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番外編:1今井真香の事件簿
#3
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その日、仕事が全て終わったのは、18時を少し回った所だった。今日は特に、外回りをしたわけでも、本店の視察に言った訳でも無かったから、そのまま、レトロに向かい、手伝う予定で居た。のだが…。
廊下を通っている途中、今朝、鈴木課長に叱られていた、女性社員と鉢合わせてしまった。
「今朝は、ありがとうございました。」
彼女はそう言うと、ペコリと頭を下げた。
「別に構わないわよ。仕事が遅れる方が、厄介だからね…。
それより、鈴木課長って、毎回あんな感じなの?」
「ま、まぁ…。でも、私が、ただ至らないだけで…。」
すると、彼女は、自分の部署がある、部屋の入口を、チラチラと、覗いていた。
「ふ~ん。なら、これから、ちょっと、着き合わない?同僚も、上司も居ない場所なら、もっと話せるでしょ?」
「え?」
事務所が入っている、ビルから、徒歩で、10分足らずで着く、レトロは、私の憩いの場としても、一番最適だった。
「いらっしゃいませ…って、今井さんでしたか。」
いつもの格子戸を開け、店内に入ると、香織ちゃんが、明るく挨拶してくれた。
「こんばんは、今日はごめん、お客で良い?」
「珍しいですね…。普段、外では、呑まないのに…。」
確かに、夕飯を外食することは、あっても、お酒を飲むために、居酒屋や、バーに入る様な事は、殆どない。あったとしても、仕事の付き合いとか、打ち上げ等は、もちろんあるが、プライベートで、部下と酒を煽ることは、殆どない…。
ましてや、レトロで呑むなんて、何か月振りだろうか…。
「ちゃんと、代金払ってくれるなら、かまわないよ、今井ちゃん。」
カウンターの奥の方にある木製の丸椅子に座って、居た九条君が、そう言った。
「ありがとう。恩に着るわ…。さ、入って入って。」
外で待たせていた、彼女を、店内に招き入れた。彼女の名前は、赤城柳子というらしい…。もちろん、上の名前は、知っていた…。
店内は、相変わらず、静かで、居るのは、カウンター奥で、ロックグラスを、チビチビ傾けている、ジン君だけだった…。
「ここって…。」
「日中は、コーヒー専門の喫茶店。夜は、夜は、洋酒メインに扱う、バーをやってる、『レトロ(れとろ)』よ。出せないお酒は無いから、好きな物、頼んでね。
私は、発泡酒系、お願い。」
「丁度、黒ビールが、入ってます…。香織ちゃん、準備して。
それと、そちらさんは?」
彼は、応えながらゆっくりと、立ち上がり、柳子の前のカウンターに、手を突き、彼女に問うた。
廊下を通っている途中、今朝、鈴木課長に叱られていた、女性社員と鉢合わせてしまった。
「今朝は、ありがとうございました。」
彼女はそう言うと、ペコリと頭を下げた。
「別に構わないわよ。仕事が遅れる方が、厄介だからね…。
それより、鈴木課長って、毎回あんな感じなの?」
「ま、まぁ…。でも、私が、ただ至らないだけで…。」
すると、彼女は、自分の部署がある、部屋の入口を、チラチラと、覗いていた。
「ふ~ん。なら、これから、ちょっと、着き合わない?同僚も、上司も居ない場所なら、もっと話せるでしょ?」
「え?」
事務所が入っている、ビルから、徒歩で、10分足らずで着く、レトロは、私の憩いの場としても、一番最適だった。
「いらっしゃいませ…って、今井さんでしたか。」
いつもの格子戸を開け、店内に入ると、香織ちゃんが、明るく挨拶してくれた。
「こんばんは、今日はごめん、お客で良い?」
「珍しいですね…。普段、外では、呑まないのに…。」
確かに、夕飯を外食することは、あっても、お酒を飲むために、居酒屋や、バーに入る様な事は、殆どない。あったとしても、仕事の付き合いとか、打ち上げ等は、もちろんあるが、プライベートで、部下と酒を煽ることは、殆どない…。
ましてや、レトロで呑むなんて、何か月振りだろうか…。
「ちゃんと、代金払ってくれるなら、かまわないよ、今井ちゃん。」
カウンターの奥の方にある木製の丸椅子に座って、居た九条君が、そう言った。
「ありがとう。恩に着るわ…。さ、入って入って。」
外で待たせていた、彼女を、店内に招き入れた。彼女の名前は、赤城柳子というらしい…。もちろん、上の名前は、知っていた…。
店内は、相変わらず、静かで、居るのは、カウンター奥で、ロックグラスを、チビチビ傾けている、ジン君だけだった…。
「ここって…。」
「日中は、コーヒー専門の喫茶店。夜は、夜は、洋酒メインに扱う、バーをやってる、『レトロ(れとろ)』よ。出せないお酒は無いから、好きな物、頼んでね。
私は、発泡酒系、お願い。」
「丁度、黒ビールが、入ってます…。香織ちゃん、準備して。
それと、そちらさんは?」
彼は、応えながらゆっくりと、立ち上がり、柳子の前のカウンターに、手を突き、彼女に問うた。
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