レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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番外編:1今井真香の事件簿

#2

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 「ごめんなさいね、鈴木課長?」
 私の、その声に、驚いた、女課長は、変に裏返った声で、返事をした。
 「彼女は、昨日、あたしが無理言って、食事に誘っちゃったの。その所為で、彼女が、するはずだった仕事が、遅れてしまったのなら、あたしが手伝うわよ?」
 「あ、そ、そう、だったのですか?それなら、仕方無いですね…。社長の手を煩わせる事は、出来ませんので、手伝いは、結構です。」
 更に、上ずった声で、応えた。
 「あら、そう?ならいいわ。だけど…。」
 私は、鈴木課長のデスクに乗っていた、資料の束を、持ち上げた。
 「この資料、来週、取引先との会議でプレゼンする、資料よね?何で、この今日昨日の段階で、完成していないの?」
 「えっと、それはその…。」
 鈴木課長は、言葉を詰まらせた。それは、当然だろう。
 ここで、さっきまで叱っていた、女性社員の所為にしてしまえば、パワハラと思われる、可能性がある。
 正直に、喋ってしまえば、スケジュール管理が、杜撰で、大雑把な性格と、私と、隣に在籍している、他部署の人間に、そう、認識されかねない…。
 他人を追い詰めるのは、好きではないが、自分が、出来ないことを、人に押し付け、挙句の果てに、叱りつけるという事の方が、もっと嫌いだ。
 私は、小さくため息を吐いた。
 「本来なら、後で、話を聞くことになるだろうけど、今回に限っては、時間が無いだろうから、人事部交えて、日を改めましょう。
 ほら、皆も仕事仕事!資料の事は、申し訳ないけど、手伝ってあげて。これ完成しないと、来週の大事な会議が、出来なくなっちゃうから。よろしくね。」
 私はそれだけ言い残し、廊下で待っていた、朝倉さんと、社長室に向かった。

 「鈴木課長のこと、それとなぁく、調べて貰っていい?」
 この社長室は、他の部屋と、廊下と壁で仕切られており、普通に会話する分には、外に声が漏れることなく、機密な会話をするには、持って来いの場所だ…。というか、私がそう言う設計にするようにと、施工業者に依頼したのだ。
 盗聴器が、仕掛けられていない限り、私と、秘書の朝倉さんとの会話は、外部に漏れる事が無い。
 だからこそ、よく、こういった、秘密の任務を、彼女に依頼することは、最近では、珍しくない…。
 「つまり、素行調査ってことですね?」
 「そう。あの人、前も似た様な事が、あったのよね…。少し手間だけど、貴女方に、頼めるかしら?」
 「お任せください。直様、の方に、連携を取り、調査いたしますので、追って報告いたします。」
 彼女は、深々と頭を下げ、自分のデスクで、パソコンを打ち始めた。
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