205 / 309
番外編:1今井真香の事件簿
#20
しおりを挟む
「鈴木課長の、計画というのは、“クラウン買収計画”。そうよね?」
「買収?そんな事、ある筈は…。」
他の役員や幹部連中が、ざわざわと、話し始めた。それもそうだ。潰れかけだったり、不景気の煽りを受けているならまだしも、私の会社は、今は、波に乗っている。今年に至っては、首都圏を中心に、駅ビルや、大型商業施設など、様々な場所に、総計40店舗以上を展開している。
だから、買収などそんな話をしている程、我が社は、暇ではない。
「そう。あたしも最初は、冗談かと思ったけど、冗談では、無いみたいね。」
私は、足元にあった紙袋を、机の上に、置き、中身を取り出した。
「社長、それは一体?」
「これはねぇ、ライバル社でもある、“アザレア”が明日店頭に並べる予定の、ポロシャツだそうです。向こうの社長に、お願いして、一着借りてきました。
このデザイン、営業部長なら、見覚えがあるんじゃない?」
私は、営業部長にポロシャツを手渡した。彼は、暫く、シャツを広げて、袖口や襟元などをまじまじと、見詰め、生地も指で、撫でる様に、触った…。
「この、袖口のデザインと言い、生地と言い…。間違いないです、来月我が社が、スポーツマン向けに発売する、ポロシャツと、酷似していますね…。と言うより、そのままです。」
「“たまたま”しては、タイミング的にも、偶然過ぎるよね…。という事で、アザレアの社長と、会議が始まる前に、直接電話してみて確認したところ、このポロシャツのデザイン案は、丁度、今から二か月前に、提示されたものらしいです。」
「二か月前?」営業部長が、更にハッとした様な顔で、聞き返した。
「そう、丁度、スポーツウェア等のスポーツ系にも手を出そうと、話が出始めた頃ね…。そのポロシャツのデザインは、当初から、修正は殆ど入っていないからね…。」
「つまり、計画の一部が、漏れていた。という事ですかな?」
専務が鋭い睨みを利かせ、鈴木課長の方を見据えた。
「一部だけなら良かったのですがねぇ…。」
私が、そう言ったタイミングで、朝倉ちゃんのパソコンに、メールが届いた。
「……社長、どうやら、ビンゴの様です。」
スクリーンに映し出されたのは、幾つかの企画書や、見積書、それから、デザイン画の資料が、山ほど、映し出された。
「……どうしてパスワードが…。」
鈴木課長が、怯えた様にそう言った。
「貴女が、日頃から、何かと目の敵にしている、部下の子。彼女は、本当に、良い仕事するね…。」
「買収?そんな事、ある筈は…。」
他の役員や幹部連中が、ざわざわと、話し始めた。それもそうだ。潰れかけだったり、不景気の煽りを受けているならまだしも、私の会社は、今は、波に乗っている。今年に至っては、首都圏を中心に、駅ビルや、大型商業施設など、様々な場所に、総計40店舗以上を展開している。
だから、買収などそんな話をしている程、我が社は、暇ではない。
「そう。あたしも最初は、冗談かと思ったけど、冗談では、無いみたいね。」
私は、足元にあった紙袋を、机の上に、置き、中身を取り出した。
「社長、それは一体?」
「これはねぇ、ライバル社でもある、“アザレア”が明日店頭に並べる予定の、ポロシャツだそうです。向こうの社長に、お願いして、一着借りてきました。
このデザイン、営業部長なら、見覚えがあるんじゃない?」
私は、営業部長にポロシャツを手渡した。彼は、暫く、シャツを広げて、袖口や襟元などをまじまじと、見詰め、生地も指で、撫でる様に、触った…。
「この、袖口のデザインと言い、生地と言い…。間違いないです、来月我が社が、スポーツマン向けに発売する、ポロシャツと、酷似していますね…。と言うより、そのままです。」
「“たまたま”しては、タイミング的にも、偶然過ぎるよね…。という事で、アザレアの社長と、会議が始まる前に、直接電話してみて確認したところ、このポロシャツのデザイン案は、丁度、今から二か月前に、提示されたものらしいです。」
「二か月前?」営業部長が、更にハッとした様な顔で、聞き返した。
「そう、丁度、スポーツウェア等のスポーツ系にも手を出そうと、話が出始めた頃ね…。そのポロシャツのデザインは、当初から、修正は殆ど入っていないからね…。」
「つまり、計画の一部が、漏れていた。という事ですかな?」
専務が鋭い睨みを利かせ、鈴木課長の方を見据えた。
「一部だけなら良かったのですがねぇ…。」
私が、そう言ったタイミングで、朝倉ちゃんのパソコンに、メールが届いた。
「……社長、どうやら、ビンゴの様です。」
スクリーンに映し出されたのは、幾つかの企画書や、見積書、それから、デザイン画の資料が、山ほど、映し出された。
「……どうしてパスワードが…。」
鈴木課長が、怯えた様にそう言った。
「貴女が、日頃から、何かと目の敵にしている、部下の子。彼女は、本当に、良い仕事するね…。」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
琥珀色の日々
深水千世
ライト文芸
北海道のバー『琥珀亭』に毎晩通う常連客・お凛さん。
彼女と琥珀亭に集う人々とのひとときの物語。
『今夜も琥珀亭で』の続編となりますが、今作だけでもお楽しみいただけます。
カクヨムと小説家になろうでも公開中です。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
病院の僧侶(プリースト) と家賃という悪夢にしばられた医者
加藤かんぬき
ミステリー
僧侶サーキスは生き別れた師匠を探す旅の途中、足の裏に謎の奇病が出現。歩行も困難になり、旅を中断する。
そして、とある病院で不思議な医者、パディ・ライスという男と出会う。
中世時代のヨーロッパという時代背景でもありながら、その医者は数百年は先の医療知識と技術を持っていた。
医療に感銘を受けた僧侶サーキスはその病院で働いていくことを決心する。
訪れる患者もさまざま。
まぶたが伸びきって目が開かない魔女。
痔で何ものにもまたがることもできなくなったドラゴン乗りの戦士。
声帯ポリープで声が出せなくなった賢者。
脳腫瘍で記憶をなくした勇者。
果たしてそのような患者達を救うことができるのか。
間接的に世界の命運は僧侶のサーキスと医者パディの腕にかかっていた。
天才的な技術を持ちながら、今日も病院はガラガラ。閑古鳥が鳴くライス総合外科病院。
果たしてパディ・ライスは毎月の家賃を支払うことができるのか。
僧侶のサーキスが求める幸せとは。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
【キャラ文芸大賞 奨励賞】変彩宝石堂の研磨日誌
蒼衣ユイ/広瀬由衣
ミステリー
矢野硝子(しょうこ)の弟が病気で死んだ。
それからほどなくして、硝子の身体から黒い石が溢れ出すようになっていた。
そんなある日、硝子はアレキサンドライトの瞳をした男に出会う。
アレキサンドライトの瞳をした男は言った。
「待っていたよ、アレキサンドライトの姫」
表紙イラスト くりゅうあくあ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる