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番外編:1今井真香の事件簿
#10
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「一つ目は、“コロンビア・シティーロースト”です。香り高いコロンビアは、よく、ブレンド等で、香りのアクセントとして、使われることの多い、品種です。
今回は、フレンチローストと言う、深煎りを使う事で、苦い味を稼ぎつつ、酸味をタッチ程度に、致します。」
「コロンビアベース…。何度か試した事ありますが、煎り方変えては、流石にないですね…。」
柳子が、真剣な表情で、そう答えた。
「コロンビアって、よく聞くけど、やっぱり凄いものなの?」
丁度カウンター越しに居た、香織ちゃんに訊ねた。
「そうですね…。“三大コーヒー”として有名な、『キリマンジャロ』や、『グァテマラ』には、香り高さでは、多少劣りますが、ナチュラルな嫌みや、癖の少ない香りが好きな人は、最終的にコロンビアに、行きつきます。それの“シティーロースト”。酸味を抑え、苦味だけを、文字通り炙り出す。なかなか、思いつかない発想です…。」
彼女も感心した様に、頷き、そう答えた。
「ふ~ん…。」
「ですが、肝心な、輪郭のある、はっきりとした、苦味には、当然及びません…。」
「流石、香織様ですね。味のイメージが、繊細で、何よりです。」
彼女の呟きの様な、言葉を、古川氏は、見逃してくれず、彼もまた、感心した様に、答えた。
「あれ?でもさっき、“苦味だけ炙り出す。”的な事、言ってなかったっけ?」
「言いましたね…。ですが、『マンデリン』や、『トラジャ』の様な、芯がある、しっかりとした苦味じゃないんです。」
柳子も、彼等に便乗するが如く、私の質問に応答した。
「と言う事は、トラジャはもう試したことになりますね。」
「はい…。どうも、香りも強すぎて、他の豆たちを邪魔しちゃう感じがして…。」
「そう言うと思いまして、今回は、中々他の店では、見る事のできない、逸品を用意いたしました。」
古川氏は、そう言うと、もう二つ目の瓶の蓋を開け、小皿に移した。
「パプアニューギニア、“トロピカルマウンテン・イタリアンロースト”です。」
瓶から出てきた豆たちは、私が今まで見てきたコーヒー豆の中で、一番黒々としていた。豆の表面は、油膜が付着し、照明や、窓から差し込む光を反射させている…。
「トロピカルマウンテン…。初めて見ました…。しかも、イタリアンローストって…。」
「パプアニューギニアは、本来、円やかな酸味とすっきりとした後味が、特徴的な、品種です。が、イタリアンローストにすることによって、輪郭のある、キリッとした苦味が、出てきます。それを、少し利用させていただきます。」
今回は、フレンチローストと言う、深煎りを使う事で、苦い味を稼ぎつつ、酸味をタッチ程度に、致します。」
「コロンビアベース…。何度か試した事ありますが、煎り方変えては、流石にないですね…。」
柳子が、真剣な表情で、そう答えた。
「コロンビアって、よく聞くけど、やっぱり凄いものなの?」
丁度カウンター越しに居た、香織ちゃんに訊ねた。
「そうですね…。“三大コーヒー”として有名な、『キリマンジャロ』や、『グァテマラ』には、香り高さでは、多少劣りますが、ナチュラルな嫌みや、癖の少ない香りが好きな人は、最終的にコロンビアに、行きつきます。それの“シティーロースト”。酸味を抑え、苦味だけを、文字通り炙り出す。なかなか、思いつかない発想です…。」
彼女も感心した様に、頷き、そう答えた。
「ふ~ん…。」
「ですが、肝心な、輪郭のある、はっきりとした、苦味には、当然及びません…。」
「流石、香織様ですね。味のイメージが、繊細で、何よりです。」
彼女の呟きの様な、言葉を、古川氏は、見逃してくれず、彼もまた、感心した様に、答えた。
「あれ?でもさっき、“苦味だけ炙り出す。”的な事、言ってなかったっけ?」
「言いましたね…。ですが、『マンデリン』や、『トラジャ』の様な、芯がある、しっかりとした苦味じゃないんです。」
柳子も、彼等に便乗するが如く、私の質問に応答した。
「と言う事は、トラジャはもう試したことになりますね。」
「はい…。どうも、香りも強すぎて、他の豆たちを邪魔しちゃう感じがして…。」
「そう言うと思いまして、今回は、中々他の店では、見る事のできない、逸品を用意いたしました。」
古川氏は、そう言うと、もう二つ目の瓶の蓋を開け、小皿に移した。
「パプアニューギニア、“トロピカルマウンテン・イタリアンロースト”です。」
瓶から出てきた豆たちは、私が今まで見てきたコーヒー豆の中で、一番黒々としていた。豆の表面は、油膜が付着し、照明や、窓から差し込む光を反射させている…。
「トロピカルマウンテン…。初めて見ました…。しかも、イタリアンローストって…。」
「パプアニューギニアは、本来、円やかな酸味とすっきりとした後味が、特徴的な、品種です。が、イタリアンローストにすることによって、輪郭のある、キリッとした苦味が、出てきます。それを、少し利用させていただきます。」
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