レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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番外編:1今井真香の事件簿

#6

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 久々に、他人と一緒に吞んだからなのか、二日酔いに近い状態だった。ビル内にある自販機で、スポドリと緑茶を購入し、欠伸交じりに社長室に入ると、既に先客が居た。
 ストライプの入った、スーツを着た、セミロングの髪の女性は、長いソファに足を投げ出し、スマホを弄っていた。
 「流石重役。遅いお着きで。」
 「遅いって、まだ九時前よ…。それと、寛ぎすぎ…。少しは、朝倉ちゃんを見習ったら?」
 「堅苦しいのは苦手です…。それより、昨日はお楽しみだったみたいですね…。私を置いて…。」
 彼女の情報収集の速さは、いつも驚かせられる。何度も、私のカバンやこの部屋に、盗聴器を仕掛けているのではと、思うほどだ…。
 「仕方ないじゃない。サシで飲めば、何かわかるかなぁって、思っただけ。」
 「ふ~ん。で、結果は?」
 「鈴木課長はクロで間違いなさそう。ただ、もっと情報が欲しい…。」
 「そういうと思って、ある程度、鈴木課長について調べておきました。」
 そういうと彼女は、A4サイズの封筒を、テーブルの上に、ポンと、放り投げた。
 「流石太田ちゃん。」
 封筒を広い上げ、中身を机の上に広げた。
 「おはようございま…太田ちゃん!足下ろして!」
 そのタイミングで、朝倉さんも、出勤してきた。
 「大丈夫だって、今日は来客の予定は入ってないから。」
 「そうじゃなくて、行儀の話をしてるの!貴女も、一応秘書なんだから、そこはしっかりしてよ!」
 太田凛花、彼女も私の秘書。なのだが、そのことを知っているのは、私と、朝倉さん。それから、一部の重役と人事部だけ。
 普段は、営業部にて、営業事務の仕事をしている。だから、普通の社員たちは、彼女が、秘書であることを、知らない。
 というのも、内部調査を依頼することがあるからだ。人も増えると、当然社員同士のトラブルも増える。それを少しでも、なくせたらと思い、彼女を雇い、内部調査をメインにやらせている…。
 「私あまり秘書らしいことしてないから、実感湧かないんだよね…。」
 とはいえ、頼んだ仕事は、しっかりできるし、何より、社内の情報網で、彼女にかなう人は、居ないだろう…。
 「じゃぁ、引き続き、鈴木課長の情報収集お願いね。」
 「はーい。」
 そう返事をすると、ソファから立ち上がり、社長室を出て行った。
 
 それから、しばらく経った頃、誰かが、ドアをノックした。
 「社長、赤城です。」
 「どうぞ。」
 柳子は少し、もじもじしたような様子で、社長室に入ってきた。
 「こ、これ、今日の会議の資料です…。それと、昨日は、ごちそうさまでした。」
 そういうと、彼女は、深々と、頭を下げた。
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