208 / 309
番外編:1今井真香の事件簿
#23
しおりを挟む
「それにしても、アザレアの社長からの提案には驚きましたね…。」
朝倉ちゃんが、淹れられたばかりのコーヒーを啜りながらそう言った。
届いたメールの内容を、要約すると、今回の情報の横流し事件は、向こうの営業、松戸が、単独で行った行為として、処理するとのこと。
実際、ウチの鈴木課長を除けば、誰一人、今回の事件に関与している人物は、居なかった。よって、松戸営業部長を、降格及び、半年間の減給。更に、地方の支社に左遷を命じる。
その代わりに、鈴木課長を、アザレアのデザイン部の中途採用として雇い、半年間の現場研修の後、関東支部にて、新人デザイナーとして、再雇用するとのことだった。
願ってもいない提案だった。ウチは、店舗単位でいえば、左遷もできなくもないだろうが、本社勤務の、元役職付の人材が、急に現場に、勤務を命じられれば、店舗のスタッフたちも、困惑するだろうし、変な噂を立てられても困る…。
だから、扱いに困っていた。
「アザレアの社長も、ああいう、汚いやり方、嫌いな質だから、負い目があったんじゃないかな?」
アザレアの社長とは、それなりに長い付き合いだ。私が起業した時から、何かと可愛がってもらっていた。
だからこそ、今回の件は、申し訳なく思っている。
「まぁ、そのお陰で、柳子さんが、課長に昇格ですからね。これから、一層頑張って下さい。」
朝倉ちゃんが、そう言った。
「本当に私なんかで良かったんですか?もっと適任は、何人も居たんじゃないですか?」
「デザイン部、全員の意見よ?それに、入社当時から、貴女が頑張っていた事は、あたしも知ってるから。」
「ありがとうございます。ちゃんと、頑張らせて頂きますが、至らないと思ったら、直に切っても良いんですからね?」
柳子がそう言った時、格子戸がガラガラと音を立てて、開いた。そこに立っていたのは、紙袋を抱えた、宮本香織だった。
「おや?今日は、水曜日ですよね?」
「午後の講義が、補講者だけ、対象になっていたの、すっかり忘れていました。って、1時間程前に、メッセージ送った筈ですが…。」
古川氏が、スマホを確認すると、「おや、これは失礼しました。見落としていました。」というと、彼女から、紙袋を受け取った。
「来て早々で、申し訳ないですが。ご指名が入っておりますので、対応、お願い致します。」
古川氏が、柳子の方に、視線を送った。
「解りました、着替えて来ますので、ブレンドと、カップの準備お願いします。」
「解りました。残念ですが、たった今淹れた、“ショコラ・ピーベリー”は、又の機会という事で…。」
その言葉に食いついたのは、柳子だった。
「ショコラ・ピーベリーですか?そっちも、是非とも飲んでみたいです!」
「それは、構いませんが、お代はちゃんと頂きますよ?」
その会話の横で、朝倉ちゃんが私の方に、耳打ちしてきた。
「“ショコラ・ピーベリー”って、何ですか?品種としては、聞いた事ありませんが…。」
いつもなら、俄かの私には、答えられないだろうが、今回ばかしは、昨日、香織ちゃんに、予め教えてもらった。
「ショコラ・ピーベリーって言うのはねぇ…。」
朝倉ちゃんが、淹れられたばかりのコーヒーを啜りながらそう言った。
届いたメールの内容を、要約すると、今回の情報の横流し事件は、向こうの営業、松戸が、単独で行った行為として、処理するとのこと。
実際、ウチの鈴木課長を除けば、誰一人、今回の事件に関与している人物は、居なかった。よって、松戸営業部長を、降格及び、半年間の減給。更に、地方の支社に左遷を命じる。
その代わりに、鈴木課長を、アザレアのデザイン部の中途採用として雇い、半年間の現場研修の後、関東支部にて、新人デザイナーとして、再雇用するとのことだった。
願ってもいない提案だった。ウチは、店舗単位でいえば、左遷もできなくもないだろうが、本社勤務の、元役職付の人材が、急に現場に、勤務を命じられれば、店舗のスタッフたちも、困惑するだろうし、変な噂を立てられても困る…。
だから、扱いに困っていた。
「アザレアの社長も、ああいう、汚いやり方、嫌いな質だから、負い目があったんじゃないかな?」
アザレアの社長とは、それなりに長い付き合いだ。私が起業した時から、何かと可愛がってもらっていた。
だからこそ、今回の件は、申し訳なく思っている。
「まぁ、そのお陰で、柳子さんが、課長に昇格ですからね。これから、一層頑張って下さい。」
朝倉ちゃんが、そう言った。
「本当に私なんかで良かったんですか?もっと適任は、何人も居たんじゃないですか?」
「デザイン部、全員の意見よ?それに、入社当時から、貴女が頑張っていた事は、あたしも知ってるから。」
「ありがとうございます。ちゃんと、頑張らせて頂きますが、至らないと思ったら、直に切っても良いんですからね?」
柳子がそう言った時、格子戸がガラガラと音を立てて、開いた。そこに立っていたのは、紙袋を抱えた、宮本香織だった。
「おや?今日は、水曜日ですよね?」
「午後の講義が、補講者だけ、対象になっていたの、すっかり忘れていました。って、1時間程前に、メッセージ送った筈ですが…。」
古川氏が、スマホを確認すると、「おや、これは失礼しました。見落としていました。」というと、彼女から、紙袋を受け取った。
「来て早々で、申し訳ないですが。ご指名が入っておりますので、対応、お願い致します。」
古川氏が、柳子の方に、視線を送った。
「解りました、着替えて来ますので、ブレンドと、カップの準備お願いします。」
「解りました。残念ですが、たった今淹れた、“ショコラ・ピーベリー”は、又の機会という事で…。」
その言葉に食いついたのは、柳子だった。
「ショコラ・ピーベリーですか?そっちも、是非とも飲んでみたいです!」
「それは、構いませんが、お代はちゃんと頂きますよ?」
その会話の横で、朝倉ちゃんが私の方に、耳打ちしてきた。
「“ショコラ・ピーベリー”って、何ですか?品種としては、聞いた事ありませんが…。」
いつもなら、俄かの私には、答えられないだろうが、今回ばかしは、昨日、香織ちゃんに、予め教えてもらった。
「ショコラ・ピーベリーって言うのはねぇ…。」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
白い男1人、人間4人、ギタリスト5人
正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます
女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。
小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。
不動の焔
桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。
「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。
しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。
今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。
過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。
高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。
千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。
本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない
──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。
金無一千万の探偵譜
きょろ
ミステリー
年齢四十歳。派手な柄シャツに、四六時中煙草の煙をふかす男。名を「金無 一千万(かねなし いちま)」
目つきと口の悪さ、更にその横柄な態度を目の当たりにすれば、誰も彼が「探偵」だとは思うまい。
本人ですら「探偵」だと名乗った事は一度もないのだから。
しかしそんな彼、金無一千万は不思議と事件を引寄せる星の元にでも生まれたのだろうか、彼の周りでは奇妙難解の事件が次々に起こる。
「金の存在が全て――」
何よりも「金」を愛する金無一千万は、その見た目とは対照的に、非凡な洞察力、観察力、推理力によって次々と事件を解決していく。その姿はまさに名探偵――。
だが、本人は一度も「探偵」と名乗った覚えはないのだ。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
大江戸あやかし絵巻 ~一寸先は黄泉の国~
坂本 光陽
ミステリー
サブとトクという二人の少年には、人並み外れた特技があった。めっぽう絵がうまいのである。
のんびり屋のサブは、見た者にあっと言わせる絵を描きたい。聡明なトクは、美しさを極めた絵を描きたい。
二人は子供ながらに、それぞれの夢を抱いていた。そんな彼らをあたたかく見守る浪人が一人。
彼の名は桐生希之介(まれのすけ)。あやかしと縁の深い男だった。
双子協奏曲
渋川宙
ミステリー
物理学者の友部龍翔と天文学者の若宮天翔。二人は双子なのだが、つい最近までその事実を知らなかった。
そんな微妙な距離感の双子兄弟の周囲で問題発生!
しかも弟の天翔は事件に巻き込まれ――
警狼ゲーム
如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。
警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる