクヨムと小説家になろうでも公開中です。
cafe&bar Lily 婚活での出会いは運命かそれとも……
Futaba
恋愛
佐藤夢子、29歳。結婚間近と思われていた恋人に突然別れを告げられ、人生のどん底を味わっております。けれどこのままじゃいけないと奮起し、人生初の婚活をすることに決めました。
そうして出会った超絶国宝級イケメン。話も面白いし優しいし私の理想そのもの、もう最高!! これは運命的な出会いで間違いない!
……と思ったら、そう簡単にはいかなかったお話。
※全3話、小説家になろう様にも同時掲載しております
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
セイカイ〜全ての暗号を解き明かせ〜
雪音鈴
ミステリー
制限時間内に全ての暗号を解き明かし脱出する《ゲーム》へと強制参加することになった主人公。その先に待ち受けているものとはーー?
【暗号を解く度に変化していく景色と暗号の解読を楽しみながらも、主人公の行く末を見守ってあげて下さい。また、読者の方々にも、2話目から暗号(という名のなぞなぞもあり。難易度は話数が進むごとに上げていきます)を解き明かしてもらう形式になっているので、楽しんでいただければ幸いです(*^^*)】
病院の僧侶(プリースト) と家賃という悪夢にしばられた医者
加藤かんぬき
ミステリー
僧侶サーキスは生き別れた師匠を探す旅の途中、足の裏に謎の奇病が出現。歩行も困難になり、旅を中断する。
そして、とある病院で不思議な医者、パディ・ライスという男と出会う。
中世時代のヨーロッパという時代背景でもありながら、その医者は数百年は先の医療知識と技術を持っていた。
医療に感銘を受けた僧侶サーキスはその病院で働いていくことを決心する。
訪れる患者もさまざま。
まぶたが伸びきって目が開かない魔女。
痔で何ものにもまたがることもできなくなったドラゴン乗りの戦士。
声帯ポリープで声が出せなくなった賢者。
脳腫瘍で記憶をなくした勇者。
果たしてそのような患者達を救うことができるのか。
間接的に世界の命運は僧侶のサーキスと医者パディの腕にかかっていた。
天才的な技術を持ちながら、今日も病院はガラガラ。閑古鳥が鳴くライス総合外科病院。
果たしてパディ・ライスは毎月の家賃を支払うことができるのか。
僧侶のサーキスが求める幸せとは。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる