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13章:香織と少年の交換日記
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「知識と歴史と感情の財産…。素敵なこと言いますね。古川さん。」
杏沙さんが感心したように、言った。
「恐れ入ります。」
「さ、そろそろ、会社戻らないと。」
三人がそれぞれ立ち上がり、レジに向かった。
会計対応を古川マスターがしている間、グラスを洗い場に、引っ込め、休憩室に向かった。
九月に入ったとはいえ、太陽は容赦なく、京の街を照らし、外に出るのも嫌になるくらいだ…。
「若林君、悪いけど、打ち水してきてくれる?」
若い男性店員に、そう声を掛けた。元気よく返事をし、店先の方に出て行った。
それから、しばらく経ったころ、その男性店員が、私の居る、事務所に戻ってきた。
「姐さん、小包です。」
「誰から?」
「香織さんです。」
珍しいこともあるものだ…。彼女とは、スマホのメールやメッセージアプリ等でやり取りすることは、多々あるが、彼女の方から直接手紙や荷物を送ってくることは、今までなかった…。
「なんやろうね。」
箱の大きさは、私が前に送った、抹茶の時と大体同じサイズ…。まさかコーヒー豆でも送ってきたのではないか…。
なんて考えながら、封を切り、箱を開けた。中からは、抹茶色のステンレス製のタンブラーと、コルクで出来たコースターが、一つずつ、入っていた。
タンブラーは、持ちやすいように、縦に溝も入っており、使い勝手はよさそうだ…。それは良いのだが…。
「公清堂のロゴが、入っていますね。姐さん、特注したんですか?」
「注文した覚えはあらへんのやけど…。」
タンブラーと一緒に同梱されていた、可愛らしい封筒を開け、便箋を広げた。
拝啓 清水さん
この間の、暑中見舞いと、抹茶ありがとうございました。おかげさまで、お客様親子を、喜ばすことができました。
お礼になるかわかりませんが、知り合いの、デザイナーさんに、協力していただき、清水さん専用のタンブラーと、コースターを作りました。
私生活等で、お役立て頂ければ幸いです。
敬具
追伸
私も真似て、イラストを描いてみましたが…上手く描けないですね…。
文末の余白に、グラスに入った、アイスコーヒーのイラストが描かれていた。
「へぇ~。そいつは凄いですね。俺も欲しいくらいですよ。」
横から覗いていた、若林が感心したような声で、呟いた。
「のぞき見なんて、感心しないわよ?」
正直、凄く嬉しい…。タンブラーの件もそうだが、あの子に、こんなむちゃぶりを頼める、“知り合い”ができたことが、とても嬉しかった。
若林に限らず、清水の店で働く従業員の、ほとんどは、知っていた。清水美波は、感情が高ぶった時だけ、標準語になることを…。
杏沙さんが感心したように、言った。
「恐れ入ります。」
「さ、そろそろ、会社戻らないと。」
三人がそれぞれ立ち上がり、レジに向かった。
会計対応を古川マスターがしている間、グラスを洗い場に、引っ込め、休憩室に向かった。
九月に入ったとはいえ、太陽は容赦なく、京の街を照らし、外に出るのも嫌になるくらいだ…。
「若林君、悪いけど、打ち水してきてくれる?」
若い男性店員に、そう声を掛けた。元気よく返事をし、店先の方に出て行った。
それから、しばらく経ったころ、その男性店員が、私の居る、事務所に戻ってきた。
「姐さん、小包です。」
「誰から?」
「香織さんです。」
珍しいこともあるものだ…。彼女とは、スマホのメールやメッセージアプリ等でやり取りすることは、多々あるが、彼女の方から直接手紙や荷物を送ってくることは、今までなかった…。
「なんやろうね。」
箱の大きさは、私が前に送った、抹茶の時と大体同じサイズ…。まさかコーヒー豆でも送ってきたのではないか…。
なんて考えながら、封を切り、箱を開けた。中からは、抹茶色のステンレス製のタンブラーと、コルクで出来たコースターが、一つずつ、入っていた。
タンブラーは、持ちやすいように、縦に溝も入っており、使い勝手はよさそうだ…。それは良いのだが…。
「公清堂のロゴが、入っていますね。姐さん、特注したんですか?」
「注文した覚えはあらへんのやけど…。」
タンブラーと一緒に同梱されていた、可愛らしい封筒を開け、便箋を広げた。
拝啓 清水さん
この間の、暑中見舞いと、抹茶ありがとうございました。おかげさまで、お客様親子を、喜ばすことができました。
お礼になるかわかりませんが、知り合いの、デザイナーさんに、協力していただき、清水さん専用のタンブラーと、コースターを作りました。
私生活等で、お役立て頂ければ幸いです。
敬具
追伸
私も真似て、イラストを描いてみましたが…上手く描けないですね…。
文末の余白に、グラスに入った、アイスコーヒーのイラストが描かれていた。
「へぇ~。そいつは凄いですね。俺も欲しいくらいですよ。」
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「のぞき見なんて、感心しないわよ?」
正直、凄く嬉しい…。タンブラーの件もそうだが、あの子に、こんなむちゃぶりを頼める、“知り合い”ができたことが、とても嬉しかった。
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